今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 大平明彦 若葉眼科病院

監修: 沖波聡 倉敷中央病院眼科

著者校正/監修レビュー済:2025/04/09
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った。以下、主な修正点である。
  1. 参考となる文献として『難治性複視の非観血的治療あたらしい眼科(2020)』を追加した。
  1. 問診・診察のポイントの項に斜偏位について加筆した。
  1. その他、細部において修正を行った。

概要・推奨   

  1. 中枢神経から末梢神経、眼窩内異常により眼球運動障害(眼筋麻痺)を生じるが、原因疾患は多岐にわたる。
  1. 原因疾患の探索には専門的知識が必要であり、専門家への紹介も念頭に置くべきである。
  1. 原因疾患の治療と並行して、主たる自覚症状である複視に対する対症療法も行われる。

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 眼球運動障害とは視器に属する筋肉に麻痺を生じている状態を元来は指す用語である。しかし、実践的には眼球や眼瞼を動かして周辺視することが十分できない状態や左右眼を協調して動かすことができない状態(厳密には、外眼筋麻痺)のことを指していることが多い。それに対して眼球内の毛様筋や虹彩筋が麻痺している状態を、内眼筋麻痺と区別して呼んでいる。
  1. 眼球運動は、上位中枢からの運動指令が末梢神経を経由して、眼窩内で眼球に付着する外眼筋に届き、眼球を回転することにより達成される。この経路のどこかでの異常により、あるいは外眼筋が収縮しようとしてもそれ以上の力で運動を制限する力(主として眼窩内異常による)が働くことにより、眼球運動障害=眼筋麻痺が生じる。主症状は複視である。眼球運動障害により両眼の視方向(視線)が一致しなくなり、自覚する症状であるが、単に見難くなったとしか表現しない患者もいるので注意する。「眼球運動障害による訴え内容: >詳細情報 」参照。
  1. 末梢神経(動眼、滑車、外転神経)麻痺に関しては、その原因別の疫学的データも揃っている[1][2][3](小児は[4])。全般に血管障害(虚血)、頭蓋内腫瘍性疾患、外傷が3大原因である。しかし前述のごとく、眼球運動障害を生じる原因は多岐にわたり、中枢神経や眼窩内疾患による眼球運動障害まで含めた広範囲のデータ[5]は非常に少ない。
  1. 診断としては、どの場所で麻痺が生じたのか(部位診断)、麻痺の原因は何か(原因診断)を決めなければならない。どのような部位・原因があるかは「問診・診察のポイント: >詳細情報 鑑別疾患表」後半参照。
  1. 治療も原因疾患の治療が優先され、麻痺による自覚症状(複視、注視困難)に対しては当面は対症療法を行う。後遺症に対しては手術的治療の道もある。
  1. 眼球運動障害患者に対しては、一般眼科医でも対応に困ることが多く、眼科に紹介する場合は、神経眼科の専門医か複数の眼科医が勤務している医療機関に紹介することが勧められる。社会的コストからみて、一般医が診断に携わるよりも専門医が対応したほうがよいという議論もなされている[6]。一般医が眼球運動障害患者をどこに紹介するかはアルゴリズムを参照されたい。(アルゴリズム
 
参考となる文献・ガイドライン:
  1. 日本甲状腺学会のホームページ
  1. 「臨床重要課題」中にバセドウ病悪性眼球突出症(甲状腺眼症)の診断基準と治療指針も記述されており、治療上参考になる(J)。新規抗体薬(テプロツムマブ等)についても簡単に紹介されているが最新の情報は各自補充を行う。
  1. 日本神経学会のホームページ
  1. 重症筋無力症、多発性硬化症、Fisher症候群、ギランバレー症候群に関するガイドラインが記述されており、診断治療上参考になる(J)。
  1. 日本頭痛学会のホームページ
  1. 医療者のコーナーから国際頭痛分類3版が閲覧できる。
  1. 杉谷邦子、鈴木利根:難治性複視の非観血的治療あたらしい眼科. 2020; 37(8), 939-946.
  1. 眼球運動障害(複視)患者へのプリズムや部分遮蔽眼鏡装用による対症療法で眼科医にとって実践上参考になる(推奨度2、O)
問診・診察のポイント  
  1. 眼球運動障害は、自覚症状(複視、注視困難)と他覚所見(眼球運動制限)で明示され、頭位異常、眼瞼下垂、瞳孔異常、調節力低下を併発症とすることがある。

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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
大平明彦 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:沖波聡 : 特に申告事項無し[2024年]

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眼球運動障害

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