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著者: 竹中秀也 京都市立病院 皮膚科

監修: 戸倉新樹 掛川市・袋井市病院企業団立 中東遠総合医療センター 参与/浜松医科大学 名誉教授

著者校正/監修レビュー済:2022/06/23
参考ガイドライン:
  1. 日本皮膚科学会:皮膚悪性腫瘍ガイドライン(基底細胞癌の項)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。

概要・推奨   

  1. 整容的見地から切除の希望がある場合には、皮膚科あるいは形成外科に紹介することが推奨される。
  1. 二次腫瘍が疑われる場合には、皮膚科あるいは形成外科に紹介することが推奨される。
  1. 線状脂腺母斑症候群が疑われる場合には、小児科、眼科、脳外科などにもコンサルトすることが推奨される。

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 脂腺母斑は、脂腺の増加を特徴とする過誤腫性の限局性病変で、多くは生下時から存在し、頭部や顔面に好発する。新生児の0.12~0.3%でみられる。
  1. 表皮、毛包、汗腺や真皮結合織など、種々の成分由来の細胞が異常増殖して生じる。
  1. 通常、単発性で長径1~10 cm程度、類円形ないし線状で、わずかに隆起した黄白色の局面を呈する。頭部に生じると脱毛斑となる(第1期)。
  1. 思春期頃から病変部は肥厚・隆起し、表面が疣贅状となる(第2期)。
  1. 中年以降になると良性ないし悪性の二次腫瘍が発生する(第3期)。続発する腫瘍としては良性付属器腫瘍(乳頭状汗管嚢胞腺腫や毛芽腫など)や 基底細胞癌 が多い。
 
脂腺母斑:成人の頭部に生じた二次腫瘍(毛芽腫)

病歴:60歳代女性、生下時より右頭頂部に脱毛斑を認め、2年前から同部に紅色結節が生じ徐々に増大してきたため受診した。
診察:右頭頂部に黄色のわずかに隆起した局面と、そのなかに紅色結節を認める。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から脂腺母斑に生じた二次腫瘍を疑い皮膚生検を行った。病理検査から二次腫瘍は毛芽腫と診断された。
治療:局所麻酔下に、脂腺母斑全体の切除・縫縮術を行った。
転帰:切除術後の瘢痕を認めるのみとなる。

出典

著者提供
 
  1. きわめてまれに線状脂腺母斑症候群の皮膚症状としてみられることがある。本症候群は顔面正中部の列序性脂腺母斑、けいれん、精神発達遅滞を3徴候とし、眼、骨格系、心・血管系、泌尿・生殖器系などの異常を合併する。
  1. 脂腺母斑の病変部の組織に、RAS遺伝子の変異があることが知られている。HRASおよびKRASが線状脂腺母斑症候群の原因遺伝子とされる。また、実験的にRAS変異により、機能的に細胞増殖活性を獲得していることが示されている。脂腺母斑とそれに続発する皮膚腫瘍は、癌遺伝子RASを起点とするシグナルの恒常的な活性化により生じることが示唆される。
問診・診察のポイント  
  1. 脂腺母斑は、生下時から頭部の黄色調を呈する脱毛斑として認められることが多い。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
竹中秀也 : 未申告[2024年]
監修:戸倉新樹 : 講演料(サノフィ(株),日本イーライリリー(株),アッヴィ合同会社,協和キリン(株))[2024年]

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