無症候性副腎腫瘤 :トップ    
監修: 野口善令 名古屋第二赤十字病院
尾田琢也 福岡赤十字病院

概要

所見のまとめ:
  1. 無症候性副腎腫瘤は、副腎偶発腫(adrenal incidentaloma)とも呼ばれる。副腎疾患以外の評価目的で行われた画像検査で偶然にみつかった径が1cm以上の症状のない副腎腫瘤を指す。剖検例の6%(1~32%)、腹部CT検査の4%程度でみられ、年齢とともに増加する。約80%の副腎腫瘤は、非機能性で良性の副腎皮質由来の腺腫である。5%がサブクリニカルクッシング症候群、5%が褐色細胞腫、1%がアルドステロン症、5%以下が副腎皮質癌、2.5%が転移性腫瘍である。
  1. 副腎偶発腫をみたときは、機能性(ホルモン分泌の有無)と悪性の可能性に注意を払う。
 
パニック所見・緊急時対応: >詳細情報 
  1. 特にパニック値は存在しない。
 
専門医相談のタイミング: >詳細情報 
  1. スクリーニング検査が自施設でできない場合や確定診断目的での検査の場合は、専門医に紹介する。
 
所見の解釈:
  1. まとめ:
  1. 副腎偶発腫をみたときは、機能性かどうか、悪性の可能性があるかどうかに注意を払い、サブクリニカルクッシング症候群、無症候性褐色細胞腫、原発性アルドステロン症、悪性腫瘍、転移性腫瘍の可能性を評価する。なお、副腎偶発腫の精査でサブクリニカルクッシング症候群と診断された場合は、腹腔鏡下での副腎切除術が勧められる。 エビデンス 
  1. 無症候性副腎腫瘤患者の評価アルゴリズム:アルゴリズム
  1. 悪性腫瘍の除外:
  1. 副腎偶発腫のうち、副腎皮質癌と転移性副腎腫瘍が占めるのは、それぞれ4.7%、2.5%であったという報告がある。
  1. 悪性かどうかの判断に関しては、腫瘤径と腫瘤の画像的特徴の2つが主要な予測因子となる。腫瘤径に関しては、4cmを超えれば、副腎皮質癌の感度は90%であるが、特異度は24%と低い。径が6cmを超えるものは切除を勧める専門家が多い。
  1. 診断がつかない場合のフォローアップについては、適切な頻度や期間ははっきりしていない。通常、6カ月後、12カ月後、24カ月後の画像検査が推奨される。悪性腫瘍であれば、3カ月で増大することが多い。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

内分泌検査と画像検査例
  1. ポイント:
  1. サブクリニカルクッシング症候群、無症候性褐色細胞腫、原発性アルドステロン症、副腎皮質癌、転移性腫瘍などを鑑別に挙げつつ、これらの症状や所見を確認し、内分泌検査と画像検査を行う。
  1. 副腎偶発腫の全例でサブクリニカルクッシング症候群と褐色細胞腫の評価を行う。高血圧症の合併があれば、原発性アルドステロン症の評価を行う。悪性を疑う所見があれば、副腎皮質癌の評価を行う。
  1. 副腎偶発腫がみつかった患者に対する適切なアプローチは確立されていないが、機能性腫瘍の場合、腫瘤径が4cmを超える場合は、外科的治療が優先される。
 
  1. 副腎偶発腫の全例でサブクリニカルクッシング症候群および無症候性褐色細胞腫の評価を行う。
  1. サブクリニカルクッシング症候群の評価例
  1. コルチゾールの過剰分泌を確認するため、一晩1mgデキサメタゾン抑制試験を行う。血漿ACTH、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)、尿中遊離コルチゾールを測定することもある。
  1. 無症候性褐色細胞腫の評価例:
  1. 24時間蓄尿でカテコールアミン、メタネフリン、ノルメタネフリンの測定を行う。
  1. 随時尿でメタネフリンおよびノルメタネフリンの測定を行う。
  1. 血漿でカテコールアミンの測定を行う。
  1. 原発性アルドステロン症の評価例(高血圧症の合併がある場合):
  1. 高血圧症の合併があれば、原発性アルドステロン症の評価を行う。
  1. 早朝座位での血漿アルドステロン(ng/dL)/レニン活性(ng/mL/時)を測定する。
  1. 副腎皮質癌を疑う場合の評価例:
  1. コルチゾールの過剰分泌を確認するため、一晩1mgデキサメタゾン抑制試験を行う。
  1. 血漿ACTH、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)、尿中遊離コルチゾールを測定することもある。
  1. 副腎アンドロゲン(DHEAS、アンドロステンジオン、テストステロン、17-OHプレグネノロン、17-OHプロゲステロン)、エストラジオール(E2)を測定する。
  1. 転移性腫瘍を疑う場合の評価例:
  1. 転移巣検索のため、胸部X線写真(正面・側面)、胸部~骨盤造影CT検査を行う。原発巣検索またはステージング目的でFDG-PETが施行されることもある。診断確定のため、穿刺吸引針生検が施行されることもある。
  1. 腫瘤径が4cmを超え、外科的治療を行う場合の評価例:
  1. 内分泌検査を行う。特に、褐色細胞腫のスクリーニングは必ず行う必要がある。
○ サブクリニカルクッシング症候群の評価として、6)~10)、褐色細胞腫の評価として、1)~5)を行う。原発性アルドステロン症を疑う場合は11)12)を行う。副腎皮質癌を疑う場合は13)14)を行う。転移性腫瘍を疑う場合は15)~20)を行う。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)

無症候性副腎腫瘤患者の評価アルゴリズム
無症候性副腎腫瘤患者の評価アルゴリズム
副腎性サブクリニカルクッシング症候群新診断基準 診断アルゴリズム
著者校正/監修レビュー済
2018/05/10

改訂のポイント:
  1. 日本内分泌学会臨床重要課題「潜在性クッシング症候群(下垂体性と副腎)の診断基準の作成」
  1. 「副腎性サブクリニカルクッシング症候群新診断基準」の作成と解説
に基づき、情報を改訂。