今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 髙田忠明 海老名総合病院 救命救急センター 救急集中治療科

監修: 箕輪良行 みさと健和病院 救急総合診療研修顧問

著者校正済:2024/09/18
現在監修レビュー中
参考ガイドライン:
  1. World Health Organization regional office for South-East Asia:Guidelines for the management of snakebites, 2nd edition
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、以下について加筆した。
  1. 抗毒素血清の不投与に関する医療裁判事例を報告した。
  1. ヤマカガシ抗毒素の保管施設を紹介した。
 

概要・推奨   

  1. 毒蛇咬傷の患者にはバイタル管理のほか、局所の腫脹の経過や出血傾向の有無を注意深く観察することが必要である。
  1. 現状では、治療薬とされている抗毒素血清やセファランチンの有効性については生命予後に関しての確固たるエビデンスがない[1][2][3][4]
  1. 抗毒素血清の不投与に関する医療裁判事例がある。マムシ咬傷で抗毒素血清を投与せずに患者が死亡した事案においては、第1審では投与有効期限を逸し不投与を過失とした。その後の控訴審では、過敏症試験では軽微でない陽性反応を呈し、投与有効期限を経過するなど投与の効果が期待できない場合などにおいては、不投与も許されるとし、医師の過失は否定された[5]。ハブ咬傷で投与有効期限内に抗毒素血清の不投与により有害事象が発生した事案においては、医師の過失とされ損害賠償請求が認められた[6]。また、腫脹の増悪(Grade III以上)を認めた際には、アナフィラキシーや血清病の発症リスクなどを考慮して、十分なインフォームドコンセントのもとに抗毒素血清の投与有無を決定することが望ましい[1]
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  1. 咬傷部位の切開、吸引は毒を回収できるというエビデンスが乏しく、神経などの損傷の恐れもあるため推奨されない[7]
  1. 血管透過性亢進による循環血液量減少や、横紋筋融解症による急性腎障害を回避するために、細胞外液を用いて適正な循環血液量を保つ[1]

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 日本国内ではマムシ、ヤマカガシ、ハブによる咬傷が主である。いずれも出血毒に分類される。
  1. 年間1,000人以上が咬傷被害に遭い、死亡率は1%未満と推定される。無毒咬傷も相当数あるといわれている。
  1. マムシ、ハブの毒により、受傷直後から疼痛、腫脹が認められる。血管内に毒が注入されると、その血小板凝集作用によって、受傷1時間以内であっても血小板数が1万/uL以下に低下し、出血傾向となることがある。
  1. ヤマカガシ毒が注入されても、疼痛や局所腫脹はない。局所から毒が吸収され時間をかけてその毒性が発揮される。プロトロンビンの活性化やフィブリノーゲンの直接分解作用によりフィブリノーゲン減少を来し、出血傾向となることがある。
  1. 蛇咬傷では腫脹が進行すると、コンパートメント症候群を起こす危険性がある。
  1. 咬傷部位の切開、吸引は毒を回収できるというエビデンスが乏しく、神経などの損傷の恐れもあるため推奨されない。
  1. 全身状態の管理として、組織の阻血、壊死などとともに横紋筋融解症や循環血液量減少、急性腎障害に注意する。
  1. マムシ咬傷、ハブ咬傷、ヤマカガシ咬傷に対する抗毒素血清ついてのランダム化比較試験は実施されていない。
  1. 蛇咬傷はWHO(world health organization)において「顧みられない熱帯病」の1つとされており、2030年までに蛇咬傷による死者数や症例数を半減させるという目標が設定されているほど、世界では注目されている領域である。また、地球温暖化やペットとして飼育数増加により、各種蛇の生息域拡大が懸念されており、都心だからといって蛇咬傷が発生しないわけではない。
  1. ランダム化比較試験が行い難い領域といわれており、症例の蓄積やデータ解析が望まれる。
問診・診察のポイント  
  1. 蛇咬傷にあった場合は、蛇の種類、外見などの特徴をできるだけ把握する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
髙田忠明 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:箕輪良行 : 特に申告事項無し[2024年]

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