今日の臨床サポート

乳児化膿性股関節炎

著者: 稲葉裕 横浜市立大学 整形外科

監修: 酒井昭典 産業医科大学 整形外科学教室

著者校正/監修レビュー済:2022/01/26
患者向け説明資料

概要・推奨   

  1. 乳児可能性股関節炎を疑う場合には、早急な診断確定が必要である(推奨度1)
  1. 診断確定には血液検査と共にMRIが推奨される(推奨度1)
  1. 診断確定後は速やかに外科的処置と抗菌薬の全身投与を開始する(推奨度1)
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
稲葉裕 : 特に申告事項無し[2022年]
監修:酒井昭典 : 特に申告事項無し[2022年]

改訂のポイント:
  1.  定期レビューを行った(変更なし)。

病態・疫学・診察

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 新生児、乳児の敗血症症状を伴う発症が多い。
  1. 発熱・仮性下肢麻痺などの症状によって発症する。
  1. 早期には診断がつきにくいことがある。
  1. 早期診断により適切な治療が行われなかった場合、股関節の破壊や成長障害を引き起こし、重篤な後遺症をもたらす[1]
  1. 感染は骨幹端の骨髄炎が関節へ波及して起こる。
  1. エコーやMRIなどの画像検査で関節液の貯留を確認する。
  1. 多発する場合があり、ほかの関節にも注意を要する。
 
  1. 典型例
  1. 症例:6カ月、女児 
  1. 主訴:発熱、左下肢を動かさない
  1. 現病歴:2日前より38℃の発熱が出現した。翌日よりおむつ替えを嫌がるようになり、左下肢を動かさなくなった。近医小児科を受診し、化膿性股関節炎が疑われ、紹介受診。
  1. 初診時所見:体温38.5℃、左下肢の自動運動低下、左股関節周囲の発赤、腫脹、熱感を認める。他動的な左股関節の運動で激しく啼泣する。
  1. 主たる臨床検査結果とその解釈
  1. 血液検査:WBC13,000/μL、CRP 4.3mg/dL、ESR 56mm/hと炎症反応の上昇を認める。
  1. X線像その他画像の解釈と診断結果
  1. 単純X線像股関節正面:左大腿骨頭の外方化、股関節周囲の軟部組織陰影の増強を認める。
  1. 超音波検査:左股関節液の貯留を認める。
  1. MRI:左股関節液の貯留、周囲の軟部組織に炎症を認める。
  1. 上記から推定できる病態とその根拠
  1. 血液検査で炎症反応の上昇と画像での股関節液貯留を認め、感染による股関節炎が強く疑われる。
  1. 治療計画とinformed consent
  1. 親の同意を得て手術療法を計画。1歳未満では骨が未成熟であり軟骨部分が多いため、成長軟骨が障害された場合、成長障害や骨変形などの重篤な後遺症を残す場合がある。できるだけ早期に切開・排膿と抗菌薬の点滴による治療を開始する必要がある。
  1. 実施した手術的治療
  1. 内側進入法より股関節の切開排膿、洗浄を行った。関節内にドレーンを留置した。関節液と関節包を検体として採取し、細菌培養検査、病理組織検査を行った。
  1. 実施したリハビリテーション
  1. 術後は、ギプスシーネによる患肢の安静を行った。
  1. 治療経過と成績
  1. 術後カルバペネム系抗菌薬の最大量を4回に分け投与した。術後1週間は2回/週の血液検査を行い、抗菌薬の効果を確認した。術後5日に細菌培養検査(関節包)でインフルエンザ桿菌が検出され、使用中の抗菌薬に感受性があり血液検査で炎症反応が順調に軽快していたため、抗菌薬は変更せずに継続した。術後8日目にドレーンから排膿が認められなくなり、抜去した。術後2週で股関節周囲の腫脹が改善し、下肢の動きが良好となる。術後4週で炎症反応が正常化し、退院した。
  1. 外来で退院1週間後に血液検査を行い、感染の再燃がないことを確認。
  1. 発症より2日目に治療を開始し、経過は良好と考えられる。定期的な診察で骨・関節変形などの後遺症の有無を確認する。
  1. 成長終了頃まで1年に1回の定期的診察を行う。
 
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 発症時期を確認する。

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