今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 長谷川元 埼玉医科大学総合医療センター 腎・高血圧内科、血液浄化センター

著者: 清水泰輔 埼玉医科大学総合医療センター 腎・高血圧内科、血液浄化センター

著者: 関口桃子 埼玉医科大学総合医療センター 腎・高血圧内科、血液浄化センター

監修: 花房規男 東京女子医科大学 血液浄化療法科

著者校正済:2024/08/21
現在監修レビュー中
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、項目の順序、鑑別疾患表を整理し、症例を提示した。
 

概要・推奨   

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 高ナトリウム血症(以下高Na血症)は低Na血症よりも頻度は少なく、入院患者の2%程度[1]、ICUなど集中治療を要する場合は9%程度[2]と推測されている。高Na血症の死亡率は20%程度であるが、入院時に高Na血症を呈する場合、死亡率は30%以上であり、自由な飲水行動の制限、薬剤や点滴により、医原性に高ナトリウム血症が引き起こされる場合もあり、重篤な患者に見られる場合が多い[3]
  1. 血清Na濃度の正常値はおおむね135~145 mEq/Lであり、この濃度は体内の水分量とNaのバランスで規定される。
  1. 血清Na濃度異常の多くは体内の水分量異常によりもたらされ、ADH分泌過剰(SIADH、血管内脱水など)に伴う水貯留により低Na血症が、ADH欠乏(尿崩症)や腎外性水喪失などに伴う水欠乏により高Na血症が引き起こされる。一般に血漿浸透圧の上昇は口渇中枢を刺激し飲水が促されるため、腎外性水喪失による高Na血症(高張性脱水)は飲水行動が不能な場合や飲水で代償し得ない水喪失が生じた場合に限られる。
  1. 高Na血症の症状=高浸透圧の症状であり、浸透圧上昇に対する生体適応が生じていない「急性高Na血症」の場合と、適応が獲得されている「慢性高Na血症」では異なった症状がみられる。
  1. 急性高Na血症=細胞内脱水であるため、神経・筋症状が主要なものである。口渇から嗜眠、昏睡、譫妄、興奮などが出現し得る。筋細胞脱水のため筋攣縮、痙攣、腱反射亢進がみられる。血清Na濃度が160 mEq/L以上では危険度が増加し、脳実質の縮小に伴う脳内出血・クモ膜下出血の危険性が生じる。
  1. 一方慢性高Na血症では浸透圧活性を有するidiogenic osmoleが神経細胞内に増加することで、脱水を防いでいるため、症状はきわめて軽微に留まることもまれではない。血清Na濃度と神経症状とに乖離がみられる場合は慢性の経過を示唆しており、Na濃度是正は緩徐かつ慎重に行う必要がある。
  1. 高Na血症の病態は体液量の減少・正常・増加に分けて考える。
  1. 脱水を伴う高Na血症では水分の喪失が腎性か腎外性に分けて考える。
 
体内水分量とNaの二重調節

体内の水分量とNaは図に示すように、血漿浸透圧-ADH-腎を介した主に水の調節系と血圧-循環血漿量-レニンアンジオテンシンアルドステロン(RAAS)系-心房性Na利尿ペプチドを介した主にNa調節系の2つの系によって調節されている。

 
  1. 血清Naの上限と下限
  1. 血清Naが135 mEq/L以下となり血漿浸透圧がほぼ270 mEq/L以下に低下すると下垂体後葉からのADH分泌が抑制されるため、それ以上に水分を摂取しても水分は希釈尿として腎から排泄されてしまい血清Na濃度はそれ以下には低下しない。また血清Na濃度が145 mEq/L以上になり血漿浸透圧がほぼ290 mEq/L以上に上昇すると喝感が刺激され飲水することにより血清Na濃度は低下する。
  1. つまり、血清Na濃度はその下限をADHの分泌閾値、その上限を喝感により、その間に挟まれコントロールされている。
 
血漿浸透圧(Posm)と血中ADH濃度(PADH)との関係および尿流量(UF)と尿浸透圧(Uosm)との関係

出典

太田昌宏編. SIADHの長期予後、ホルモンと臨牀. 医学の世界社, 1998; 46(8): 697-703, 図4.
問診・診察のポイント  
  1. 高Na血症が存在した場合まず脱水を伴うか否かが重要である。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
長谷川元 : 特に申告事項無し[2024年]
清水泰輔 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:花房規男 : 未申告[2024年]

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高ナトリウム血症

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