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著者: 善本三和子1) 東京都健康長寿医療センター 眼科

著者: 加藤 聡2) 元東京大学大学院眼科

監修: 沖波聡 倉敷中央病院眼科

著者校正/監修レビュー済:2022/08/03
参考ガイドライン:
  1. 日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2019
  1. 日本糖尿病眼学会:糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)2020
  1. 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会:糖尿病標準診療マニュアル2021 一般診療所・クリニック向け:(2021)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 糖尿病網膜症診療ガイドライン第1版に基づき、内容を変更した。

概要・推奨   

  1. 糖尿病網膜症とは、糖尿病に起因した特徴的眼底所見を呈する病態であり、基本的には網膜における最小血管障害に起因する種々の変化が生じる疾患である。診断は眼底所見に加えて種々の検査を組み合わせ、総合的に行う必要がある。
  1. 世界における糖尿病患者における糖尿病網膜症の有病率は35.4%である[1]
  1. 日本人2型糖尿病患者における糖尿病網膜症発症率は3.98%といわれている(約8年追跡)。
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  1. 糖尿病罹病期間が長いほど、糖尿病網膜症の有病率と重症度はともに上昇するため、早期からの血糖管理が重要である(推奨度1)。糖尿病罹病期間が5年以上経過すると糖尿病網膜症の発症のリスクが高くなること[2]や、発症年齢が若いほうが糖尿病網膜症が重症化しやすい。
  1. 2型糖尿病患者では発症時期を決定することは困難であるが、約30%の患者が診断時にすでに糖尿病網膜症を発症している[3]。また、推定罹病期間5年未満で28.8%(増殖網膜症は2.0%)、15年以上で77.8%(増殖網膜症は15.5%)が網膜症を有している[4][5][6]
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  1. 妊娠患者は非妊娠患者に比して1.60-2.48倍の糖尿病網膜症進展リスクがある[7]。妊娠の可能性のある糖尿病患者では、妊娠前からの眼科定期検査のうえに妊娠が明らかとなった場合には、ただちに眼科受診が必要である(推奨度1)
  1. 糖尿病網膜症が存在する場合には糖尿病網膜症の重症度に応じて診察間隔を決定し、病状に応じて治療を行う[7][8][9]が、出産後も網膜症が増悪するリスクが高いため、眼科受診の継続が必要である(推奨度2)

病態・疫学・診察 

疾患情報  
病態:
  1. 糖尿病網膜症は、神経障害、腎症と並び、糖尿病患者に発生する3大最小血管合併症の一つであり、基本的には網膜における最小血管障害に起因する種々の変化が生じる疾患である。糖尿病網膜症は、診断時点の糖尿病の有無にかかわらず過去の糖尿病の既往によっても発生し得る。
 
疫学:
  1. 【海外の報告】米国、オーストラリア、ヨーロッパ、アジア各国から集めたメタ解析研究では、糖尿病患者における糖尿病網膜症の有病率は35.4%であるが [1]、日本を含むアジア地域では何らかの糖尿病網膜症の有病率は19.9%、増殖糖尿病網膜症1.5%、糖尿病黄斑浮腫5.0%、視力をおびやかす可能性のある糖尿病網膜症5.3%とされている。
  1. 【日本の報告】日本における疫学研究では、糖尿病網膜症の有病率は、福岡県久山町研究によると40歳以上の糖尿病患者で15.0%(2007年)、山形県舟形町研究では、35歳以上の糖尿病患者で23.0%(2008年)であった。また、日本人2型糖尿病患者を約8年追跡した研究では、糖尿病網膜症の発症率は3.83-3.93%であった[10][2]
 
診断:
  1. 特徴的眼底所見に加えて種々の検査を組み合わせ、総合的に行う必要がある[11]
 
妊娠に関連する事項(J):
  1. 糖尿病合併妊娠(pregestational diabetes)
  1. 妊娠患者は非妊娠患者に比較し、1.60~2.48倍の糖尿病網膜症進展リスクがある[7]
  1. 増殖・増殖前網膜症は妊娠中および産褥期に悪化しやすい。
  1. 挙児希望のある糖尿病患者は、妊娠前に眼科受診を行う必要がある。
  1. 妊娠確定後は、早期に眼科受診をし、網膜所見なしならば1回/6~12カ月、軽症または中等症非増殖糖尿病網膜症ならば1回/3~6カ月、重症非増殖糖尿病網膜症以上ならば1回/1~3カ月程度の眼科診察が推奨される(推奨度2)
  1. 増殖糖尿病網膜症は進行性であるため、妊娠中であっても網膜光凝固や硝子体手術の適応があれば行う(推奨度1)
  1. 糖尿病黄斑浮腫に対する抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法は、安全性が確立されていない。
 
  1. 妊娠中に発見された糖代謝異常
  1. 妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM)
  1. 将来2型糖尿病を発症するリスクが正常耐糖能妊婦の7.43倍と効率である[12]
  1. 妊娠前に糖尿病合併が疑われる症例では眼底検査が必要である(推奨度2)
  1. 妊娠中の明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy)
  1. 糖尿病診断時に眼科受診が必要である[13]。いずれの場合も、出産後も糖尿病網膜症が進行することがあるため、出産後も1年間は慎重に眼底検査を受けることが推奨され、その後の診察間隔は網膜症の重症度による(推奨度2)
 
いずれの場合も、出産後も糖尿病網膜症が進行することがあるため、出産後も1年間は慎重に眼底検査を受けることが推奨され、その後の診察間隔は網膜症の重症度による(推奨度2)
 
問診・診察のポイント  
  1. 糖尿病の有無、既往の有無を確認する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
善本三和子 : 特に申告事項無し[2024年]
加藤 聡 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:沖波聡 : 特に申告事項無し[2024年]

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