今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 富澤大輔 国立成育医療研究センター 小児がんセンター 血液腫瘍科

監修: 五十嵐隆 国立成育医療研究センター

著者校正/監修レビュー済:2024/05/15
参考ガイドライン:
  1. 日本小児血液・がん学会:小児白血病・リンパ腫診療ガイドライン 2016年版
  1. National Comprehensive Cancer Network (NCCN®) (https://www.nccn.org/):NCCN Guidelines Version 2.2023 Pediatric Acute Lymphoblastic Leukemia
  1. 日本造血・免疫細胞療法学会 :造血細胞移植ガイドライン 小児急性リンパ性白血病(第4版)
  1. 日本造血・免疫細胞療法学会 :造血細胞移植ガイドライン 小児急性骨髄性白血病(第4版)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 小児ALLの治療に、ペグアスパルガーゼ(PEG化L-アスパラギナーゼ)およびクリサンタスパーゼ(エルウィニアL-アスパラギナーゼ)を追加した。
  1. 小児ALL治療におけるメルカプトプリン投与量を、NUDT15遺伝子多型検査に基づいて決定することを追加した。
  1. 初発の小児ALL治療における頭蓋放射線照射の適応を、少なくともCNS浸潤陽性例に限定すべき、とした。
  1. 再発小児ALLの治療に、ブリナツモマブおよびチサゲンレクルユーセル(キメラ抗原受容体T細胞療法:CAR-T)を追加した。
  1. 小児ALLにおける非寛解期の同種造血細胞移植を推奨度3に変更した。
  1. 初発の小児AML治療における初期治療反応性評価において、フローサイトメトリー法を用いた微小残存病変(MRD)検査を行うことを推奨した。
  1. 小児AMLの高リスク群に対する第1寛解期における同種造血細胞移植の適応を推奨度1に変更した。
  1. 小児APLの治療に、ATRAと亜ヒ酸を用いた治療を追加した。

概要・推奨   

  1. 小児急性リンパ性白血病(ALL)の治療方針決定のために、治療開始前には年齢、白血球数、中枢神経浸潤、免疫学的分類、染色体・遺伝子異常などの検査が必要である。治療開始後の検査としては、プレドニゾロン(PSL)反応性と寛解の有無が重要である。寛解後はフローサイトメトリーやPCR法を用いた微小残存病変(MRD)の検査が推奨される(推奨度1)
  1. 小児ALLの寛解導入治療には、プレドニゾロン(PSL)またはデキサメタゾン(DEX)、ビンクリスチン(VCR)、L-アスパラギナーゼまたはペグアスパルガーゼ(PEG化L-アスパラギナーゼ)の少なくとも3剤の全身投与と、メソトレキセート(MTX)の髄腔内投与(髄注)を行う。高危険群には3剤にアントラサイクリン系薬剤を加える(推奨度1)
  1. 小児ALLの治療中にL-アスパラギナーゼまたはペグアスパルガーゼによる過敏症を認めた場合は、クリサンタスパーゼ(エルウィニアL-アスパラギナーゼ)への変更が推奨される(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 急性白血病は最も頻度の高い小児がんで、国内では年間に700~800例程度発症する。
  1. 急性白血病は、主として急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia、ALL)と急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia、AML)に分けられ、その比率はおよそ3:1である。
  1. 未熟な造血細胞に自律的増殖能の獲得と分化成熟障害が起こり、腫瘍化した病態である。
  1. 増殖の主たる場所は骨髄であるが、全身のリンパ節や肝臓、脾臓、中枢神経などに浸潤する。
  1. 無治療では数カ月以内に死亡するが、現在では治療が進歩しALLで約90%、AMLで約70~80%の長期生存が得られる。
 
北米Children’s Oncology Groupにおける小児ALLの治療成績の時代的変遷

北米Children’s Oncology Group (COG)における小児ALLの生存率の時代的変遷を示す。治療成績が確実に向上していることが明らかである。

出典

Raetz EA, et al. Pediatr Blood Cancer. 2023 Sep;70 Suppl 6:e30585.
 
主要な研究グループによる小児ALLの最近の治療成績

2000年以降に開始された臨床試験の多くで、5年無イベント生存率(EFS)80%以上、全生存率(OS)約90%が達成されている。
 

出典

Pui CH, et al. J Clin Oncol. 2015 Sep 20;33(27):2938-48.
 
主要な研究グループによる小児AMLの最近の治療成績

AM:シタラビン + ミトキサントロン、AMSA:アムサクリン、Ara-C:シタラビン、Clo:クロファラビン、CR1:第一寛解、CBF:core binding factor、DNX:ダウノキソーム、FLA-DNX:フルダラビン+シタラビン+ダウノキソーム、HSCT:造血細胞移植
*GO(ゲムツズマブ オゾガマイシン)群
**Clo(クロファラビン)+Ara-C(シタラビン)群
 
 
最近では5年無イベント生存率(EFS)46~63%、全生存率(OS)65~80%が達成されている。

出典

Tomizawa D, et al. Cancers (Basel). 2023 Aug 18;15(16):4171.
 
  1. 治療は化学療法が主体であるが、難治例や再発例では造血細胞移植が行われる。アルゴリズムアルゴリズム
  1. 治癒率の向上に伴い、長期合併症が課題になってきている。
問診・診察のポイント  
  1. 急性白血病の臨床症状は、白血病細胞の増殖による症状として腫瘍熱、骨痛、肝脾腫、リンパ節腫脹などが、また正常造血の低下による症状として貧血や出血傾向などがある。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
富澤大輔 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:五十嵐隆 : 特に申告事項無し[2024年]

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