今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 氏家 無限 国立国際医療研究センター 国際感染症センター

監修: 具芳明 東京科学大学大学院医歯学総合研究科 統合臨床感染症学分野

著者校正/監修レビュー済:2022/04/27
参考ガイドライン:
  1. 日本感染症学会・日本化学療法学会:JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―腸管感染症―
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、主に以下の点について加筆した。
  1. 2016年に報告のあった第三世代セフェム系抗菌薬に耐性の広域薬剤耐性腸チフス菌の流行及び各国への輸入症例が報告されている。
  1. アフリカ・南アジア各国で、生後9月または1歳時で対象となる腸チフスの結合体ワクチンにおいて定期接種プログラムでの使用が増加し、高い有効性が報告されている。
  1. 新型コロナウイルスのパンデミックの影響により、国内での腸チフスの報告数は2020年以降減少している。

概要・推奨   

  1. ナリジクス酸耐性菌ではキノロン系抗菌薬(オフロキサシン)で短期間の治療を行うと解熱までの期間が長く、再発率が高くなるため推奨されない(推奨度1)
  1. キノロン系抗菌薬ではセフェム系抗菌薬と比較して解熱までの時間が短く、再発率も低いため、感受性が確認できれば第1選択薬となる。
  1. セフトリアキソンと比較してシプロフロキサシンでは治療失敗例が少ないため、キノロン感受性菌では治療の変更を考慮する(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 腸チフス、パラチフスはSalmonella entericaのいくつかの血清型で生じる全身性発熱性疾患であり、英語では“Enteric fever”と総称される。
  1. 腸チフスとパラチフスの両者に臨床的な差異はない。
  1. 一般に無症候性のキャリアまたは活動性のある患者の便中に排泄される病原体で汚染された飲食物の摂取により経口感染する。
  1. 時に性交渉による糞口感染、標準予防策が破綻した際の院内感染が起こり得る。
  1. 感染から発症までの潜伏期は最大で3~60日[1]であるが、その多くは8~14日であり[2]、渡航歴から潜伏期の整合性を検討する。
  1. 臨床症状は非特異的であり、初期(第1週)には菌血症による発熱、悪寒[3]、前頭部の鈍痛、倦怠感、食欲低下、嘔気や比較的徐脈などを認め、徐々に増悪する。
  1. 発症後2週目には腹痛のほか、体幹や腹部にバラ疹(<図表>)と呼ばれる2~4mm大で淡紅色の斑状皮疹を認めることがあり2~5日で自然消退する。
  1. 抗菌薬開始後には、バラ疹の出現頻度が30%から1.5%に低下する[4]
  1. 消化器症状は下痢となることは少なく、嘔吐は激しくない。また便秘となることもある。
  1. 肝脾腫を伴うことがある。
  1. 比較的徐脈(<図表>)、バラ疹(<図表>)、脾腫が3徴とされるが、これらの出現率は30~50%程度である[5]
  1. 無治療の場合には徐々に高熱となり40℃までの発熱が2週間程度持続する。その後徐々に解熱し、4週間程度で改善する。
  1. 無治療の場合、10%程度の症例で3カ月程度便中に排菌が持続し、1~4%程度の症例がキャリアとなり1年以上にわたって便中に排菌が持続する[6]
  1. 2010年には、低~中等度所得国で、約1190万人が腸チフスに罹患し、約12万9千人が死亡したと推計される。うち、南アジアでの症例は700万人と全体の半数以上を占める。
  1. 現在の調査体制で全数把握疾患となった1999年以降に国内で報告された腸チフス、パラチフスの症例数はそれぞれ年間約7~91症例であり、その大部分を国外からの輸入症例が占める。
  1. 2020年には新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響から腸チフス及びパラチフスの報告数はそれぞれ21例、7例と減少した。
 
腸チフス、パラチフスの症例報告数、2006年~2017年(感染症発生動向調査)

出典

国立感染症研究所:[https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/440-typhi-intro.html 腸チフス・パラチフスとは] 、図1 腸チフス、パラチフスの症例報告数、2006年~2017年(感染症発生動向調査) 
 
  1. 途上国に渡航する旅行者が腸チフスに罹患するリスクは10万人中2~20例程度と推計され、特に南アジアでのリスクが高い[7]
  1. 下水道設備がなく衛生環境が不良な地域(インド亜大陸・東南アジアなど)への渡航で罹患リスクが高い。
 
2017年における腸チフス・パラチフスの発生頻度からみた流行地域

世界中に広く流行地域を認め、特に南アジア、東南アジアでの感染リスクが高い。

出典

Cristina Masuet-Aumatell, Jorge Atouguia
Typhoid fever infection - Antibiotic resistance and vaccination strategies: A narrative review.
Travel Med Infect Dis. 2021 Mar-Apr;40:101946. doi: 10.1016/j.tmaid.2020.101946. Epub 2020 Dec 8.
Abstract/Text Typhoid fever is a bacterial infection caused by the Gram-negative bacterium Salmonella enterica subspecies enterica serovar Typhi (S. Typhi), prevalent in many low- and middle-income countries. In high-income territories, typhoid fever is predominantly travel-related, consequent to travel in typhoid-endemic regions; however, data show that the level of typhoid vaccination in travellers is low. Successful management of typhoid fever using antibiotics is becoming increasingly difficult due to drug resistance; emerging resistance has spread geographically due to factors such as increasing travel connectivity, affecting those in endemic regions and travellers alike. This review provides an overview of: the epidemiology and diagnosis of typhoid fever; the emergence of drug-resistant typhoid strains in the endemic setting; drug resistance observed in travellers; vaccines currently available to prevent typhoid fever; vaccine recommendations for people living in typhoid-endemic regions; strategies for the introduction of typhoid vaccines and stakeholders in vaccination programmes; and travel recommendations for a selection of destinations with a medium or high incidence of typhoid fever.

Copyright © 2020 Elsevier Ltd. All rights reserved.
PMID 33301931
 
  1. わが国における2005~08年における報告(<図表>)の78~86%の報告はアジアでの国外感染であり、そのうちインドでの感染が35~37%と最も多い。
 
腸チフス・パラチフス患者の推定感染地、2005~2008年

2005~2008年に報告のあった腸チフス・パラチフスにおいて、大多数が海外における感染が推定されており、アジア地域(特にインド)に多かった。

出典

IASR 2009年4月号 vol 30 p91-92 http://idsc.nih.go.jp/iasr/30/350/graph/f3503j.gif
 
  1. わが国に承認はないが、国際的には注射の不活化多糖体ワクチンと結合体ワクチン、経口の生ワクチンが利用可能であり、海外渡航における感染のリスクに応じてワクチン接種を考慮する(国内にも未承認ワクチンを提供する医療機関はある)。
  1. 感染症法の3類感染症であり、診断後には直ちに保健所に届け出る必要がある。また、食品に直接接触する作業者に対して就業制限がある。学校保健安全法で第三種感染症に指定されており、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」を出席停止の期間の基準としている。
 
  1. 日本で承認された腸チフスワクチンはないが、以前から実用化されているワクチン(Ty21aワクチン、Viワクチン)はともに腸チフスの予防に有効であり、加えて2017年には、生後6月から使用が可能な結合体ワクチンが新たにWHOからpre-qualifiedワクチンとして認められた(推奨度2CS)(参考文献:[8][9][10]
  1. 腸チフスのワクチンの有効性と安全性を評価するため、2013年6月までに公表されている18の無作為対照化試験を用いて系統的レビューを行った。経口生ワクチンであるTy21aワクチンは2万人を超える評価において、接種後2年間に約1/3から半数に腸チフスに対する予防効果を認めた(1年目35% 95%CI 8-54%、2年目58% 95%CI 40-71%)が3年目には有意な予防効果を認めなかった。消化器症状の副反応との関連は認めなかったが、発熱を予防接種群より多く認めた。
  1. 不活化のVi多糖体ワクチンの腸チフスに対する予防効果は、約10万人での評価において1年目に69%(95%CI 63-74%)、約20万人での評価において2年目に59%(95%CI 45-69%)、約1万人の評価においても55%(95%CI 30-70%)であった。副反応として発熱や発疹との関連は認められなかったが、局所反応をより多く認めた。
  1. 2017年にWHOによる事前資格審査に適合した結合体ワクチンは、生後9月の小児での発生予防効果は82%(95%CI 58.8〜91.8%)と高く[11]、12か国で小児の予防接種プログラムに使用されている。実際の使用による効果も80.7%(95%CI 64.2~89.6%)と報告されている[12]
 
  1. 脾腫、比較的徐脈、バラ疹、血小板低下、AST上昇などの所見で腸チフス・パラチフスの検査前確率が高まる(推奨度2 C)
  1. 1つの後ろ向きに60例の腸チフス症例と58例の非腸チフス症例の臨床症状と検査所見を検討した対照研究[13]。腸チフスでは非腸チフスと比較して有意に、肝脾腫、比較的徐脈、バラ疹、白血球減少、血小板減少、好酸球減少、AST上昇を認めることが多かった。特に脾腫、比較的徐脈、バラ疹、血小板低下、AST上昇は診断的価値が高かった。
問診・診察のポイント  
  1. 渡航地域、渡航期間、渡航目的、飲食物への曝露、ワクチン接種歴など、詳細な海外渡航歴を聴取することが重要となる。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
氏家 無限 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:具芳明 : 研究費・助成金など(MSD(株))[2024年]

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