今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 横山美貴 町立八丈病院 小児科

監修: 渡辺博 帝京大学老人保健センター

著者校正/監修レビュー済:2022/03/16
参考ガイドライン:
  1. 日本気胸・嚢胞性疾患学会;気胸・嚢胞性疾患規約・用語・ガイドライン 2009年版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1.  定期レビューを行った。脱気器具についての解説を追加した。

概要・推奨   

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 気胸は、胸腔内に空気が貯留した状態をいう。患側肺の容積は減少する。自然気胸(特発性、続発性)、外傷性気胸、医原性気胸に分類される。縦隔気腫は、縦隔内に空気が貯留した状態をいい、気胸に併発・続発することが多い。
  1. 小児科領域では年齢ごとに特徴があり、新生児で比較的多く全出生の1~2%にみられ、乳幼児期には少なく、年長児になると再び増える。
  1. 特発性(自然)気胸の頻度は全年齢において10万人に対して5~10人とされ、16~24歳に最も多く、男性に3~6倍多い。
  1. 胸部異所性ガスの原因としては、①肺胞・気管・気管支、食道の破裂や穿孔②胸壁・壁側胸膜の破断――が挙げられる。
  1. 過度に肺胞内圧が上昇し肺胞(および臓側胸膜)が破裂し肺胞内空気が胸腔内へ直接進入すれば気胸、肺間質に漏出すれば間質性肺気腫(pulmonary interstitial emphysema、PIE)、肺静脈に入れば空気塞栓症となる[1]
 
空気漏出の経路

Ao:下行大動脈、Br:気管支、D:横隔膜、H:心臓、PA:肺動脈、PIE:肺間質気腫、PP:壁側胸膜、PV:肺静脈、T:気管、VP:臓側胸膜
 
参考文献:大場覚: 胸部異所性ガスのX線像.臨床医 1998; 24: 2193. を参考に作製

 
  1. 空気が気管支・肺血管壁に沿って肺門から縦隔に出れば縦隔気腫となり、さらに上行すれば皮下気腫、下行すれば後腹膜気腫・気腹となる。心嚢気腫を合併する場合もある。反対に、空気が末梢に進み胸膜下嚢胞(ブレブ・ブラ)となり、胸腔内に破れて気胸となることがある。
  1. 肺表面では、ブレブは臓側胸膜の内・外側弾性板間に、ブラは内側弾性板内にそれぞれ空気の貯留が起こる[2]
 
ブレブとブラ

ブレブは臓側胸膜の内・外側弾性板間に、ブラは内側弾性板内に空気の貯留が起こる。
 
参考文献:D.Lamb: Chronic bronchitis, emphysema, and the pathological basis of chronic obstructive pulmonary disease. Spencer’s Pathology of the Lung, 5th ed. ED by P.S.Hasleton, McGraw-Hill, US, p.613-614, 1996 を参考に作成

 
  1. 肺虚脱が軽度で軽症の場合、安静、酸素投与にて経過をみる(空気より酸素のほうが組織への吸収が速いため漏出空気を酸素と置換する)。
  1. 肺虚脱度が20%以上の場合、まず単回の胸腔穿刺を行う。改善を認めない場合、胸腔ドレナージ(トロッカーカテーテル留置、持続吸引)を行う。
  1. 多量あるいは持続的な空気漏出があると緊張性気胸となり健側肺も圧排され、急速に低酸素・高二酸化炭素血症に陥り、緊急処置を要する。
  1. 一般に予後良好であるが、手術しなかった場合、成人で30%、小児では50~60%の再発率がある[3]。特にMarfan症候群やEhlers-Danlos症候群などの結合組織疾患ではさらに多くなる。
問診・診察のポイント  
  1. 気胸・縦隔気腫は内因性と外因性に分けられ、前者は特発性と続発性に、後者は外傷性・医原性・人工(検査)に分類される。

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
横山美貴 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:渡辺博 : 特に申告事項無し[2024年]

ページ上部に戻る

気胸(小児科)

戻る