今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 竹井寛和 兵庫県立こども病院 救急科

監修: 志賀隆 国際医療福祉大学 医学部救急医学/国際医療福祉大学成田病院 救急科

著者校正/監修レビュー済:2022/06/08
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 疫学的内容を改訂し、児童虐待相談対応件数は増加の一途を辿っていることを示した。
  1. 「日本小児科学会 子ども虐待診療の手引き 第3版」の内容を取り入れた。
  1. 虐待による乳幼児頭部外傷(abusive head trauma in infants and children; AHT)に関する国際的な声明が発表され、日本小児科学会からもAHTに対する見解が明示された。
  1. かつて提唱された代理ミュンヒハウゼン症候群という疾患概念が薄まってきている現状があるため、”Medical child abuse”としてまとめた。
  1. Failure to thriveの概念について改訂した。

概要・推奨   

  1. 児童虐待相談対応件数は増加し続けている。
  1. 小児の外傷を診察する場合、虐待を常に鑑別に挙げる。チェックリストをうまく用いて「何か変」と疑うことが重要である。
  1. 虐待対応は、他の専門診療科、多職種・多機関との連携が必須である。
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まとめ 

まとめ  
児童虐待の診断対応アルゴリズム

子どもらしくない表情・言動を見抜くことから始まる。また、養育姿勢をも見抜いて、虐待を疑う必要がある。これらはチェックリストを作成しておくと便利である(アルゴリズムを参照)。総合的に判断して、疑いがあれば必ず関係機関に相談(通報)して、地域社会全体で子どもを見守る体制を確立することが重要である。
アルゴリズム:AHTの診断アルゴリズム

出典

市川光太郎先生ご提供
 
児童虐待チェックリスト

何か変と感じた子ども、もしくは親子は、具体的にチェックを行い、カルテに挟み、多くの職員の多角的視点で総合評価する必要がある。総合受付、小児科外来、救急外来、生理検査室、放射線画像撮影室など、あらゆる部署に配置し、医療関係者か否かに関わらず、職員が何か変と感じたときに、チェックできる環境設定が重要である。

出典

市川光太郎先生ご提供
 
  1. 児童虐待は保護者の資質、子どもの素因、家庭因子、地域との関係など多数の因子の重なりで発症する。
  1. 児童虐待は連続性を持って進行する、生命の危険の高い危急性疾患と認識するべきである。
  1. 児童虐待は身体的虐待、ネグレクト、心理的虐待、性的虐待の4型に分類され、お互いにリンクしていることが多く、その重症度で分類報告されている。身体的とネグレクトの通告頻度が高い。
  1. 虐待を受けることにより、身体的発育の遅延、知的発達の障害(知的障害の発現)、心理・精神的発達の障害が起こり、いわゆる発達障害として年長児になり、問題行動を起こしやすいことが知られている。
  1. 早期発見し、安全な養育環境で育てること、自分を理解し守ってくれる大人がいることをわからせることが発達障害を軽症化する唯一の手段である。
  1. 虐待による頭部外傷の場合、医療機関受診の主訴は、頭部外傷だけでなく、けいれんや呼吸障害、眼の焦点が合わないなど不定愁訴も多い。重篤な症例もあるが、軽症例では看過しやすい一面もあるので、保護者の言動には十分気をつける。過剰診断・検査が必要になることも少なくない。
  1. 虐待症例の看過を防ぐためには、どんな子どもでも虐待を鑑別診断の一つに挙げる必要がある。保護者の説明の中で客観的事実を抜き出して聴取することが重要である。
  1. 診察の中で医師単独で虐待の可能性を判断するのには限度がある。看護師や受付など、関わる全職員による多角的視点で親子の言動を見守り、職員同士で細かな気づきを共有することが重要である。
  1. 虐待者の過半数が実母であり、虐待される子どもは就学前の乳幼児が過半数である。
  1. 被虐待児は早期発見し、その安全と保護を第一義に対応すべきである。そのためには過剰診断を許容する姿勢で臨む。関係機関との連携は不可欠であり、連携するまでに時間がかかる場合(夜間の対応など)には、子どもの安全の担保のために入院させることも考慮する。
  1. 児童相談所における児童虐待相談対応件数は、1990年の1,100件余から年々増加の一途を辿り、2020年には205,029件と20万件の大台を超えた。心理的・身体的虐待が8割以上を占め、警察からの相談が半数を占める。医療機関からの相談件数は極めて少ない。
  1. 医療機関は地域全体で子どもを守るためのシステムの入り口であることを認識しておく。院内虐待防止委員会の設立、Child protection team(CPT)の結成などを通して、虐待を疑ったときのフローや病院全体で対応できる準備をしておくと、救急外来や小児科外来での診療の助けになるかもしれない。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
竹井寛和 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:志賀隆 : 特に申告事項無し[2025年]

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被虐待児症候群(child abuse)

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