今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 岩﨑幹季 大阪労災病院

監修: 酒井昭典 産業医科大学 整形外科学教室

著者校正/監修レビュー済:2023/06/22
参考ガイドライン:
  1. 日本整形外科学会日本脊椎脊髄病学会:頚椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン 2019
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)

概要・推奨   

  1. 臨床症状を認めない画像所見としての「後縦靱帯骨化」と神経症状を伴う「後縦靱帯骨化症」を区別する。
  1. 診断には、神経学的所見と画像所見との整合性が重要。
  1. 進行性あるいは明白な脊髄症状を認める場合は手術適応

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 脊柱靱帯には、椎体前面の前縦靱帯と椎体後面を縦走する後縦靱帯、脊柱管後壁の黄色靱帯がある。
 
頚椎の靱帯(頚椎側面像)

椎体前面を縦走するのが前縦靱帯、椎体後面を縦走するのが後縦靱帯である。

 
頚椎の靱帯(頚椎横断像)

頚髄は脊柱管の中を通っており、その脊柱管前方の椎体後面に後縦靱帯がある。黄色靱帯は椎弓の間を左右に膜を張ったように存在し、脊柱管の後方にある。

 
  1. 後縦靱帯骨化症は、椎体後面すなわち脊柱管前壁の脊柱靱帯の肥厚・骨化により、脊柱の可動性制限や脊髄などの神経組織が圧迫されて神経症状が出現した病態を指す。
  1. 後縦靱帯の骨化を画像上認めても、それによる臨床症状を認めない場合は「後縦靱帯骨化症」と呼ばず、「後縦靱帯骨化」として区別する[1]
  1. 後縦靱帯骨化は頚椎に好発するが、次いで胸椎、腰椎の順に認められる。
  1. 無症候性の後縦靱帯骨化も多く存在するが、臨床上問題となる症状は頚椎あるいは胸椎レベルでの圧迫性脊髄症である。
  1. 頚椎後縦靱帯骨化症は日本人に多く、圧迫性脊髄症の原因として多い疾患である。
  1. 頚椎後縦靱帯骨化症は、女性に比して男性に多く、発症年齢は中高年が多い[1]
  1. 頚椎後縦靱帯骨化症の原因は特定されていないが、患者兄弟の約30%に後縦靱帯骨化が認められたことや、一卵性双生児の兄弟では85%に頚椎後縦靱帯骨化が認められたこと、HLAハプロタイプ解析などから遺伝的な背景が関与している(遺伝様式は不明)[1]
  1. 胸椎後縦靱帯骨化症や全脊柱におよぶ重篤な骨化を示す症例は、女性に多い。
  1. 後縦靱帯骨化症は、指定難病であり、重症の場合などは申請し認定されると保険料の自己負担分の一部が公費負担として助成される。([平成27年1月施行])
  1.  難病法に基づく医療費助成制度 
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 局所の疼痛が主訴なのか、手の使いにくさなど手指の巧緻運動障害や歩行障害が主訴なのかを確認する。特に歩行障害は、階段昇降での手すりの必要性や易転倒性の有無を聞き出す[2]。(図<図表>
  1. 頚椎後縦靱帯骨化症は、転倒などの外傷を契機に発症することがあるので、軽微な外傷や頚椎過伸展損傷の有無を尋ねる。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
岩﨑幹季 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:酒井昭典 : 講演料(旭化成ファーマ(株),日本臓器製薬(株),帝人ヘルスケア(株))[2024年]

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後縦靱帯骨化症(頚椎および胸椎)

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