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冠動脈閉塞を伴わない心筋虚血（INOCA）

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著者: 石井秀樹 群馬大学医学系研究科内科学講座循環器内科学分野

監修: 辻田賢一 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学

著者校正/監修レビュー済：2023/07/05
参考ガイドライン：
  1. 日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会/日本心臓病学会：2023年JCS/CVIT/JCC ガイドライン フォーカスアップデート版 冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療
患者向け説明資料
改訂のポイント：
  1. 本フォーカスアップデート版より、冠動脈閉塞を伴わない心筋虚血（ischemia with non-obstructive coronary artery disease: INOCA）の概念が初めて取り入れられた。
  1. INOCAは、狭心症を示唆する症状、徴候、検査所見を有するが冠動脈に器質的有意狭窄を認めない慢性症候群の概念である。

概要・推奨   

  1. 狭心症を有し、心筋虚血が示されているが心外膜冠動脈に有意狭窄を認めない症例において、冠動脈造影検査時に冠微小血管攣縮の有無を確認するために薬物誘発試験を行うことを考慮する（推奨度2, エビデンスランクO）。
  1. 狭心症を有し、心筋虚血が示されているが心外膜冠動脈に有意狭窄を認めない症例において、ガイドワイヤーを用いた冠血流予備能（CFR）や冠微小血管抵抗指数（IMR）の評価を考慮する（推奨度2, エビデンスランクRs）。
  1. 狭心症を有し、心筋虚血が示されているが心外膜冠動脈に有意狭窄を認めない症例において、経胸壁心エコーによる左前下行枝のドプラ血流を用いたCFRの評価を考慮してもよい（推奨度3, エビデンスランクRs）。
INOCAの分類（疾患病型、Endotype）と心筋虚血の機序
成因による薬物療法
侵襲的な評価法によりINOCAの成因（endotype）を明らかにする手順
冠微小血管攣縮の診断基準
INOCAの侵襲的・包括的精査

病態・疫学 

疾患概念  
  1. 冠動脈閉塞を伴わない心筋虚血（ischemia with non-obstructive coronary artery disease: INOCA）とは、臨床的に狭心症を疑う典型的または非典型的症状があり、心筋虚血の客観的検査所見を有するにも関わらず、冠動脈に器質的有意狭窄を認めないものをいう[1][2][3][4]。
  1. INOCAは、有症候性を前提にするが、初期評価で非心原性または非虚血性で狭心症様症状を生じうる疾患を十分に鑑別し、その心筋虚血を生じる機序を精査する必要がある[1][2][3][4]。
  1. INOCAは心血管イベントのリスクが高く、診断を行うことが大変重要である[5][6][7][8][9]。
 
INOCAの分類（疾患病型、Endotype）と心筋虚血の機序
画像

参考文献：
日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会/日本心臓病学会．2023年JCS/CVIT/JCCガイドラインフォーカスアップデート版冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療．https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_hokimoto.pdf．（2023年6月閲覧）p17　表5（改変あり）

出典


 
  1. 虚血機序は、心外膜冠動脈または冠微小血管の構造的または機能的異常に分けられる[10][11]。
  1. 冠攣縮は、心外膜冠動脈または微小冠動脈の攣縮により、一過性に冠血流を低下させることで心筋虚血を生じる（supply ischemia/primary angina）。また、冠微小循環の構造的または機能的異常に起因する冠微小血管の代謝性拡張不全（冠血流予備能[CFR]の低下）や冠微小血管抵抗の増大（冠微小血管抵抗指数[IMR]の増大）により、労作性狭心症と同様に心筋酸素消費量の増大時に心筋虚血を引き起こす（demand ischemia/secondary angina）[1][2][3][4]。
  1. INOCAにおいて、一つの重要な機序となる冠攣縮については、人種差があり特にアジア人で多いことがわかっている[12][13][14]。
  1. INOCAについて、冠攣縮誘発試験を含む冠動脈機能異常（冠攣縮および冠微小循環障害）の侵襲的・包括的精査を行い、その成因を明らかにすることが推奨される[1][2][3][4][15]。

病態・疫学・診察 

定義  
  1. INOCAは以下を満たすものと定義される[1][2][3][4]：
  1. 安定した慢性的な（数週間以上の）胸部症状（典型的な狭心痛）や非典型的症状を有する
  1. 心筋虚血の客観的な検査所見（安静時または負荷時の心電図、心エコー、MRI、核医学検査、心臓カテーテル検査による心筋乳酸産生の亢進など）を認める
  1. 冠動脈造影や冠動脈CT（CCTA）で50％以上の器質的狭窄（閉塞性冠動脈疾患）や血流予備量比（FFR）0.80以下などで定義されるflow-limitingな生理的・機能的虚血を生じる狭窄がない

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著者のCOI（Conflicts of Interest）開示:
石井秀樹 : 未申告[2024年]
監修：辻田賢一 : 特に申告事項無し[2024年]

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