肝腫大 :トップ    
監修: 金子周一 金沢大学大学院
川合弘一1) 青柳豊2) 1)新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化... 2)厚生連新潟医療センター 消化器病セン...

概要

所見のポイント:
  1. 肝腫大は肝容積の異常な増大を意味する。触診では一般的に、肋弓下に肝下縁を2cm以上触知する場合に肝腫大を疑う。高度の肝腫大のときは、お腹が張る、お腹を押すと痛いなどの症状を認める。
 
緊急対応: >詳細情報 
  1. 出血や破裂を伴った肝腫瘍、黄疸・肝性脳症・腹水・食道静脈瘤破裂などの肝不全症状を呈する各種肝疾患、胆道閉塞に伴った急性胆管炎、肺動脈塞栓、右心不全の急性増悪、急性型Budd-Chiari症候群などは緊急対応が必要になる。
 
診断へのアプローチ:アルゴリズム(身体診察 >詳細情報 ・鑑別疾患: 鑑別疾患 )
  1. 肝腫大の原因疾患は多岐にわたるが、重篤な肝病変や全身性疾患が存在する可能性があるため、原因を速やかに特定しなければならない。
  1. 肝腫大の原因となる病態としては、うっ血、炎症、代謝異常・物質沈着、胆汁うっ滞、腫瘤、細胞浸潤に分類できる。※
  1. 頻度が高い疾患: >詳細情報 
  1.  脂肪肝 (NAFLD)  非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) 、  アルコール性肝障害 、急性ウイルス性肝炎( A型肝炎  B型肝炎 (診断)  C型肝炎 (診断)  その他の肝炎 )、慢性ウイルス性肝炎、肝硬変(  肝硬変 )、右心不全 心不全収縮機能障害  心不全拡張機能障害 
  1. 重篤な疾患: >詳細情報 
  1. 重症型アルコール性肝炎、 原発性胆汁性胆管炎 、Budd-Chiari症候群( 症例 )、多発性肝嚢胞症(<図表>)、移植片対宿主病(graft- versus- host disease、GVHD)、肝中心静脈閉塞症(hepatic veno-occlusive disease、VOD)、造血器腫瘍(急性白血病 急性骨髄性白血病  急性リンパ性白血病 、慢性白血病 慢性骨髄性白血病  慢性リンパ性白血病 、 成人T細胞白血病 、悪性リンパ腫 ホジキンリンパ腫  非ホジキンリンパ腫 など)の肝浸潤、原発性肝腫瘍:肝血管腫( 良性腫瘍 (肝血管腫、アデノーマ) )、肝細胞癌( 原発性胆管細胞がん、その他の原発性肝がん )、肝内胆管癌など)、  転移性肝がん 、肝膿瘍、肺血栓塞栓症( 急性肺塞栓症 )、寄生虫感染( エキノコックス症 、アメーバなど)、  自己免疫性肝炎 、肉芽腫性疾患( 肺結核 、サルコイドーシス エビデンス  肺サルコイドーシス など)、  薬物性肝障害 .、胆管閉塞( 原発性硬化性胆管炎 、胆石症 肝内結石症   総胆管結石症 、胆管癌 胆管癌 (肝門部を含む)   胆管癌 (下部) など)
  1. まれな疾患: >詳細情報 
  1.  ウイルソン病 、 ヘモクロマトーシス 、アミロイドーシス エビデンス ( 消化管アミロイドーシス 、糖原病、ライソゾーム病(GM1ガングリオシドーシス、Gaucher病、Niemann-Pick病など)
 
専門医相談のタイミング: >詳細情報 
  1. 単純性脂肪肝や軽度のアルコール性肝障害、薬物性肝障害以外の疾患は、専門医への相談を考慮すべきである。脂肪肝のうち非アルコール性脂肪肝炎(NASH)との鑑別が困難な場合も、一度は専門医に相談したほうがよい。
 
※主な鑑別疾患(カテゴリー別):
  1. うっ血
  1. 右心不全、肺血栓塞栓症、Budd-Chiari症候群、肝中心静脈閉塞症(VOD)
  1. 炎症:
  1. 薬物性肝障害、アルコール性肝障害、急性ウイルス性肝炎、慢性ウイルス性肝炎、肝硬変、自己免疫性肝炎、肝膿瘍、寄生虫感染、肉芽腫性疾患(結核、サルコイドーシスなど)、移植片対宿主病(GVHD)
  1. 代謝異常・物質沈着:
  1. 脂肪肝、ウィルソン病、ヘモクロマトーシス、アミロイドーシス、糖原病、ライソゾーム病
  1. 胆汁うっ滞:
  1. 胆管閉塞(胆石症、胆管癌など)、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎
  1. 腫瘤:
  1. 多発性肝嚢胞症、原発性肝腫瘍(肝血管腫、肝細胞癌、肝内胆管癌など)、転移性肝腫瘍
  1. 浸潤:
  1. 造血器腫瘍(急性白血病、慢性白血病、悪性リンパ腫など)
 
 
臨床のポイント:
  1. 肝腫大をみたときは、肝疾患のみならず、全身性疾患による肝腫大の可能性も考え、病歴の詳細な聴取と、入念な全身の診察が必要である。
  1. 肝腫大の原因疾患の鑑別には、「うっ血」、「炎症」、「代謝異常、物質沈着」、「胆汁うっ滞」、「腫瘤」、「(細胞)浸潤」に分類すると理解しやすい。
  1. 肝疾患が原因の場合には肝臓病専門医、全身性疾患が原因の場合には各領域の専門医と連携して対応することが望ましい。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

初診時にほとんどすべての肝腫大の患者に行う検査例
  1. 鑑別診断、肝障害の重症度把握を目的に検査する。
○ 肝腫大の場合、下記の検査を行う。

重度の肝障害が疑われる患者に必要な追加検査例
  1. 病態を把握するとともに肝障害の重症度を評価し、緊急対応の必要性を判断する。
○ 病態の把握と重症度を評価する場合、下記の検査を行う。
1)
2)
腹部CT

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
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肝腫大の鑑別アルゴリズム
肝腫大の鑑別アルゴリズム
多発性肝嚢胞症の腹部単純CT
著者校正/監修レビュー済
2018/04/05