今日の臨床サポート

抗不整脈薬(薬理)

著者: 三部篤 岩手医科大学薬学部病態薬理学講座

監修: 中原 保裕 (有)ファーマシューティカルケア研究所

著者校正/監修レビュー済:2022/08/31
参考ガイドライン:
  1. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会:2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン
患者向け説明資料

概要・推奨   

  1. 不整脈治療の目的は、単なる不整脈の停止・予防ではなく、患者の予後・QOLの改善である
  1. 心臓に器質的障害のない無症候性の期外収縮などは薬物治療の適応にならない。
  1. 抗不整脈薬の使用に先立ち、不整脈の原因となる基礎疾患に対する一般的治療を行っていく。
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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
三部篤 : 特に申告事項無し[2022年]
監修:中原 保裕 : 原稿料(学研メディカル秀潤社)[2022年]

改訂のポイント:
  1. 2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドラインに基づき全面的に改訂した。

総論

不整脈治療  
  1. 日本循環器学会の「不整脈薬物治療ガイドライン」は2020年に改訂された。不整脈治療の目的は、単なる不整脈の停止・予防ではなく、患者の予後・QOLの改善であることが強調されている。
  1. 不整脈を治療する際、すべての不整脈が薬物治療の適応になるわけではなく、心臓に器質的障害のない無症候性の期外収縮などは適応にならないことを十分に留意し、抗不整脈薬の使用に先立ち、不整脈の原因となる基礎疾患に対する一般的治療を行っていく。
  1. また、抗不整脈薬の使用にあたっては、不整脈を誘発する可能性(催整脈作用)に注意が必要であり、心機能低下に使用する場合には抗不整脈薬の心抑制作用に注意する。
  1. 近年、カテーテルアブレーションやペースメーカー、ICD、CRT、CRT-Dといった非薬物的治療の進歩はめざましく、エビデンスも蓄積され、適応が急速に拡大されてきている。発作性上室性頻拍、心房粗動、心房細動、心室頻拍、他剤併用で治療抵抗性の不整脈に対しては、カテーテルアブレーションを考慮する。
 
抗不整脈薬の分類
  1. 抗不整脈薬の分類は、古典的な薬理学的分類であるVaughan Williams分類(図1<図表>)が用いられてきた。
  1. しかし、従来の経験的なアプローチを改め、より理論的にかつ病態生理的な抗不整脈療法を推奨するためにSicilian Gambitによる分類が用いられている(図2<図表>)。
  1. しかし、その一方で、心筋細胞に発現しているイオンチャネルや薬物受容体の種類やその量は、非常に多様である上、心臓の部位{心房と心室、右心(心房および心室)と左心(心房及び心室)、心基部と心尖部、心内膜側と心外膜側}毎に異なることが分かってきた。さらに、それぞれの分布や発現量も様々な病態に修飾されていることも明らかにされた。こうした知見から、特定のイオンチャネルに対する作用を詳細に検討しても、臨床的には限界があると理解されてきている。
  1. 現在はSicilian Gambitによる薬理特性からそれぞれの抗不整脈薬の特徴を理解した上で、古典的な分類法であるVaughan Williams分類に基づいた経験則も考慮しながら薬物を選択している。
 
  1. Vaughan Williams分類 >詳細情報 
  1. Vaughan Williams分類は、抗不整脈薬をその薬理作用に基づいて4群に分ける古典的な分類法である。それぞれ、I群は、Naチャネル遮断を主たる作用とする薬剤、Ⅱ群は、アドレナリンβ受容体遮断を主たる作用とする薬剤、Ⅲ群はKチャネル遮断作用を主たる作用とする薬剤、IV群は、Caチャネル遮断を主たる作用とする薬剤である。
  1. ただし、Vaughan Williams分類はわかりやすい反面、複数のチャネルの遮断作用を持つ抗不整脈薬を分類するにあたって必ずしもこの枠組にあてはめられないことがあり、限界があることが知られていた。
 
  1. Sicilian Gambit分類 >詳細情報 
  1. これらの、Vaughan Williams分類の限界を解消するために、1990年、イタリアのシシリー島で開催されたSicilian Gambit会議でSicilian Gambit分類が提唱された。この分類は、イオンチャネル、ポンプ、受容体に対する作用で薬剤を分類することで、作成されている。各作用の強弱は黒、灰色、白の3つに色分けで示されている。

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