今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 西川佳友 トヨタ記念病院 救急科

監修: 林寛之 福井大学医学部附属病院

著者校正/監修レビュー済:2021/06/30
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 誤解を招く表現について付言した。

概要・推奨   

  1. 異状死体【外表に異状を認める死体のこと】は24時間以内に所轄警察署に届け出る義務がある。
  1. これを怠ると、法に反する行為に当たり、50万円以下の罰金といった罰則が科せられる。
  1. 外表に異状を認めない死体では、届出義務はなく罰則を科せられることは無いが、犯罪性が強く疑われる場合などは一市民の良心を持って所轄警察署に届け出ることを推奨する。

まとめ 

まとめ  
  1. 医師法第21条では、医師が死体等を検案して異状があると認めた場合の24時間以内の警察への届出義務( >詳細情報 )が定められており、同法第33条に厳しい罰則規定も存在する(50万円以下の罰金)。
  1. 届出は、犯罪の発見と公安の維持を目的としている。 >詳細情報 
  1. 上記、医師法第21条で示されている届出義務とは“死体の外表の検案”で異状を認めた場合であり、死に至る過程や診療関連死において届出義務を課せられているわけではない。極論を述べると、外表に異状を呈していない死体では所轄警察署への届出義務はなく、届出を行わないことは犯罪行為ではない。
  1. 診療関連死においても同様で、死体の外表に異状を認めなければ所轄警察署への届出は義務ではなく、当然ながら手術痕などは外表異状には当たらない。
  1. 毒殺や溺水など死体の外表に異状を来たしにくい病態を発見した場合、医師法第21条の届出義務は課せられないが、刑事訴訟法第239条第1項および一市民の良心を持って、所轄警察に届け出ることを推奨する。なお、各病院のマニュアルやルールがあればそれに従う。(表<図表>
  1. 診療関連死に関しては医療事故調査を含めた病院組織としての対応を要するため、速やかに管理者に報告する。死体の外表異状が認めれば、届出義務が発生するため、24時間以内に所轄警察署に届出する。死体の外表異状が認められない場合には、所轄警察に届け出るかは各病院のマニュアルやルール、管理者の方針があればそれに従う。
  1. 尚、これらの見解は、司法(裁判所での判決)や行政(厚生労働省)の統一見解と考えられており、平成27年度に死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルの改訂がなされ、令和3年度版(27-28ページ)においても継続掲載されている[1][2][3]
 
  1. 平成27年度死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルの改訂
  1. 平成27年度版では前年度までに記載されている異状死のくだり文が削除された。
  1. 追記:『異状については、日本法医学会が定めている「異状死ガイドライン」等も参考にしてください』という文が削除されており、行政の見解が出された画期的な改定である。
 
死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルの改変部分抜粋

出典

著者提供

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
西川佳友 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:林寛之 : 講演料((株)メディカ出版),原稿料((株)羊土社)[2024年]

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異状死体の届出義務

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