今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 宮道亮輔 自治医科大学 救急医学・メディカルシミュレーションセンター

監修: 箕輪良行 みさと健和病院 救急総合診療研修顧問

著者校正/監修レビュー済:2024/06/12
参考ガイドライン:
  1. 日本中毒学会(監修):新版 急性中毒標準診療ガイド. へるす出版. 2023年.
  1. Haddad and Winchester’s Clinical Management of Poisoning and Drug Overdose. 4th edition, Saunders, 2007.
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『新版 急性中毒標準診療ガイド』の発行に伴いレビューを行い下記の内容を改訂した。
  1. 推奨の中にトキシドロームの記載を入れた。
  1. 活性炭投与や胃洗浄から「1時間以内」の記載を削除した。
  1. 尿のアルカリ化についての記載を追加した。
  1. また、日本中毒情報センター(JPIC)への問い合わせ先と、意識障害を伴うが症状が安定している急性中毒患者への気管挿管の回避に関する記載も追加した。

概要・推奨   

  1. 中毒診療の原則は、①医療者の安全確保(避難と除染の判断)、②Primary Survey(気道・呼吸・循環・意識状態、体温の評価と安定化:血液検査とXp、エコーなどの検査)、③Secondary Survey(状況確認やトキシドロームによる原因物質の推定)、④症状治療(吸収阻害、排泄促進、解毒・拮抗薬の投与)、⑤メンタルヘルス(再発防止)への対応である(推奨度1)
  1. 意識障害患者へのcomaカクテル(糖液、サイアミン、ナロキソン、フルマゼニル)投与については、ブドウ糖とサイアミンは経験的投与がお勧めとのことだが、やはりブドウ糖は簡易血糖測定後に投与し、サイアミンはアルコール依存や慢性低栄養状態の患者に投与するのがよいだろう。ナロキソンは麻薬中毒症状のある人のみ、フルマゼニルも治療的鎮静の回復時のみに使用するのがよさそうである(推奨度2)
  1. 病歴や内服歴を本人から聞くのが基本だが、本人から得る情報は信用できないという調査もある。本人からの情報ももちろん重要であるが、家族や友人、救急隊からの情報を得ることが推奨される(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 薬物中毒とは、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、抗精神病薬などの薬物が許容量を超えて体内に取り込まれることにより、生体の正常な機能が阻害されることを指す。
  1. 薬物中毒は疑わないと診断できないため、意識障害患者などでは常に念頭に置いて鑑別する。
  1. 詳細な病歴聴取、家族や友人、救急隊からの情報を活用する。
  1. 原因薬物は多岐にわたるため、バイタルサインを含む臨床症状や検査所見を組み合わせて病態を理解することが大切である。
  1. トキシドローム(症状や徴候から中毒原因物質を分類する概念)を意識すると臨床診断に有用である。
  1. 原因不明の重症患者では、血液検査(血液ガス、電解質、腎機能、血糖など)や尿検査、心電図、X線撮影などを行う。アニオンギャップや浸透圧ギャップの測定も鑑別に役立つ。
  1. 中毒治療の4原則は、支持療法、吸収の阻害、排泄の促進、拮抗薬解毒薬である。
  1. 重症患者では、各種モニターを実施して、気道・呼吸・循環を安定化するための処置を行う。血液浄化の適用を検討する。
  1. 中毒を疑った際は、日本中毒情報センター(JPIC)の「中毒110番」から中毒情報を入手して診断の一助とする。
問診・診察のポイント  
 
  1. 原因不明の意識障害患者から、急性中毒患者を見つけ出すことが第一である。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
宮道亮輔 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:箕輪良行 : 特に申告事項無し[2024年]

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