今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 広瀬宏之 横須賀市療育相談センター

監修: 五十嵐隆 国立成育医療研究センター

著者校正/監修レビュー済:2023/05/24
参考ガイドライン:
  1. アメリカ小児科学会(AAP):Identification, Evaluation, and Management of Children With Autism Spectrum Disorder
  1. アメリカ精神医学会(APA):DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 支援にあたっては、医療モデルよりも社会モデルを上位に置くべきであると言う点を強調した。
  1. 基本的にDSM-5に準拠する用語に統一した。
  1. 薬物治療をアップデートした。

概要・推奨   

  1. 自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)を疑った場合は、コミュニケーションの発達と、興味や感覚の偏り有無を確認する(推奨度1)
  1. 状況依存性があるため、診察室での様子だけではなく、家庭や集団などさまざまな局面での様子を聴取する(推奨度2)
  1. 発達水準や発達特性を確認するために発達検査や知能検査を行い、難聴を否定するために聴力検査を行う(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)は、発達過程で顕在化する中枢神経系の器質的機能障害による対人コミュニケーション障害を主徴とする発達障害である。
  1. 原因は特定されていないが、発達特性自体には遺伝的要素が強い。
  1. ASDは広汎性発達障害(pervasive developmental disorders、PDD)とほぼ同じ一群を指す。1994年公表のアメリカ精神医学会の精神疾患診断マニュアルDSM-Ⅳでは、広汎性発達障害の下位カテゴリーとして自閉性障害、レット障害、小児期崩壊性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害が含まれている。
  1. 2013年に公表されたDSM-Ⅴでは、これらの下位カテゴリーがなくなり、自閉スペクトラム症に一本化された。(DSM-5におけるASDの診断基準)( >詳細情報 )
  1. 有病率は2.0~3.0%、男女比は3~4:1である[1]
  1. 検査で病巣を発見し医学的に治癒すると言う医療モデルに則った支援ではなく、福祉・教育を含めて、よりよい発達と社会参加を保証していくことが目標となる(社会モデル)[2]
 
  1. ASDの脳の変化
  1. ASDは発達過程で顕在化する中枢神経系の器質的機能障害を原因とするが、根本原因はまだ明らかでない。これまで報告されてきた障害部位を(表<図表>)に[3]、原因として確定するための必要十分条件を(表<図表>)に示した[4]
  1. 大脳辺縁系仮説は多くの臨床像を説明するが、それでも必要十分とはいえない。すべてのASDで大脳辺縁系の異常同定されているわけではないからである。
  1. 近年のトピックスはニューロンの発達異常、特に「接続不良説」(developmental disconnection)である。高次脳機能を担うシナプス結合に機能的・器質的な接続不良があり、特に、皮質-皮質間などの長い軸策によるシナプス接続の形成や維持の問題がASDの基本障害という説である[5]。これは必要十分性をかなり満たしている。これからの検証を期待したい。
 
自閉スペクトラム症の障害部位仮説

自閉スペクトラム症の障害部位としては、ほぼすべての脳部位について報告があるが、いまだに決定的な定説には到達し得てない。

出典

十一元三: 自閉性障害・アスペルガー障害の見方に誤りはないか.科学 2007;77:111-118.
 
自閉スペクトラム症の原因の必要十分条件

自閉スペクトラム症の原因となる病態が満たすべき必要十分条件は、表の4点である。

出典

黒田洋一郎: 発達障害の子どもの脳の違いとその原因. 科学 2008;78:451-457.
 
  1. ASDの遺伝的要因
  1. 同じ遺伝子をもつ一卵性双生児の場合、ASDの一致率は90%であることから、遺伝的要因が強く関連することが示唆されている。また、第1子がASDである場合、次子がASDである確率は約5%、診断には至らないが発達の凸凹がある確率は約20%である。
  1. これまで2番、6番、11番、15番、17番、22番などの染色体で異常が報告されてきたが、これらの異常は全ASD中5~7%でしか検出されない。また、10%程度の患者にCopy Number Variant(CNV)が検出されているが、全例は説明できない[6][7]。つまり、現時点で必要十分条件を満たす遺伝子異常はみつかっていない。
  1. 一方で、ASDが単一遺伝子異常である可能性はほぼ否定され[8]、複数の遺伝子の組合せによる多因子遺伝、もしくは環境との相互作用も加味されて(エピジェネティックス)病因が形成されるという可能性が大きくなっている[9]
 
問診・診察のポイント  
  1. 診断は丁寧な臨床観察と発達歴の聴取により行う。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
広瀬宏之 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:五十嵐隆 : 特に申告事項無し[2025年]

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自閉スペクトラム症(小児科)

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