今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 大野新一郎 ほしあい眼科

監修: 沖波聡 倉敷中央病院眼科

著者校正/監修レビュー済:2021/12/08
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 「甲状腺眼症診療の手引き」に基づき、改訂を行った。
  1. 「血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)」に基づき、改訂を行った。
  1. 「IgG4関連眼疾患の診断基準」に基づき、改訂を行った。

概要・推奨   

  1. 眼球突出の原因は多岐にわたる。
  1. 中等度の甲状腺眼症に対するステロイドパルス療法は外眼筋の肥厚は有意に減少、眼球突出度には有意な減少はない(推奨度2)
  1. 甲状腺眼症に対する放射線療法は、眼瞼浮腫、外眼筋腫大、視神経症に対して効果が期待できるが、眼球突出に対する効果は低い。

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 眼球突出を来す疾患は多岐にわたるため、原因が眼科的、耳鼻科的、脳外科的、口腔外科的、神経内科的、形成外科的なのかを的確に判断しなければならない。
  1. 炎症、腫瘍、感染、血管異常、全身疾患、外傷、先天性など、さまざまな原因が考えられる。
  1. 成人だけでなく、小児でも発症する。
  1. 視機能予後だけでなく、生命予後不良の疾患もあり注意を要する。
  1. 急速に眼球突出が進行するもの、視機能障害が急速に進行するものは緊急性が高いことが多く、専門医を紹介する。
  1. 検査は画像が重要であり、治療は原因疾患による。
 
  1. 眼球突出度測定には、Hertel眼球突出計を用いる。正常値は上限15mm~16mm、左右差2~3mm以内とする。
  1. 見かけ上の眼球突出、眼球陥凹を判別しなければならない。高度近視、眼瞼後退症では瞼裂が開大するため、見かけ上、眼球突出に見える。また、片眼の眼球陥凹は反対眼の眼球突出と間違いやすい。
  1. 眼位:腫瘍が眼窩内に存在するとき、眼球が偏位なしに前方に突出するケースは、病変が筋円錐内、視神経腫瘍、またはびまん性に存在する。また、筋円錐外に病変が存在するときは、眼球は病変と逆方向に偏位する。つまり、涙腺、前額洞病変は下方偏位、上顎洞病変では上方偏位、篩骨洞病変では外方偏位する。
  1. 眼球運動:眼球運動は腫瘍性病変の方向に制限される。しかし、甲状腺眼症では筋の伸展障害のために逆になる。
  1. 視力、視野:進行した病変でないかぎり、視力障害を来すことは少ない。しかし、甲状腺視神経症では、外眼筋と結合組織の体積増加によるapical crowdingが原因のための視神経症を来す。つまり、腫大した外眼筋により視神経自体また視神経を栄養する血管が圧迫されるため視神経症を発症する。また、IgG4関連眼疾患(IgG4ROD)においても、視神経症を発症することがある。稀ではあるが、特発性眼窩炎症(OID)でも視神経症を発症することがある。
  1. 眼圧:高度の眼窩腫瘍、甲状腺眼症では、眼窩内圧上昇のため眼圧上昇を来す。頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)、甲状腺眼症では、上強膜静脈圧上昇により眼圧上昇を来す。CCFは眼圧測定(アプラネーション眼圧計にて)において脈圧の増大を生じる。
  1. 眼底:視神経腫瘍、腫瘍の視神経への圧迫では、視神経乳頭の浮腫または発赤腫脹を来す。眼窩内腫瘍や、甲状腺眼症で外眼筋が肥厚し眼球を圧迫した場合には、網脈絡膜雛襞を伴うこともある。CCFでは、網膜中心動静脈閉塞を来すことがある。
  1. 必要に応じて、以下の採血、検査を行う。
  1. 血算
  1. 生化学
  1. CRP
  1. 血沈
  1. freeT3
  1. freeT4
  1. TSH
  1. サイログロブリン
  1. TBⅡ
  1. TSAb
  1. 抗TPO抗体
  1. 抗Tg抗体
  1. TRAb定量
  1. LDH
  1. sIL-2R
  1. β2ミクログロブリン
  1. ALP
  1. UA
  1. PT
  1. APTT
  1. FDP
  1. FDP-D ダイマー
  1. IgG
  1. IgG4
  1. IgE
  1. CH50
  1. 抗核抗体
  1. RF
  1. SS-A抗体
  1. SS-B抗体
  1. C-ANCA (PR3ANCA)
  1. P-ANCA (MPOANCA)
  1. ACE
  1. β-Dグルカン
  1. 眼窩MRI(造影)
  1. 眼窩CT(造影)
  1. 血管造影
  1. 生検
  1. 染色体、遺伝子解析
  1. フローサイトメトリー
  1. 細菌培養
  1. 胸部、腹部のCT(造影)
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 発症時期:いつからか?

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
大野新一郎 : 未申告[2024年]
監修:沖波聡 : 特に申告事項無し[2024年]

ページ上部に戻る

眼球突出

戻る