今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 熊谷天哲1) 帝京大学医学部附属病院 腎臓内科

著者: 花房規男2) 東京女子医科大学 血液浄化療法科

監修: 花房規男 東京女子医科大学 血液浄化療法科

著者校正/監修レビュー済:2023/10/11
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、治療法や最新の文献について加筆修正を行った。

概要・推奨   

  1. 腸管疾患のある高齢患者では、腎機能障害がなくても高度の高マグネシウム血症になることがある。
  1. 高マグネシウム血症は低マグネシウム血症に比べて頻度が低い(推奨度2)
  1. 高マグネシウム血症は腎機能障害のある患者で認めることが多い(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. マグネシウム濃度は、通常の診療で測定されることは少ない。
  1. 血中マグネシウム濃度の正常値は1.8~2.4 mg/dLである。単位の変換は、1mEq/L = 0.5 mM = 1.2 mg/dLである。体内のマグネシウムは60~70%が骨組織に、30%が筋肉・肝臓など軟部組織に分布し、細胞外液中には約1%しか存在しない。体内のマグネシウムバランスは主に腎臓の尿細管で調節されている。
 
マグネシウム代謝

出典

Joel Michels Topf, Patrick T Murray
Hypomagnesemia and hypermagnesemia.
Rev Endocr Metab Disord. 2003 May;4(2):195-206.
Abstract/Text
PMID 12766548
 
  1. 高マグネシウム血症は、腎機能障害やマグネシウムの投与がなければまれである。
  1. 臨床上は推算GFR 30mL/min/1.73m2未満のstageG4以上のCKD患者が最も多い。マグネシウムを含む胃薬や下剤を使用している患者では注意が必要である。
  1. 妊婦で子癇前症、子癇に対してマグネシウム製剤の静注を施行した患者では高マグネシウム血症の発症に対して注意が必要である。
  1. 高マグネシウム血症は低マグネシウム血症に比べて頻度は少ない。また、症状のみで高マグネシウム血症を疑うことは難しいことが多く、他の電解質異常がある場合や腎機能障害、マグネシウム製剤の常用がある場合には血中マグネシム濃度測定を考慮する。
  1. 高マグネシウム血症の鑑別は、尿中マグネシウム排泄量、クレアチニンクリアランスをまず測定することから始める(図アルゴリズム, 合併疾患・鑑別疾患: >詳細情報 )。実際の症例では、高度の高マグネシウム血症は中等度以上の慢性腎障害の場合が多い。ただし、高齢者で腸管疾患のある患者でマグネシウム製剤を使用している場合には、高マグネシウム血症になることがあり、注意が必要である。
  1. 治療法として、カルシウム製剤の静注が呼吸抑制や不整脈の予防に一時的に効果がある。また尿からのマグネシウム排泄を促進するため、生理食塩水投与とフロセミドの静注を行う。
  1. 予防が大切であり、高度の腎機能障害(急性腎障害、慢性腎障害)のある患者では、マグネシウム製剤の使用は慎重に行う必要がある。
  1. 末期腎不全の患者で維持透析中の患者ではマグネシウム濃度を正常範囲より若干高めに維持することで血管の石灰化を抑制できる可能性がある。
 
  1. 高マグネシウム血症は低マグネシウム血症に比べて頻度が低い(推奨度2)
  1. まとめ:高マグネシウム血症の頻度は低マグネシウム血症に比べて頻度が低かった。
  1. 代表事例:マグネシウム濃度異常は他の電解質異常に伴うことが多いため、電解質の検査に提出された1,033例でマグネシウム濃度を測定した。487例で低マグネシウム血症を認め、59例で高マグネシウム血症を認めた。内科医がマグネシウム濃度を測定しようとしたのは、低マグネシウム血症の症例の内10%、高マグネシウム血症の症例の内13%であった[1]
  1. 結論:高マグネシウム血症は低マグネシウム血症に比べて頻度が少ない。内科医がマグネシウム濃度異常を予測できた症例は少なかった。
  1. 追記:この論文では電解質の異常を疑った際には、マグネシウム濃度測定をルーチンにすることを推奨している。
 
  1. 高マグネシウム血症は腎機能障害のある患者で認めることが多い(推奨度2)
  1. まとめ:高マグネシウム血症のある患者の70%以上に腎機能障害を認めた。
  1. 代表事例:入院中の患者で高マグネシウム血症の患者のプロフィールを調べた。2.4mg/dL以上の高マグネシウム血症の患者の内73%で腎機能障害を認めた[2]
  1. 結論:高マグネシウム血症は腎機能障害のある患者で認めることが多い。
  1. 追記:2.4mg/dL以上の高マグネシウム血症は27%で認められたのに対して、4.8mg/dL以上の高マグネシウム血症は1%以下であった。
 
  1. 腸管疾患のある患者ではマグネシウム投与により高マグネシウム血症になりやすい(推奨度2)
  1. まとめ:高度の高マグネシウム血症の患者8人の内7人にマグネシウム吸収を促進する可能性のある腸管疾患を認めた。
  1. 代表事例:1984年から1989年の間の入院患者で8人に高度の高マグネシウム血症を認めた。その内7人にマグネシウム吸収を促進する可能性のある腸管疾患(胃炎、腸炎、急性の潰瘍病変など)を認めた。意外なことに、以前から腎不全のある患者は1人のみであった。患者は1人を除いて高齢であった[3]
  1. 結論:高度の腎機能障害がない場合でも高齢の患者でマグネシウム吸収を促進する可能性のある腸管疾患がある場合には、高マグネシウム血症になり得る。
  1. 追記:低血圧、徐脈、呼吸不全、心電図異常、うつ傾向が認められたが、高マグネシウム血症が疑われたのは8例中2例のみであった。
 
  1. カルシウム製剤はマグネシウムの作用に拮抗する(推奨度2)
  1. まとめ:カルシウム製剤はマグネシウムの作用に拮抗するため、高マグネシウム血症の一時的な治療として使用することが可能である。
  1. 代表事例:カルシウム製剤は以前より、マグネシウムの作用に拮抗するものと考えられてきた。動物実験でカルシウム投与は高マグネシウム血症による低血圧を速やかに改善した。高マグネシウム血症による呼吸抑制に対しても使用される。新生児では大人よりカルシウム製剤の効果は少ないが、臨床的にカルシウム製剤の使用は推奨される。
  1. 結論:高マグネシウム血症の一時的な治療としてカルシウム製剤の使用が推奨される[4]
 
  1. 利尿薬のフロセミド投与は尿からのマグネシウム排泄を増加させる(推奨度2)
  1. まとめ:利尿薬のフロセミドは尿細管 (ヘンレ係蹄の太い上行脚)におけるマグネシウムの再吸収を抑制し、尿中へのマグネシウム排泄を増加させるため、高マグネシウム血症の治療として推奨される。
  1. 代表事例:比較的高度の腎機能障害(血清クレアチニン5.3 mg/dL)で高マグネシウム血症(6.9 mEq/L)を認めた88歳の症例で血液透析による治療を家族が希望しなかった際に、生理食塩水とフロセミド静注により高マグネシウム血症は改善した。フロセミドによるマグネシウム排泄増加のメカニズムとしては、以下のことが想定されている。ヘンレ係蹄では管腔側が陽性に荷電することにより、陽イオンのMg2+が受動的に細胞間のparacellular経路を通じて吸収される。フロセミドはNa+-K+-2Cl- cotransporter (NKCC2)を阻害することにより、renal outer medullary potassium (ROMK)による管腔側の陽性荷電がなくなり、マグネシウムの再吸収が低下する。
 
ヘンレ係蹄上行脚におけるマグネシウム再吸収

参考文献:
  1. David EC Cole et al.: Inherited disorders of renal magnesium handling. J Am Soc Nephrol 11:1937-1947, 2000
  1. Leo Monnens et al.: Great strides in the understanding of renal magnesium and calcium reabsorption. Nephrol Dial Transplant 15:568-571, 2000

出典

著者提供
 
  1. 結論:高マグネシウム血症の治療として生理食塩水投与と利尿薬フロセミドの使用が推奨される[5]
 
 
  1. 腎機能障害のある患者でマグネシウム製剤の使用は致命的になることがある(推奨度2)
  1. まとめ:マグネシウム製剤を投与された急性腎不全の高齢女性が高度の高マグネシウム血症を呈し、死亡した。
  1. 代表事例:術前の腸管処置のため、高齢女性がマグネシウム含有の下剤を投与された。患者は急性腎不全を合併しており、高度の高マグネシウム血症を呈し、持続血液透析で治療を行ったが、高マグネシウム血症による徐脈、心筋梗塞、呼吸不全にて死亡した[6]
  1. 結論:大量のマグネシウム製剤使用の前には、腎機能が正常であることを確認する必要があり、急性腎不全の患者ではマグネシウム製剤の大量投与は避けるべきである。
 
  1. 末期腎不全の患者では、血中マグネシウム濃度が正常より若干高いほうが血管の石灰化進行抑制に関して有利である可能性がある(推奨度2)
  1. まとめ:血液透析あるいは腹膜透析中の患者でのいくつかのretrospective studyで血中マグネシウム濃度が高い群で血管の石灰化進行が遅かった。
  1. 代表事例:44人の腹膜透析患者を調べた研究では、血管の石灰化が進行しなかった群では、進行した群に比べて血清マグネシウム濃度が高かった(3.0±0.5 vs 2.7±0.5 mg/dL)。両群間に血中カルシウム、リン濃度、副甲状腺ホルモンの濃度の違いはなかった[7]
  1. 56人の血液透析患者の僧帽弁輪部石灰化をエコーで調べた研究では、血清マグネシウム濃度が3 mg/dL未満の群で石灰化がより多く認められた[8]
  1. 結論:透析中の患者では正常より若干高い血中マグネシウム濃度が血管石灰化抑制に関して有利である可能性がある。
  1. 追記:上記はretrospective studyの結果であり、prospective studyはほとんど行われていない。確実なエビデンスとするためには、今後のprospective studyが待たれる。
 
  1. マグネシウム投与は動脈硬化・石灰化を抑制する(推奨度2)
  1. まとめ:マグネシウムには動脈硬化抑制効果がある可能性があるとする観察研究が2つある。また腎不全モデル動物でマグネシウム投与により動脈の石灰化が抑制された。最近、CKDのstage 3,4を対象としたRCTで酸化マグネシウムの投与により冠動脈の石灰化が抑制されることが示され、注目される。
  1. 代表事例:93人の血液透析患者を対象とした観察研究では血清マグネシウム濃度と頚動脈内膜中膜厚の間には逆相関が認められた[9]
  1. 血液透析患者でマグネシウム投与の2カ月間の効果を見た研究では、投与により頚動脈内膜中膜厚が有意に減少した[10]。腎不全モデルラットに炭酸マグネシウムを投与すると、動脈の石灰化が抑制された[11]
  1. 糖尿病や心血管系疾患の既往など冠動脈石灰化リスクをもつCKDのstage 3,4を対象として酸化マグネシウム投与の冠動脈石灰化に対する効果をみた研究では、コントロール群に比べて酸化マグネシウム投与群で有意に冠動脈石灰化スコアの悪化は抑制された[12]
  1. 結論:マグネシウム投与は動脈硬化・石灰化を抑制する。
  1. 追記:冠動脈石灰化ハイリスクのCKD stage 3,4の患者でマグネシウム投与により冠動脈石灰化が抑制された。心血管疾患の既往などの冠動脈石灰化リスクのないCKDでも同様の結果が得られるか、現在、eGFR 15-45 mL/min/1.73m2のCKD患者を対象としてマグネシウム投与の冠動脈石灰化に関する効果をみるRCT (MAGiCAL-CKD)がデンマークで行われており[13]、その結果が注目される。
 
  1. マグネシウム濃度の高い透析液での透析は血管の石灰化を改善する可能性がある(推奨度2)
  1. まとめ:維持透析患者でマグネシウム濃度の高い透析液での透析は血管の石灰化を改善する可能性をin vitroの系で示した。
  1. 代表事例:血清が石灰化に及ぼす影響に関して新しい評価法であるserum calcification propensityを測定した。これは非結晶性のリン酸カルシウムを含むprimary calciprotein particles (CPP)から結晶性のハイドロキシアパタイトを含むsecondary CPPへの移行の時間(T50)を計測するものである。透析液のマグネシウム濃度を1.0から2.0 mEq/Lに増加させた群と通常の1.0 mEq/Lの群を比較した。透析液のマグネシウム濃度を増加させるとT50はベースラインの247±69分から302±66分に増加した[14]。すなわち石灰化の進展が抑制されることが示された。
  1. 結論:マグネシウム濃度の高い透析液での血液透析は血管の石灰化を改善する可能性がある。
  1. 追記:RCTでのインターベンションの結果であり、興味深い。マグネシウム濃度の高い透析液での透析で実際の血管石灰化が改善するかどうか、研究の進展が待たれる。
問診・診察のポイント  
 
問診:
  1. 慢性腎障害の既往の有無、マグネシウムを含む胃薬や下剤の使用量、使用頻度

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
熊谷天哲 : 特に申告事項無し[2024年]
花房規男 : 未申告[2024年]
監修:花房規男 : 未申告[2024年]

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高マグネシウム血症

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