今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 黒田岳志1) 昭和医科大学 医学部内科学講座 脳神経内科学部門

著者: 河村満2) 奥沢病院

監修: 永山正雄 国際医療福祉大学医学部・成田病院 脳神経内科、集中治療部

著者校正/監修レビュー済:2025/05/29
参考ガイドライン:
  1. 日本顔面神経学会:顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版
  1. 日本神経治療学会標準的神経治療:Bell麻痺 2019
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』を参照に、下記の点を加筆・修正した。
  1. 顔面麻痺の重症度評価の基準となる柳原法の点数を修正した。
  1. Bell麻痺とHunt症候群で使用するステロイド・抗ウイルス薬の用法・用量、および外来処方例を修正した。

概要・推奨   

  1. 顔面筋の麻痺の患者をみたときには、まず中枢性か末梢性かの鑑別が大きなポイントになる。次に急性発症なのか慢性進行性なのか、またその程度によって、それが緊急入院を要するような病態であるかどうか判断する。特に急性発症の中枢性顔面麻痺であれば脳実質の病変が疑われ、緊急性が高い。
  1. 40点法(柳原法)で顔面麻痺の程度を評価することは、治療法の選択や病状の把握、予後の推定に有用である(推奨度1)
  1. 末梢性顔面神経麻痺で造影頭部MRIを施行することは腫瘍性疾患やその他の頭蓋内病変に伴う麻痺との鑑別に有用である(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態  
  1. 顔面筋の麻痺は大きく「顔面麻痺」と「顔面神経麻痺」に分けられる。「顔面麻痺」は筋および神経筋接合部疾患に伴う「筋性顔面麻痺」と核上性の障害による「中枢性顔面麻痺」に分けられ、「顔面神経麻痺」は核性の障害によるものを「中枢性顔面神経麻痺」、核下性の障害によるものを「末梢性顔面神経麻痺」と呼ぶ。
 
顔面筋の麻痺(分類)

  1. 顔面筋の麻痺は大きく「顔面麻痺」と「顔面神経麻痺」に分けられる。
  1. 「顔面麻痺」は筋および神経筋接合部疾患に伴う「筋性顔面麻痺」と核上性の障害による「中枢性顔面麻痺」に分けられる。
  1. 「顔面神経麻痺」は核性の障害によるものを「中枢性顔面神経麻痺」、核下性の障害によるものを「末梢性顔面神経麻痺」と呼ぶ。

出典

著者提供
 
顔面筋の麻痺(分類)

 
  1. 顔面神経麻痺の原因で最も多いのはBell麻痺である。発病率は20~30/10万人[1]で、性差はなく、40-50歳代にピークを持つ[2]。顔面神経麻痺の60~70%を占め、多くは一側性で急性発症である[3]。次いでRamsay Hunt症候群が10~15%を占める[3]
 
顔面神経麻痺患者の原因と頻度

出典

脇坂浩之、柳原尚明:顔面神経障害の疫学. CLIENTI 21 No9:顔面神経障害 2001;131-135、中山書店
 
  1. Bell麻痺の原因として単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の膝神経節での再活性化が指摘されており、発症のきっかけとして免疫力の低下や疲労、ストレスなどの背景を有することが多い。神経の炎症と浮腫が病態の主体であり、浮腫は顔面神経管内で神経の絞扼と虚血を生じ、さらに二次的な神経損傷をもたらす。
  1. Ramsay Hunt症候群は帯状疱疹ウイルス(VZV)の膝神経節での再活性化が原因となり、一般的には耳介・外耳道や舌、口腔粘膜に皮疹が出現する。皮疹の出現しない無疱疹性帯状疱疹(Zoster Sine Herpete:ZSH)の場合もあり、Bell麻痺と診断される10~20%がZSHであると考えられている[4]
  1. そのほかの末梢性顔面神経麻痺として、発症日が不明確で進行性の場合や増悪と寛解を繰り返す場合は腫瘤による圧迫や腫瘍浸潤に伴う顔面神経麻痺を疑う。外傷歴がある場合は外傷性顔面神経麻痺を、鼓膜に発赤や耳下腺に腫張・疼痛がある場合は真珠腫性中耳炎や耳下腺炎などの炎症性耳疾患を疑う。
  1. 中枢性顔面麻痺の原因としては急性発症の場合は脳血管障害の頻度が高い。また、若年であれば多発性硬化症などの脱髄疾患の可能性がある。慢性進行性の経過であれば腫瘍を疑う。中枢性顔面麻痺は顔面麻痺以外の症状を伴うことが多い。
問診・診察のポイント  
 
  1. 日常診療のなかで遭遇する顔面筋の麻痺で、頻度の多いものはBell麻痺とRamsay Hunt症候群であり、合わせて全体の約70%を占める。重要な点は2点あり、1つはその他の30%を見逃さないこと、もう1つはBell麻痺とRamsay Hunt症候群をしっかり鑑別することである。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
黒田岳志 : 特に申告事項無し[2025年]
河村満 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:永山正雄 : 特に申告事項無し[2025年]

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顔面筋の麻痺

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