今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 竹下望 国立感染症研究センター 研究企画調整センター

監修: 上原由紀 藤田医科大学医学部感染症科

著者校正/監修レビュー済:2022/05/25
参考ガイドライン:
  1. 日本環境感染学会医療従事者のためのワクチンガイドライン 第3版
  1. CDC(Center for Disease Control and Prevention):Chickenpox (Varicella)
  1. Red Book 2021 Report of the Committee on Infectious Diseases.
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、様式変更に伴い修正・加筆した。

概要・推奨   

  1. 水痘治療におけるステロイド治療:水痘による重症肺炎を合併した場合、抗ウイルス薬と対症療法に加えてステロイドを併用すると予後を改善する可能性がある(o)。
  1. 水痘における病歴の信頼性:免疫不全ではない成人における水痘罹患歴は必ずしも信頼できるわけではない。したがって、罹患歴の聴取は必要であるが、罹患歴だけで除外すべきではない(o)。
  1. 水痘治療における抗ウイルス薬:発疹出現24時間以内にアシクロビルを開始することは水痘の発熱期間の減少、皮疹の発生数を減少させる。ただし、水痘は自然軽快し、合併症も少ないため、すべての患者に抗ウイルス薬を推奨するべきというわけではない(推奨度2 CS)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 水痘とは、ヘルペスウイルスに属するVaricella zoster virus (水痘・帯状疱疹ウイルス)の初発感染により起こる感染症であり、空気感染により感染が伝播する。特徴的な発疹を伴い、感染力も強い。感染性は発疹が出る1〜2日前からすべての病変が痂皮化するまでと考えられている。
  1. 通常潜伏期間は14~16日であるが、8~21日となることもある。
  1. 水痘については、有効なワクチンがあるため、ワクチン接種歴が重要であり、接種回数を正確に聴取する必要がある。特に国内では、2012年に日本小児科学会からも水痘ワクチンの1–2歳で2回接種の推奨が出され、さらに2014年10月1日から定期接種対象疾患(A類疾病)となるまでは、水痘は定期接種が含まれていなかったことを留意する。
  1. 小児期に罹患歴があることも少なくないが、小児期の病歴は本人がはっきり覚えていないことが多く、場合によっては家族に聞いてもらう。既往歴がある場合は、麻疹、風疹などと比較すると信頼度が高い。また、水痘または帯状疱疹の患者との曝露歴を聴取する。推定感染源として報告されている中で、約4割は帯状疱疹である[1]。とくに、発症2週間前頃の曝露歴を聴取する。
  1. 国内の疫学情報としては、感染症発生動向調査として、水痘小児科定点報告と水痘入院例全数報告がある。(参考文献:[1]
  1. 水痘小児科定点報告では、日本小児科学会の推奨以前の2000-2011年では平均81.4人/年であったが、定期接種化直後の2015年は24.7人/年と減少し、2020年はさらに10.6人/年まで減少している。また、水痘入院例全数報告は、2014年9月19日に開始され、2014年第38週(9月19日)-2022年第26週までは、2,538例の報告がある。5歳未満の割合は2014年 34.3%から2020年 6.6%へ減少する一方、 2020年の報告では20–59歳群51.9%、60歳以上群28.5%と、成人の症例が増加傾向である。
  1. なお、合併症の頻度は、2014年第38週(9月19日)より2021年26週までの合併症報告では、約20%にあたる517人で発熱、発疹以外の症状を認め、肺炎気管支炎は118人、脳炎髄膜炎は54人、免疫不全者における内臓播種性水痘16人、報告時点での死亡例は11人であった。
病歴・診察のポイント  
  1. 水痘・帯状疱疹患者との曝露歴、特に2週間前を中心に聴取する。

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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
竹下望 : 未申告[2024年]
監修:上原由紀 : 研究費・助成金など(花王(株))[2024年]

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