今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 加藤之紀 医療法人EMS 植田救急クリニック

監修: 志賀隆 国際医療福祉大学 医学部救急医学/国際医療福祉大学成田病院 救急科

著者校正/監修レビュー済:2025/01/15
参考ガイドライン:
  1. 米国心臓協会(AHA)、米国小児科学会(AAP):2024 American Heart Association and American Academy of Pediatrics Focused Update on Special Circumstances: Resuscitation Following Drowning
  1. 米国心臓協会(AHA):2020 American Heart Association Guidelines for CPR and ECC
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 2024年に米国心臓協会と米国小児科学会が発表した『溺水後の蘇生に関する』ガイドライン(文献7)に準拠して内容を修正した。また、疫学等については近年の統計に基づいた改訂を行い、前版改訂時から新たに発表されたエビデンスを追記、典型例と難渋例の症例を報告した。以下は主な修正箇所である。
  1. 溺水患者への蘇生処置における気道の確保と酸素投与を伴う換気の重要性がより強調された。
  1. AEDに使用は通常の蘇生処置と同様に使用してよいが、溺水においてショック適応の不整脈が引き起こされることはまれである。
  1. 溺水患者に対して水中で換気を行うことで予後改善が期待できるがあくまで救助者があらかじめ訓練されて能力がある場合に限って推奨される。
 

概要・推奨   

  1. 溺水とは沈水、浸水に由来する呼吸障害から発生する一連の過程と定義される[1][2]
  1. 不整脈等による二次性の溺水にも注意が必要だが、溺水自体による身体への影響は、主に誤嚥からつながる肺障害による低酸素によるものであり、低酸素脳症を始めとした各臓器障害の原因となる[3]
病院前対応での対応・推奨:
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 溺水とは、液体への沈水、浸水に由来する呼吸障害から発生する一連の過程と定義される[1][2]
  1. 全世界では溺水によって年間50万人の死者が発生しているといわれており、その分布は地域によっても異なる[2]
  1. 2022年に日本で発生した水難事故は1,346件で、1,640人の水難者が発生したが、うち死亡した人数、行方不明の人数は727人と非常に多いものとなっている。また家庭内での不慮の事故による溺水においても年間6,000人程度の死者が発生している[4][5]
  1. 年齢別で考えると、2022年の日本の統計で溺水は5~14歳において不慮の事故による死因の1位であり、40~50%程度を占める。65歳以上で溺水による死亡はまた増えるが、若年者では自然環境内での溺水が多い中、高齢者では浴槽内での溺水が多くなっている[5]
  1. 溺水の際、人は本能的に息を止めるが、血中CO2上昇に伴う呼吸ドライブの亢進に耐えきれず呼吸を行い気道に水が浸入する。肺胞に水が入ると肺サーファクタントは失活し、肺胞と毛細血管の血液空気関門のバランスが崩れる。その結果、肺胞内に水分が移行しコンプライアンスも失われ、びまん性肺水腫を伴う呼吸障害が進行する。この変化が起こるには2 mL/kg程度の誤嚥で十分であり、低酸素、脳虚血によって溺水患者は速やかに意識消失、無呼吸、次いで心肺停止に陥る。
  1. 溺水患者の予後改善には、気道、呼吸を優先した現場での蘇生処置が重要となるが、講習による意識啓蒙など予防に向けた活動、対応も重要となる。
 

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
加藤之紀 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:志賀隆 : 未申告[2024年]

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溺水

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