今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 高橋敏行 藤枝平成記念病院 脊髄脊椎疾患治療センター

監修: 甲村英二 公立学校共済組合 近畿中央病院

著者校正/監修レビュー済:2025/01/15
参考ガイドライン:
  1. 日本整形外科学会日本脊椎脊髄病学会:頚椎症性脊髄症診療ガイドライン2020(改訂第3版)
  1. 日本整形外科学会日本脊椎脊髄病学会:脊柱靭帯骨化症診療ガイドライン2019
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った。
  1. 頚椎症性脊髄症および脊髄腫瘍(胸髄硬膜内髄外腫瘍)の症例について画像を用いて解説した。詳細は本文を参照されたい。

概要・推奨   

  1. 無症候性成人における頚椎MRI評価において、椎間板病変や骨棘形成など頚椎変性所見は年齢とともに発見率が上昇し、頚髄の圧迫性変化も約20~30%に認められた。
  1. 発育性脊柱管狭窄は、頚椎症性変化に伴う圧迫性脊髄症の危険因子となる。
  1. 脊柱管前後径、脊柱管椎体比(Torg-Pavlov比)、局所椎間不安定性は頚椎症性脊髄症発症の予測因子である。
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  1. 頚椎症性変化に伴う脊髄圧迫では、脊髄横断面積が60 mm2以下程度で脊髄症状を呈する頻度が高い。
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 脊髄の存在する脊柱管は限られた空間であり、脊椎や椎間板、各靱帯の加齢変化など諸因子が脊髄圧迫の原因となる。脊髄の圧迫性変化は力学的負荷や血液循環不全を生じ、脊髄耐性の閾値を超えると脊髄障害による臨床症候を呈する。このような状態を圧迫性脊髄症と称し、四肢体幹の運動感覚不全や膀胱直腸障害などを来す。
  1. 通常成人において脊髄は第1腰椎下端付近で脊髄円錐となり終止するため、脊髄圧迫徴候や所見は、主に頚椎から胸椎病変にて生じる。脊椎と脊髄では高位に解離があるため、脊椎圧迫高位と脊髄障害高位を混同しないよう注意が必要である。
  1. 脊髄圧迫の原因として脊椎症、椎間板ヘルニア、靱帯骨化症、脊柱管狭窄症、不安定性脊椎、脊椎骨折、先天性奇形、脊椎腫瘍、脊髄腫瘍(硬膜外、硬膜内髄外)、脊椎感染症、脊髄血管奇形などが挙げられる。
 
  1. 頚部脊柱管狭窄:発育性脊柱管狭窄は、頚椎症性変化に伴う圧迫性脊髄症の危険因子となる(OJ)。
  1. 脊椎発育過程における絶対的な脊椎管狭小化を発育性脊柱管狭窄と呼ぶ。発育性脊柱管狭窄は、加齢変化を伴うことにより圧迫性頚髄症の重要な素因となる[3][4]。測定誤差もあるため明確な基準はないが、通常、頚椎側面単純X線検査にて脊柱管前後径12~14 mm程度が該当する。
 
  1. 脊椎後縦靱帯骨化症:脊椎後縦靱帯骨化症では、骨化形態と脊柱管前後径が脊髄症発症に関連する(OJ)。
  1. 頚椎後縦靱帯骨化症では、有効脊柱管前後径(最圧迫部位にて脊柱管前後径から靱帯骨化病変の厚さを引いた値)が狭くなるほど脊髄症発症のリスクが増加する。米国では9 mm以下が脊髄症の臨界と報告されており[5]、2002年の日本からの報告では、247例の頚椎後縦靱帯骨化症患者において有効脊柱管前後径が6 mm以下で全例に脊髄症を認め、14 mm以上では脊髄症を認めなかった[6]。また、頚椎後縦靱帯骨化非連続部分における可動性による動的因子も発症に関連する。
問診・診察のポイント  
 
病歴聴取:
  1. 発症の誘因や初発症状、病状経過を詳細に聴取することは診断に不可欠であり、身体所見と総合的に判断し、脊髄疾患の推測や他の神経疾患との鑑別が可能となる。確認事項として、運動麻痺やしびれ、知覚障害、膀胱直腸障害の出現時期と進行速度、頚部痛や背部痛の有無、根性痛(神経根に沿った痛みで神経根症の指標となる)の併存、外傷や発熱の有無、悪性疾患や放射線化学療法の既往などを聴取する。

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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
高橋敏行 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:甲村英二 : 特に申告事項無し[2024年]

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脊髄圧迫所見

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