今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 方波見卓行 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院

監修: 平田結喜緒 公益財団法人 兵庫県予防医学協会 健康ライフプラザ

著者校正/監修レビュー済:2023/10/11
参考ガイドライン:
  1. 日本内分泌学会:褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン2018 (Evidence rank J)
  1. 米国内分泌学会:褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン (Evidence rank G)
  1. 欧州内分泌学会:褐色細胞腫・パラガングリオーマ術後の長期経過観察に関する診療ガイドライン(Evidence rank G)
  1. 欧州高血圧学会:褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン(Evidence rank G)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 2017年のWHO分類改訂に伴い、良悪性という用語は極力排し、可能な限り転移性、非転移性に表記を改めた。
  1. エビデンスを整理し、記載を以前より簡素化した。

概要・推奨   

概要:
  1. 褐色細胞腫とは、副腎髄質または副腎外傍神経節のクロム親和性細胞に由来するカテコラミン産生性神経内分泌腫瘍である。
  1. 全ての褐色細胞腫が他の臓器に転移する可能性があり、WHOによる分類では悪性腫瘍のICDコードが付与されている。
  1. 典型例では発作性、治療抵抗性の高血圧を呈するが、通常の高血圧と同様に持続性の場合や正常血圧、起立性低血圧症も呈する。
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  1. 褐色細胞腫での123I-MIBGの有用性:褐色細胞腫における123I-MIBGの診断感度と特異度はいずれも90%以上で、本検査の有用性が再確認された。褐色細胞腫の局在診断にMIBG検査の実施が推奨される(推奨度1、S/CS)
  1. 褐色細胞腫での18F-FDG PETの有用性:FDG-PETは褐色細胞腫に特異的な検査ではないが、MIBGよりも空間分解能が高く小病変の検出に優れる。FDG PETはMIBGと相補性のある検査で、MIBG陰性例、転移性例の転移巣検索などでの実施が推奨される(推奨度1、O)
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  1. 手術困難な転移性の褐色細胞腫に対しては、CVD(シクロホスファミド、ビンクリスチン、ダカルバジン)療法と131I-MIBG療法を考慮する(推奨度2)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 褐色細胞腫とは、副腎髄質または副腎外傍神経節のクロム親和性細胞に由来するカテコラミン産生性神経内分泌腫瘍である。
  1. 人口100万人当たりの年間発生は5人程度とされる[1]
  1. 研究、人種により頻度は異なるが、生殖細胞系列細胞、腫瘍体細胞における関連遺伝子変異検出率は、全腫瘍中最も高いと考えられている[2]
  1. 最新のWHOによる分類では、全ての褐色細胞腫が転移する可能性を有するため、悪性腫瘍のICDコードが付与された[3]
  1. 一定の要件を満たす高血圧患者、副腎偶発腫例、蒼白発作(spells)の訴えのある例、褐色細胞腫の家族歴・既往歴のある例などが褐色細胞腫の主たる鑑別対象である。
  1. わが国の褐色細胞腫疫学調査結果:推計患者数、発生部位と悪性、腫瘍局在、多発の割合、臨床像:図<図表>
  1. 褐色細胞腫の診療アルゴリズム:図アルゴリズム
  1. カテコラミン過剰症状(頭痛、蒼白など)を伴う高血圧例では本症を強く疑う。
  1. 症候を用いた尤度推定スコアリングが提唱され[1]、活用すべきだが、偶発腫として発見される無症候例が増加している[4]
 
症候スコアリングによる褐色細胞腫尤度に基づく患者のトリアージ

参考文献:
Geroula A, Deutschbein T, Langton K, Masjkur J, Pamporaki C, Peitzsch M, Fliedner S, Timmers HJLM, Bornstein SR, Beuschlein F, Stell A, Januszewicz A, Prejbisz A, Fassnacht M, Lenders JWM, Eisenhofer G. Pheochromocytoma and paraganglioma: clinical feature-based disease probability in relation to catecholamine biochemistry and reason for disease suspicion. Eur J Endocrinol. 2019 Oct;181(4):409-420. doi: 10.1530/EJE-19-0159. PMID: 31370000.
 

出典

著者提供
 
  1. 尿中・血中カテコラミンまたはその代謝産物が正常上限の3倍以上であれば、本症を強く疑う。
  1. 確定診断は原則病理学的に行われるが、123I-MIBGが集積する腫瘍があれば本症が強く疑われる。
  1. 約1割が転移性で、禁忌となる薬剤、検査があるため注意を要する。
 
  1. わが国における褐色細胞腫の疫学、特に転移性の頻度について:副腎性、副腎外発生とも転移性の可能性があり、特に転移性の頻度の高い副腎外発生ではより一層の注意深い経過観察が推奨される(推奨度1、J)
  1. 研究背景:厚生労働省の難治性疾患克服事業(2009年)あるいは調査研究班(1997年)により行われた全国疫学調査で、対象施設は全大学病院と層別無作為に抽出された一般病院である。
  1. 研究事例:2009年の褐色細胞腫推定患者数推計は、2,387施設・5,912診療科を対象に行った2008年度の受診褐色細胞腫患者数(1,649例)をもとに算定された。推計患者総数は2,920例、95%信頼区間は2,580~3,260例で、良悪性の内訳は良性2,600、悪性320例であった。1997年の調査を含め褐色細胞腫全体での悪性の頻度は約10%だが、副腎外発生では20~30%まで増加する[5][6]
  1. 結論・見解:副腎性、副腎外発生とも悪性の可能性があり、特に副腎外発生ではより一層の注意深い経過観察が勧められる。
 
わが国の褐色細胞腫疫学調査結果

推計患者数(a)、発生部位と悪性、腫瘍局在、多発の割合(b)、臨床像(c)

出典

厚生労働省難治性疾患克服研究事業 「褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」研究班:褐色細胞腫診療指針2010.2010;14-16(改変あり).
 
  1. 褐色細胞腫でのヨード造影検査について:現在汎用されている非イオン性・低浸透圧性造影剤であればカテコラミンの上昇はないとの報告もあるが、添付文書上は褐色細胞腫に対するヨード造影剤使用は原則禁忌である(推奨度3、C)[7]
病歴・診察のポイント  
  1. 病歴聴取上のポイントは、「褐色細胞腫と関連疾患(多発性内分泌腺腫症2型、Von Hippel-Lindau病、神経線維腫症1型)に関する家族歴と既往歴」と「カテコラミン過剰症状の有無」に要約される。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
方波見卓行 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:平田結喜緒 : 特に申告事項無し[2024年]

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