今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 山下勝 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野

監修: 森山寛1) 東京慈恵会医科大学附属病院

監修: 小島博己2) 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科

著者校正/監修レビュー済:2024/09/18
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、ISSVA分類によるリンパ管奇形について加筆した。

概要・推奨   

  1. 深頸部膿瘍とは、深頸部感染症の一形態であり、頸部に存在する疎な結合織からなる間隙に感染が波及し膿瘍を形成したものである。そのうち咽頭後間隙に膿瘍を形成したものが咽後膿瘍である。
  1. 原疾患となり得る外傷、異物や口腔咽喉頭、歯牙の炎症性疾患の治療中や初診時に咽頭痛、発熱といった一般的な炎症症状に加えて、呼吸困難、嚥下困難、開口障害が出現し、さらに頸部の発赤、腫脹、疼痛、ときに握雪音が出現する場合には単なる上気道炎ではなく頸部下方の各間隙に感染波及した重症感染症を疑う。
  1. 本疾患を疑った際には、まず気道狭窄の有無をチェックし、必要に応じて気道確保処置を行う。その後に、気道管理と輸液を含めた全身管理と共に、抗菌薬投与および膿瘍切開による感染病変の制御を行う。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 深頸部膿瘍とは、深頸部感染症の一形態であり、頸部に存在する疎な結合織からなる間隙に感染が波及し膿瘍を形成したものである。そのうち咽頭後間隙に膿瘍を形成したものが咽後膿瘍である。
 
頸部筋膜解剖、頸部軸位断面

頸部の深層筋膜には、①深頸筋膜浅葉:頸椎棘突起と項靱帯から頸部の外側を取り巻き正中に達する、②深頸筋膜中葉:甲状腺、気管、喉頭、咽頭、食道周囲を囲む。咽頭後方部では頬咽頭筋膜と呼ばれ側方に伸び、鈎状突起、翼突下顎縫線に付着する、③深頸筋膜深葉:頸椎棘突起と項靱帯から項筋の外側を覆った後、僧帽筋の内側を通り頸椎の横突起に付着し椎前筋を覆う――がある。そして頸動脈、頸静脈、迷走神経等を取り巻く頸動脈鞘が存在する。
 
参考文献:
総説:頸部局所解剖の形態学的背景. 耳鼻咽喉科診療プラクティス 8――耳鼻咽喉科頭頸部外科のための解剖. 岸本誠司編, 文光堂, 2002, p2-17.

出典

Vieira F, Allen SM, Stocks RM, Thompson JW.
Deep neck infection.
Otolaryngol Clin North Am. 2008 Jun;41(3):459-83, vii. doi: 10.1016/j.otc.2008.01.002.
Abstract/Text Deep neck infections present significant morbidity and mortality, particularly when associated with predisposing factors that impair a functional immunologic response. Familiarity with deep neck spaces and fascial planes is critical, because these form the basis for the emergent nature of the disease process. Common and potentially life-threatening complications include airway obstruction, jugular vein thrombosis, descending mediastinitis, sepsis, acute respiratory distress syndrome, and disseminated intravascular coagulation. The most common primary sources of deep neck infection are odontogenic, tonsillar, salivary gland, foreign body, and malignancy. Microbiology typically reveals mixed bacterial flora, including anaerobic species, that can rapidly progress to a fulminating necrotizing fasciitis. The treatment cornerstone remains securing the airway, providing efficient drainage and appropriate antibiotics, and improving immunologic status. A prolonged hospital stay should be anticipated.

PMID 18435993
 
頸部間隙

副咽頭間隙(緑線)は舌骨を頂点として頭蓋底までの逆三角錐状の形態を示す舌骨上の間隙である。後方では頸動脈間隙および咽頭後間隙と隣接し、さらに後方には椎前間隙があり縦隔の後部に至り、下方では内臓間隙と接しているため、感染病変が舌骨を越えて下方に進展していく際には重要な経路となる。
頸部の間隙は、頸部の全長に及ぶものと舌骨の上部あるいは下部にとどまる間隙に分けられる。前者には表層間隙、頸動脈間隙、咽頭後間隙、危険間隙、椎前間隙、後頸間隙があり、後者のなかで舌骨の上部には舌下間隙、顎下間隙、副咽頭間隙、咀嚼筋間隙、耳下腺間隙があり、舌骨の下部には内臓間隙、前頸間隙が含まれる。
右には魚骨異物により頸部皮下気腫を来した症例の頸部CTを示している。元来結合織や脂肪などがあるべき部位に空気が進入し、あたかも頸動脈(赤丸)、頸静脈(青丸)などの各器官が浮かんでいるように示されている。咽頭後間隙、危険間隙、内臓間隙、頸動脈間隙などは胸部の縦隔へと連続しており、頸部膿瘍が進展すると、これらの経路により縦隔炎を起こす可能性が理解される。

出典

波多野篤先生ご提供
 
  1. 頸部には筋膜で囲まれた間隙が多数存在し、当初は間隙内に存在するリンパ節の感染症であるリンパ節炎(図<図表>)として発症するが、進行すると疎性結合織の感染症である蜂巣炎(図<図表>)となり、さら進展すると膿瘍(図<図表>)を形成する。これらを総称して深頸部感染症と称する。
  1. 気道狭窄、DIC、敗血症などの合併症を合併し、さらに縦隔膿瘍へと進展した場合は、治療に難渋し、ときに死亡例もみられるために早急な対応が必要な疾患である。
  1. 原発疾患として外傷、異物のほかにう歯を含む口腔咽頭や唾液腺の感染性疾患が挙げられる。
  1. 起炎菌としては、Streptococcus属やStaphylococcus属などの好気性菌と、Peptococcus属などの嫌気性菌が認められる。
問診・診察のポイント  
診断のポイント
  1. 頸部の発赤、腫脹、疼痛など頸部軟部組織に炎症性所見を認める場合は、膿瘍を含めた深頸部感染症の可能性を念頭に置いたうえで診療を行うことが重要である。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
監修:森山寛 : 未申告[2024年]
監修:小島博己 : 特に申告事項無し[2024年]

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深頸部膿瘍・咽後膿瘍

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