今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 藤山理恵 長崎大学 総合歯科臨床教育学

監修: 高野利実 がん研有明病院 乳腺内科

著者校正/監修レビュー済:2021/04/07
参考ガイドライン:
  1. 日本臨床栄養学会亜鉛欠乏症の診療指針2018
  1. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性味覚障害
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 参考ガイドラインに「亜鉛欠乏症の診療指針2018」「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性味覚障害」を加えた。
  1. 味覚障害の症状による分類に関する表を加えた。

概要・推奨   

  1. 診断には味覚機能検査・血清亜鉛値測定・唾液量測定を行うことも試みる価値がある(推奨度2)
  1. 味覚は温度感受性もあることから口腔内で氷による冷刺激をすることは試みる価値がある(推奨度2)
  1. サクソンテストにより口腔乾燥症の診断がある場合 唾液腺のマッサージを行うことも試みる価値がある(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 味覚障害は癌治療(放射線療法・化学療法・併用)に共通する口腔内の合併症の1つであり、QOL低下につながる。(参考文献:[1][2][3][4][5][6][7][8]
  1. 化学療法のみによる味覚障害の有病率は56%である。(参考文献:[1]
  1. 化学療法開始後、数日から1週間程度で発症することが多い。
  1. 味覚障害と嗅覚障害は密接な関係がある。
  1. 味覚障害の症状は、味覚感度の低下または上昇や自発性の不快な金属味・苦味など多様である。
  1. 味覚障害のほか、口腔乾燥症・口腔内の炎症(舌炎・口内炎)を伴うことも多い。
  1. 抗癌剤による味覚障害には、特異的な効果的治療法がないのが現状である。血清亜鉛値低下(80μg/dl未満)の場合は、亜鉛内服治療を行う。(参考文献:[1][2][3][4][5][6][7][8][9]
  1. 化学療法終了後3~4週で味覚の改善がみられることもあり、1年ほどで味覚障害は自然治癒する可能性がある。
 
  1. 診断には味覚機能検査・血清亜鉛値測定・唾液量測定を行うことも試みる価値がある(推奨度2S)
  1. 化学療法による味覚障害の有病率は56%である。味覚障害の症状は、味覚感度の低下や自発性の不快な金属味・苦味など多様である。味覚障害のほか口腔乾燥症・口腔内の炎症(舌炎・口内炎)を伴うことも多い。嗅覚障害とは密接な関係があり、味覚は正常でも嗅覚障害により自覚的味覚障害を訴えることもある。また精神的ストレスによる味覚障害など原因も多様である。化学療法終了後3~4週で味覚の改善がみられることもあり、1年ほどで味覚障害は自然治癒する可能性があるが、抗癌剤による味覚障害は患者のQOL低下や食欲不振による栄養状態の悪化、さらにはADLの低下を招くこともあり、味覚障害の改善は大切である。
  1. 味覚障害の病態には不明な点が多く、そのため確立された治療法がないのが現状である(参考文献:[8])。例えば治療の1つと考えられている亜鉛製剤内服の有効性について、有効でないという結果もある。しかし抗癌剤治療中に栄養状態を良好に保つうえで、味覚障害を訴える患者の抗癌剤治療を少しでも有効にするために、必要に応じて行うことも試みる価値がある。
  1. 味覚機能検査結果に問題がある場合には、以下の治療法も試みる価値がある。
  1. 亜鉛製剤の内服(血清亜鉛値が低い場合(80μg/dl未満))
    ただし銅欠乏(血清銅低値)に注意する必要がある。
  1. 末梢神経治療薬の内服
  1. 嗅覚に問題がない場合、好みの香りの食事をすることも、味覚障害による食欲不振の改善につながる。
問診・診察のポイント  
  1. 発症時期と状況の確認:問診――化学療法開始時期との関連、全身疾患(腎障害・肝障害・糖尿病・消化器疾患・ビタミン欠乏症・甲状腺機能障害)・歯科治療(金属などの補綴物の装着など)・心理的ストレスのエピソードなど
  1. 口腔合併症の確認:問診――口腔内の疼痛の有無、食物の刺激による疼痛の有無、診察――口内炎・舌炎・口腔乾燥・舌苔の視診
  1. 嗅覚障害の有無:問診――食事中などの匂いの変化の有無
  1. 食欲低下の有無:問診――体重減少・食欲不振の有無、食事量減少の有無

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
藤山理恵 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:高野利実 : 講演料(イーライリリー,第一三共(株),ギリアド・サイエンシズ(株))[2025年]

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抗癌剤による味覚障害に対する治療

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