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著者: 石井秀樹 群馬大学医学系研究科内科学講座循環器内科学分野

監修: 代田浩之 順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学

著者校正/監修レビュー済:2024/12/25
参考ガイドライン:
  1. 日本循環器学会:急性冠症候群診療ガイドライン(2018年改訂版)
  1. 日本循環器学会2020年 JCS ガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法
  1. European Society of Cardiology:2023 ESC Guidelines for the management of acute coronary syndromes[1]
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、下記の点を加筆・修正した。
  1. 18誘導心電図について記載した。
  1. 発症直後のLDLコレステロール値の注意点と、日本動脈硬化学会の提言を踏まえ目標値について追記した。
  1. 近年のトピックとして、STEMI 責任血管以外にも有意狭窄があった場合、primary PCIの際に同時に血行再建を行うかどうかについて、最新情報を記載した(Stähli BE, et al. N Engl J Med. 2023 Oct 12;389(15):1368-1379.、Maqsood MH, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2024;17:e013737)。

概要・推奨   

  1. 発症12時間以内の患者に対し、できる限り迅速にprimary PCI(ステント留置を含む)を行う(推奨度1)
  1. 急性冠症候群(ACS)が疑われる患者では直ちに(10分以内に)12誘導心電図を記録する(推奨度1)
  1. ACSを否定できない患者で初回心電図では診断できない場合に、経時的に12誘導心電図を記録する(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報  
  1. ST上昇型心筋梗塞(ST-segment elevation myocardial infarction、STEMI)とは、冠動脈粥腫の破綻(破裂またはびらん)により冠動脈内腔に血栓が形成され、冠動脈が閉塞し心筋壊死を生じた病態である。
  1. ST上昇型心筋梗塞は、速やかに診断し、閉塞した冠動脈を再開通させ、心筋に血流を再灌流することが予後改善に繋がる。
  1. ST上昇型心筋梗塞は、心筋虚血を示唆する症状、心電図でのST上昇、心筋壊死を示す生化学マーカーの一過性上昇により診断される。
  1. 超急性期には、生化学マーカーはいまだ上昇していないことが少なくない。生化学マーカーが上昇していないからといって急性心筋梗塞は否定できず、診断は症状と心電図所見を中心に行う。
 
発症からの経過時間別にみた各心筋傷害マーカーの診断精度

発症早期の診断にはH-FABPが有用であるが特異度に限界があり、発症4時間以降は心筋トロポニンが感度・特異度ともに高く、診断に有用である。

出典

日本循環器学会他編:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012年度合同研究班報告)、ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版)、http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_kimura_h.pdf (2018年11月閲覧)、班長 木村一雄、p19、表5、発症からの経過時間別にみた各心筋バイオマーカーの診断精度
 
  1. 発症12時間以内の患者に対し、できる限り迅速にprimary PCI(ステント留置を含む)を行う(推奨度1)
  1. ST上昇型心筋梗塞症に対する治療の中心は再灌流療法であり、本邦では現在PCIがSTEMI治療の主体として広く行われている。血栓溶解療法を先行させることなく、再灌流療法としてPCIを選択することをprimary PCIという。
  1. STEMIの治療において、発症から再灌流までの総虚血時間をいかに短くするかが重要である。
  1. STEMIの治療においてはDrug-eluting stent(DES)の使用が推奨される(推奨度1)
 
STEMI 責任血管以外の有意狭窄に対する血行再建のタイミング
  1. 近年のトピックとして、STEMI 責任血管以外にも有意狭窄があった場合に、primary PCIの際に同時に血行再建を行うかが検討されている。最新の研究としてFULL REVASC[2]、MULTISTARS AMI[3]などがある。メタ解析[4]でも、primary PCI施行時に一期的に治療する群がstagedで施行するよりもイベント発生率が少ないと報告されている。しかしながら、心筋梗塞のエンドポイントにおいて、一期的血行再建と比較した場合にstaged症例ではperi-procedural myocardial injuryがMIとして判断されるため、統計処理として不利な状況となることを含めて考えないといけないことに注意する。
問診・診察のポイント  
  1. 典型例では、胸部症状が少なくとも20分以上持続するとされている。しかし、実際は典型的な症状を示す例だけでなく、その症状は多様であることを認識しておく。非典型的な症状を訴える例では、むしろ重症が多い。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
石井秀樹 : 未申告[2024年]
監修:代田浩之 : 研究費・助成金など(フクダ電子(株),インターリハ(株),京セラ(株),AMI(株),(株)今仙電機製作所,グローリー(株)),企業などが提供する寄付講座(フィリップス・ジャパン)[2024年]

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ST上昇型心筋梗塞(STEMI)

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