今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 柴山浩彦1) 国立病院機構 大阪医療センター 血液内科

著者: 金倉 譲2) 一般財団法人 住友病院

監修: 宮﨑泰司 長崎大学病院血液内科

著者校正/監修レビュー済:2024/03/06
参考ガイドライン:
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、2022年8月に寒冷凝集素症治療薬としてわが国で発売となったスチムリマブ(エジャイモ)に関して追記した。

概要・推奨   

  1. 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の病因について、免疫応答系と遺伝的素因、環境要因が複雑に絡み合って生じる多因子性の過程であると理解しておくのが妥当と考えられる。
  1. 続発性自己免疫性溶血性貧血の原因疾患として、頻度や臨床的重要度からみて、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患と慢性リンパ性白血病・リンパ腫、エイズなどのリンパ免疫系疾患が代表的である。
  1. クームス試験陰性の自己免疫性溶血性貧血とは、明らかな溶血所見があり、ステロイド薬に反応する病態である。
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
溶血性貧血の分類(代表的なもの)

代表的な溶血性貧血の病型を列挙している。溶血性貧血はその原因によって、先天性と後天性に大別される。先天性は赤血球の膜異常、ヘモグロビン合成異常、酵素異常が主な病因である。後天性のものは赤血球自体に原因のある内因性と赤血球以外に原因のある外因性に分けられる。外因性は、免疫学的機序と物理機序によるものに分類できる。

出典

著者提供
 
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断基準

厚生労働省 特発性造血障害に関する調査研究班(2019年度改訂)

出典

厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)、特発性造血障害に関する調査研究班 診療の参照ガイド 令和元年度改訂版(研究代表者 三谷絹子):自己免疫性溶血性貧血診療の参照ガイド 令和 1 年改訂版(責任者 張替秀郎)、表3
 
免疫性溶血性貧血の診断フローチャート

免疫性溶血性貧血が疑われる場合は、まず直接Coombs試験を行う。陽性の場合は、抗赤血球抗体が赤血球表面に結合している。IgGや補体に対する特異抗体を用いてさらなる病型診断を行う。陰性の場合は、免疫性以外の病因を鑑別するが、赤血球に結合している抗体量が少ないCoombs陰性AIHAも考慮する必要がある。

出典

張替秀郎(責任者):自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド令和1年改訂版 特発性造血障害疾患の診療の参照ガイド 令和元年度改訂版 三谷絹子(研究代表者)編集
 
  1. 溶血とは何らかの原因によって赤血球の破壊が亢進している状態であり、通常は貧血を来す。
  1. 溶血の病因によって、先天性と後天性に分けられる。
  1. 溶血性貧血はまれな疾患であり、全病型の推定患者数は100万人対12~44人である(研究班の1974年度調査)。
  1. 先天性溶血性貧血には、赤血球膜、ヘモグロビン、ならびに赤血球酵素の異常によるものがある。
  1. わが国では、先天性のうち約70%の症例が遺伝性球状赤血球症である。
  1. 後天性溶血性貧血では、抗赤血球自己抗体によって赤血球が破壊される自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の頻度が最も高い。
  1. 心血管内を循環している赤血球が物理的外力により破壊される場合、赤血球破砕症候群と診断する。
  1. 造血幹細胞においてPIG-A遺伝子に後天性に突然変異が起こり、赤血球の補体感受性が亢進し、血管内溶血が起きる場合、発作性夜間血色素尿症(PNH)と診断する。
 
  1. 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の病因について、免疫応答系と遺伝的素因、環境要因が複雑に絡み合って生じる多因子性の過程であると理解しておくのが妥当と考えられる(S/CS)。(参考文献:[1]
  1. 自己抗体の出現を説明する考え方として、以下のように整理されている。
  1. 免疫応答機構は正常だが患者の赤血球の抗原が変化して、異物ないし非自己と認識される。
  1. 赤血球抗原に変化はないが、侵入微生物に対して産生された抗原が正常赤血球抗原と交差反応する。
  1. 赤血球抗原に変化はないが、免疫系に内在する異常のために免疫的寛容が破綻する。
  1. すでに自己抗体産生を決定づけられている細胞が、単または多クローン性に増殖または活性化され、自己抗体が産生される。しかし現状では、AIHAにおける自己免疫現象の成立は免疫応答系と遺伝的素因、環境要因が複雑に絡み合って生じる多因子性の過程であると理解しておくのが妥当と考えられる。
 
  1. 続発性自己免疫性溶血性貧血の原因疾患として、頻度や臨床的重要度からみて、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患と慢性リンパ性白血病・リンパ腫、エイズなどのリンパ免疫系疾患が代表的である(S/CS)。(参考文献:[2][3]
  1. AIHAが基礎/随伴疾患による免疫異常の一部、あるいはその結果としてもたらされたと考えられる場合を続発性とする。
  1. 基礎疾患には広範な病態が挙げられるが、頻度や臨床的重要度からみて、SLE、関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患と慢性リンパ性白血病・リンパ腫、エイズなどのリンパ免疫系疾患が代表的である。
  1. また、マイコプラズマや特定のウイルス感染の場合、あるいは卵巣腫瘍や一部の潰瘍性大腸炎に続発する場合などでは、基礎疾患の治癒や病変の切除とともにAIHAも消退し、臨床的な因果関係が認められる。
  1. 近年、癌の治療で使用されるようになった免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1および抗PD-L1抗体等)によって、0.15~0.25%程度の割合でAIHAの合併を認めることが報告されている。
 
  1. 遺伝性球状赤血球症(HS)の治療として、摘脾を行うとほとんどすべての患者で、貧血、黄疸などの臨床症状が軽快する(推奨度2CO)(参考文献:[4]
  1. HSでは、脾臓は赤血球を捕捉し破壊する臓器であるので、摘脾によってほとんどすべての患者で、貧血、黄疸などの臨床症状が軽快する。
  1. 摘脾はほぼ安全に行えるが、長期的には、感染症、血栓症などの合併症の可能性があるので、摘脾の適応を慎重に判断する必要がある。貧血の程度、胆石などの合併症の有無で判断する。
問診・診察のポイント  
  1. 臨床所見として、通常、貧血と黄疸を認める。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
柴山浩彦 : 未申告[2024年]
金倉 譲 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:宮﨑泰司 : 未申告[2024年]

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溶血、ヘモグロビン血症

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