今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 井上貴昭1) 原泌尿器科病院

著者: 松田公志2) 関西医科大学附属病院 病院長

監修: 松田公志 関西医科大学附属病院 病院長

著者校正/監修レビュー済:2023/05/24
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、新しい研究結果を追記した。

概要・推奨   

  1. 血精液症を伴う多くの患者は、病院を受診する以前に1~2回の血精液症のエピソードを経験していることが多い。40歳未満の患者は良性であった(推奨度2)
  1. 血精液症は泌尿器科癌(前立腺癌)に現れる初期症状の場合もある。特に50歳以上の男性に関しては注意が必要であり、それらを念頭に置いた診察・検査が不可欠である(推奨度1)
  1. 血精液症の患者に対するアプローチで大切なのは、まず詳細な問診である。次に身体所見(特に会陰部)を詳細に診察する必要がある。直腸診は直腸や前立腺のmassなどを除外するため、すべての患者に実施されるべきであろう(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 血精液症は従来、射精した精液のなかに肉眼的に確認できる血液が存在することと定義されている。
  1. 1894年に、Huguesらが血精液症について報告したのが最初である。この症状は比較的まれであり、短期間で消失することも多く、self-limitingな場合も多い。そのため、血精液症を持つ男性患者の77.5%は、泌尿器科を受診する前に1~2回の血精液症のエピソードを経験していることも少なくない。
  1. しかし、正常男性にとって血精液症が繰り返されることは不安を駆り立てる要因である。多くの血精液症の原因は良性であるが、まれにこの症状が泌尿器科癌に現れる最初の症状の場合もある。Hanらは、50歳以上の男性2万6,126人に前立腺癌のスクリーニング検査を行い、139人(0.5%)に血精液症の既往を認めたと報告し、その血精液症の既往を持つ男性のうち19人(14%)が前立腺癌であったと報告している。
  1. 近年の画像技術の急速な進歩により、今まで特発性血精液症と診断されてきた多くの症例が劇的に減少すると考えられる。しかし、血精液症の患者を詳細に評価したような研究報告はあまり多くない。今もなお、このような血精液症の患者の原因をどのように調べればいいのかという課題は残っている。
 
  1. 血精液症を伴う多くの患者は、病院を受診する以前に1~2回の血精液症のエピソードを経験していることが多い。40歳未満の患者は良性であった(推奨度 2o(参考文献:[1]
  1. まとめ:若年者の血精液症の多くは良性であると考えられている。
  1. 代表事例:血精液症を伴う74人の男性のうち、多くの患者(76%)は、病院を受診するまでに1~2回の血精液症のエピソードを経験していた。40歳未満の患者65人のうち、31人は異常なしで、残りの34人も良性であり、そのうちの32人は単純な検査のみで診断がついた。これら65人のうち、56人(86%)は3カ月の経過観察で改善した。
  1. 結論:血精液症を伴う若年者の多くは良性であり、多くは単純な検査のみで診断可能であった。その多くは3カ月以内に改善を期待できた。
 
  1. 血精液症は泌尿器科癌(前立腺癌)に現れる初期症状の場合もある。特に50歳以上の男性に関しては注意が必要であり、それらを念頭に置いた診察・検査が不可欠である(推奨度 1R(参考文献:[2]
  1. まとめ:前立腺癌スクリーニング検査において血精液症はとてもまれな症状(0.5%)であるが、血精液症を認めた患者のうち13.7%に前立腺癌を認めた。
  1. 代表事例:Hanらは、50歳以上の男性(そして前立腺癌家族歴を持つ40歳以上の男性)2万6,126人に対して前立腺癌スクリーニング検査(血清PSA検査、直腸診)を行った。そのすべてで、血精液症について記載した質問票を取った。結果、2万6,126人中、前立腺癌と診断されたのは1,708人(6.5%)であった。このスクリーニング検査を実施した男性のうち139人(0.5%)に血精液症の既往を認め、そのうちの19人(13.7%)が前立腺癌と診断された。ロジスティック回帰分析において、年齢、PSA、直腸診で補正したところ、血精液症は前立腺癌を予期する要因であった(OR 1.73、p=0.054)。
  1. 結論:血精液症は前立腺癌スクリーニング検査においてまれな症状ではあるが、前立腺癌のリスクを上げる要因でもあり、注意深い診察が必要である。
  1. 追記:血精液症以外に下部尿路症状(排尿困難、頻尿など)を認める場合や血尿を認める場合には、泌尿器科癌の可能性を十分に念頭に置く必要がある。
 
問診・診察のポイント  
 
  1. 血精液症患者への診断アプローチは、治療可能な原因疾患を見逃さないために系統的に行われるべきである。原因疾患は多岐にわたるため、全身的な検索が必要となってくる。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
井上貴昭 : 特に申告事項無し[2024年]
松田公志 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:松田公志 : 特に申告事項無し[2024年]

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血精液症

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