今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 小林 心 がん研究会有明病院 乳腺内科

監修: 高野利実 がん研有明病院 乳腺内科

著者校正/監修レビュー済:2021/09/15
参考ガイドライン:
  1. 米国臨床腫瘍学会(ASCO):Recommended Guidelines for the Treatment of Cancer Treatment-Induced Diarrhea
  1. 日本臨床腫瘍学会:がん免疫療法ガイドライン第2版
  1. NCCNガイドライン:Management of Immnotherapy-Related Toxicities version 3 2021
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、下痢を誘発する薬剤の追加を行った。
  1. 免疫関連有害事象(irAE)としての下痢について記載を追加した。

概要・推奨   

  1. 米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドラインでは、初回4mg(※)、その後は2~4時間ごと、または軟便を認めるたびに2mgのロペラミド(ロペミン)の内服を推奨している。化学療法に伴う下痢(CID)のファーストライン治療である(推奨度1)。(※初回量4mgは日本人には多過ぎる可能性がある)
  1. ASCOのガイドラインでは、複雑性の下痢で患者が高度の脱水を伴う場合は、オクトレオチド(サンドスタチン)の使用を推奨している(推奨度1)
  1. ASCOのガイドラインでは、24時間以上持続する下痢に対し経口抗菌薬内服を推奨している(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 下痢とは、糞便中の水分含有量が増加して泥状・水様になる状態をいう。正常な有形便の水分は60~80%であり、80~90%で泥状、90%以上で水様となり、わずかな水分の増加が下痢を引き起こす。経口水分摂取量は1日約2L、胃液・膵液・胆汁などの消化液が約7Lであり、合計9Lの水分のほとんどは小腸で吸収される。大腸での水分吸収量は1日0.5L程度にすぎない。そのため、小腸に炎症があると吸収能低下に加えて大量の水分の分泌が起こって脱水を引き起こす。ひいては腎不全、電解質異常、循環不全、重症感染症を起こして致命的となることもある。
  1. 化学療法に伴う下痢(chemotherapy-induced diarrhea、CID)の発生機序:
  1. コリン作動性下痢(早発性下痢):
抗癌剤により消化管の副交感神経が刺激され、蠕動亢進のため下痢を引き起こす。抗癌剤投与当日に起こることが多い。
  1. 腸管粘膜傷害(遅発性下痢):
抗癌剤により消化管粘膜が傷害されて起こる。抗癌剤投与後数日~2週間程度で発症することが多い。粘膜傷害のため感染が起こりやすい。
  1. 免疫関連有害事象(Immune-related adverse events、irAE):
免疫チェックポイント阻害剤の使用により免疫の調整が正常に機能せず、炎症性腸疾患や自己免疫疾患様の副作用を呈することがある。
 
  1. 下痢を起こしやすい抗癌剤:
  1. フルオロウラシル、イリノテカン、カペシタビン、メトトレキサート、ゲフィチニブ・ラパチニブなどの抗EGFRチロシンキナーゼ阻害薬、セツキシマブなどの抗EGFR抗体、アベマシクリブ(CDK4/6阻害剤)。
  1. 特にイリノテカンでは活性代謝物であるSN-38により粘膜傷害が強く現れ、Grade 3以上の下痢が20%に出現する。
  1. アベマシクリブでは、全グレードの下痢が80%以上に見られ、Grade 3以上のものも10%前後で見られる。
  1. 免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ・アテゾリズマブ・ペンブロリズマブ、イピリムマブ等)も下痢の副作用を有し、Grade 3以上のものが約10%に見られるが、irAEとして下痢や大腸炎を呈するため、irAEとしての対応(ステロイド投与、免疫抑制剤投与)が必要である。(がん免疫療法(薬理)参照)
問診・診察のポイント  
  1. まず普段の便通の状況を問診する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
小林 心 : 未申告[2024年]
監修:高野利実 : 講演料(第一三共(株),イーライリリー)[2024年]

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抗がん剤(分子標的治療薬を含む)による下痢症への対応

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