今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 花木奈央 大阪大学大学院医学研究科 公衆衛生学

監修: 志賀隆 国際医療福祉大学 医学部救急医学/国際医療福祉大学成田病院 救急科

著者校正/監修レビュー済:2024/12/11
参考ガイドライン:
  1. 日本中毒学会:新版 急性中毒標準診療ガイド 2023年発行
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い『新版 急性中毒標準診療ガイド』に準拠していることを確認し、以下について加筆・修正した。
  1. 近年利用が拡大しているe-リキッドによる中毒に関し加筆した。
  1. 新たなニコチン製品「ニコチンパウチ」による中毒に関しても加筆した。

概要・推奨   

  1. 急性ニコチン中毒の無症状例での経過観察期間に関するランダム化比較試験は検索されなかった。日本中毒学会の成書、海外の成書では無症状の場合でも2~6時間の経過観察が推奨されている(推奨度2)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
疫学:
  1. 急性ニコチン中毒は主にタバコやタバコ関連製品の誤飲・誤食したことにより、めまい、縮瞳、下痢、腹痛、錯乱、昏睡、けいれんなどの症状が生じることである。
  1. 日本中毒情報センターに寄せられる情報によると、小児の誤飲・誤食事故で最も多いのがタバコによるものである。
  1. さまざまなタバコ関連製品が取り扱われている。従来の紙巻きタバコに加え、近年電子タバコやその液体リキッドも販売されている。北米では喫煙の代替品として「ニコチンポーチ(パウチ)」も用いられている。
  1. 電子タバコで使用される液体カートリッジ内にはニコチンが含まれており、その濃度は製品によってさまざまである。海外では小児における電子タバコや、e-リキッド製造工場の従事者の経皮曝露によるニコチン中毒の報告もあり注意が必要である[1][2]
  1. 北米で喫煙の代替品として用いられる「ニコチンポーチ(パウチ)」は小さくて目立たないパウチの中にニコチンやそのほかの成分が含まれており、製品によってニコチンの含有量は異なる。海外では「ニコチンポーチ(パウチ)」の繰り返し利用による中毒も報告されており注意が必要である[3]
  1. 禁煙補助剤(ニコチンガム、ニコチンパッチ)では、ニコチンパッチでの小児中毒例も報告されており注意が必要である[4]
  1. さまざまな製品に含まれるニコチン量は、紙巻きタバコ1本につき10~30 mg、使用済みのタバコの吸い殻5~7 mg、ニコチンガム/トローチ 2~4 mg、ニコチンパッチ(総含有量) 36~114 mg、液体ニコチンカートリッジ(電子タバコで使用)0~36 mg/mLである。
  1. タバコ関連製品以外では、ニコチン含有植物(カラシタネ/キダチタバコ)の葉を摂取したことによる急性ニコチン中毒の報告もあり、注意が必要である。
 
病態:
  1. ニコチンによる中毒は、吸収されたニコチンが交感神経系、副交感神経系に作用し中毒症が発現する。
  1. 初期(誤飲後約15~60分)には刺激・興奮作用、後期(誤飲後約60分~4時間)には抑制作用が起きる。
  1. 乳幼児では、タバコ1本が中毒量となる。経口摂取による嘔吐発現量は2~5 mg、致死量は乳幼児で10~20 mg、成人では40~60 mgである。固形タバコ誤飲によるニコチン中毒は、比較的まれである。液体にタバコを漬け込んだ場合は、ニコチン濃度が上がり、中毒に至る危険がある。
 
カラシタネ/キダチタバコ

南米原産の植物であるが、観賞用として日本でも栽培されている。「カラシタネ」という名前から食用と誤解して摂取され、急性ニコチン中毒を発症した症例が日本でも報告されている。

出典

Auerbach PS. Wilderness Medicine, 6th ed. p1,257 FIGURE 64-5, Mosby, 2011.
問診、診察のポイント  
  1. 摂取状況を確認する。摂取した製品については紙巻きタバコか、電子タバコの液体リキッドか、具体的に確認する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
花木奈央 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:志賀隆 : 未申告[2024年]

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急性ニコチン中毒

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