今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 渡辺宏久 藤田医科大学医学部 脳神経内科学教室

監修: 高橋裕秀 昭和大学藤が丘病院 脳神経内科

著者校正/監修レビュー済:2024/03/21
参考ガイドライン:
  1. 日本神経学会:脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 第1版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 2022年にThe Movement Disorder Societyにより提唱された診断基準(Wenning GK, et al. Mov Disord. 2022 Jun;37(6):1131-1148.)を記載した。

概要・推奨   

  1. 根治療法は無いが、適切な対症療法を行い、社会的支援を行うためにも早期診断に努める推奨度1
  1. 突然死の多い神経変性疾患であることを知り、適切な病状説明を行う(推奨度2
  1. わが国で最多の脊髄小脳変性症という臨床像と、パーキンソン病と最も鑑別を要する臨床像を併せ持つ疾患であることを念頭に置く必要がある(推奨度1

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 多系統萎縮症(multiple system atrophy、MSA)とは、以前は別個の疾患とみられてきた、オリーブ橋小脳萎縮症、Shy-Drager症候群、線条体黒質変性症に、病理上同じ特徴が認められて統合された神経変性疾患群である。
  1. 孤発性、進行性、成人発症(>30歳)の疾患で、自律神経不全に加えてL-ドパ反応性不良のパーキンソニズムまたは小脳症状を呈する。経過中に、必ず難治性の膀胱症状や呼吸障害が出現する。
  1. 小脳症状を主体とするものはMSA-C、パーキンソニズムを主体とするものはMSA-Pと分類する。
  1. 中枢神経に広範囲かつ大量のα-シヌクレイン陽性のグリア細胞質内封入体(GCI)を伴う神経病理学的所見が認められ、腺条体黒質またはオリーブ橋小脳の神経変性変化を伴う。
  1. わが国でのMSAは、MSA-Cは67%、MSA-Pは33%であるが、欧米では、MSA-Pのほうが多いとする報告がみられる。
  1. 経過中に優勢な運動症状が変化することがあるのでMSA-C、MSA-Pの呼称は評価時点の主症状を指す。
  1. 多系統萎縮症は、指定難病であり、その一部(modified Rankin Scale、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上などの場合)は、申請し認定されると医療費の自己負担分の一部が公費負担として助成される。平成27年1月施行
  1. 難病法に基づく医療費助成制度
問診・診察のポイント  
  1. 自律神経障害か運動症状(パーキンソニズムもしくは小脳性運動失調)のいずれかで発症する場合が多く、自律神経障害と運動症状をともに認めるまでに中央値で2年ほど要する。長期にわたり(まれに10年以上)いずれか1系統の異常のみを呈する症例があるので留意する必要がある。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
渡辺宏久 : 未申告[2024年]
監修:高橋裕秀 : 特に申告事項無し[2024年]

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多系統萎縮症

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