今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 新谷悟 医療法人社団 優新会 東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック

監修: 近津大地 東京医科大学

著者校正/監修レビュー済:2024/03/21
参考ガイドライン:
  1. 日本口腔腫瘍学会:科学的根拠に基づくエナメル上皮腫の診療ガイドライン 2015年度版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。

概要・推奨   

  1. 骨外型/周辺型や単嚢胞型、さらに充実型/多房型の一部も適応と考えられるが、単嚢胞型ではさらにその亜型(サブタイプ)により手術法を決定することが勧められている。また、顎骨保存外科療法を行う際は、単純な掻把術や摘出術では高い再発率が報告されている。このため、腫瘍を摘出した後に周囲骨の掻把や削除、カルノア液による化学的焼灼法や凍結療法の併用が推奨されている(推奨グレードC1)。
  1. 顎骨切除は、エナメル上皮腫のいずれの症例にも適応できるが、とくに充実型/多嚢胞型や類健型に用いられることが多い。根治性の高い治療法であるが、年齢、性別、全身状態などを考慮する必要がある(推奨グレードC1)。
※本推奨度は「科学的根拠に基づくエナメル上皮腫の診療ガイドライン 2015年度版」に準拠している

まとめ 

まとめ  
  1. 顎口腔領域に発生する良性腫瘍には歯原性、非歯原性のものがある[1]
  1. 顎口腔領域腫瘍性病変の一覧:鑑別疾患表 参照
  1. 日本の過去20年間の症例の評価の結果、1:良性と悪性は約100対1で良性腫瘍が圧倒的に多いこと、2:良性腫瘍が20歳代以下の若年者に多く悪性腫瘍では50歳以上の高齢者に見られること、3:発生部位は良性・悪性ともに下顎に多いこと、がわかっている。
  1. 歯原性良性腫瘍とは歯の発生過程における各組織(歯胚)に由来するもの(エナメル上皮腫、歯牙腫)をいう[1]。歯胚は、さらにエナメル器、歯乳頭、歯小囊に分化するが、その後それぞれ、エナメル器はエナメル質、歯乳頭は象牙質を、歯小囊はセメント質・固有歯槽骨を形成する。これらの腫瘍は歯を形成する組織から発生するため、顎骨に特有な腫瘍で他の部にはほとんどみられない。
  1. 非歯原性良性腫瘍とは顎口腔領域以外の身体他部にも発生するもの(乳頭腫、線維腫、骨腫)をいう[1]
  1. 腫瘍類似疾患とは病理学的に真性腫瘍でなく腫瘍類似増殖を示す病変(エプーリス、義歯性線維腫)をいう[1]
 
歯原性良性腫瘍:
  1. 上述のように歯原性良性腫瘍には、以下のような腫瘍が含まれる。日本の過去20年間の症例の評価の結果それぞれの発生頻度も報告されており、とりわけ、エナメル上皮腫の頻度が高いことがわかっている。
  1. エナメル上皮腫 29%
  1. 歯牙腫 21%
  1. 骨性異形成症 6%
  1. 骨形成線維腫 5%
  1. その他 15%
 
鑑別疾患表(歯原性腫瘍):
歯原性悪性腫瘍
  1. 歯原性癌腫:
  1. 転移性エナメル上皮腫
  1. エナメル上皮癌
  1. 原発性骨内扁平上皮癌
  1. 角化囊胞性歯原性腫瘍に由来する原発性骨内扁平上皮癌
  1. 歯原性囊胞に由来する原発性骨内扁平上皮癌
  1. 歯原性明細胞癌
  1. 歯原性幻影細胞癌
  1. 歯原性肉腫
  1. エナメル上皮線維肉腫
  1. エナメル上皮線維象牙質肉腫および線維歯牙肉腫
歯原性良性腫瘍
  1. 歯原性上皮由来で成熟した線維性間質を伴い, 歯原性外胚葉性間葉組織を伴わないもの
  1. エナメル上皮腫
  1. 扁平歯原性腫瘍
  1. 歯原性石灰化上皮腫
  1. 腺様歯原性腫瘍
  1. 歯原性上皮由来で歯原性外胚葉性間葉組織を伴うもの
  1. 歯牙腫
  1. エナメル上皮線維腫
  1. エナメル上皮線維象牙質腫
  1. エナメル上皮線維歯牙腫
  1. 歯牙エナメル上皮腫
  1. 石灰化囊胞性歯原性腫瘍
  1. 象牙質形成性幻影細胞腫瘍
  1. 間葉性あるいは歯原性外胚葉性間葉組織由来のもの
  1. 歯原性線維腫
  1. 歯原性粘液腫/粘液線維腫
  1. セメント芽細胞腫
  1. 骨関連病変
  1. 骨形成線維腫
  1. 線維性異形成症
  1. 骨性異形成症
  1. 中心性巨細胞病変
  1. ケルビズム
  1. 脈瘤性骨嚢胞
  1. 単純性骨嚢胞
その他の腫瘍
  1. 乳児の黒色性神経外胚葉性腫瘍
 
鑑別疾患表(非歯原性腫瘍):
非歯原性良性腫瘍
  1. 乳頭腫
  1. 線維腫
  1. 骨腫
  1. 血管腫
  1. 化骨性線維腫リンパ管腫脂肪腫
非歯原性悪性腫瘍
  1. 扁平上皮癌
  1. 小唾液腺、大唾液腺から発生する腺癌
  1. 肉腫
  1. 悪性リンパ腫

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文献 

白砂兼光, 古郷幹彦: 口腔外科学 第4版. 医歯薬出版,2020.
河村正昭: 顎骨保存法としての反復処置法. 歯科ジャーナル 1993;37:860-864.
日本口腔腫瘍学会ワーキンググループ編:科学的根拠に基づく エナメル上皮腫の診療ガイドライン 2015年度版、学術社、2015.
鶴巻浩,大橋靖:歯牙腫の臨床統計.歯科ジャーナル 1993;37:656-659.
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
新谷悟 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:近津大地 : 特に申告事項無し[2024年]

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