今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 窪田満 国立成育医療研究センター 総合診療部

監修: 五十嵐隆 国立成育医療研究センター

著者校正/監修レビュー済:2024/09/04
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、以下について加筆・修正した。
  1. 「小児低血糖症の鑑別」の表をネルソン小児科学のものに置き換え、鑑別診断に重きをおいた。
  1. Critical sampleの保存の重要性について強調した。
  1. 低血糖とケトン体に関する解説を増やした。
  1. 治療は現在臨床現場で行われている治療にあわせた。

概要・推奨   

  1. 6カ月~5歳くらいまでの幼児が、元気がない、顔色不良、食欲不振、腹痛、頭痛、嘔吐などを主訴に受診した場合に本症の可能性を考慮する(推奨度1)
  1. 問診で重要なことは最後に摂った食事の時間と量である(推奨度1)
  1. 本症を疑った場合は血液および尿の検査から、低血糖とケトーシスの存在を証明する(推奨度2)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. ケトン血性低血糖症は6カ月~5歳頃までの乳幼児に認められる疾患で、この時期の低血糖の原因として最も頻度が高いとされる。2003年に報告された論文では、64カ月の観察期間にフィラデルフィア小児病院の救急部に受診した児で、糖尿病などの基礎疾患のない6カ月以上の小児の低血糖症の31.4%が本症であったとしている[1]。2010年にフランスのグループが報告したケトン血性低血糖症の有病率に関する研究では、4~7歳の低血糖症の7%が本症であったが、4~5歳に限ると低血糖症の57%が本症であったとしている[2]
  1. 理由は不明だが、最近20年余りでこの疾患の頻度は減少している[3]。しかし、SGA(small for gestational age)児に本症の頻度が高いことから[4]、近年の周産期医療の進歩に伴って本症が再び増加する可能性がある。
  1. 臨床症状は低血糖とケトーシス(血中ケトン体の上昇)の症状が基本である。
  1. 本症の病態生理は不明である。低血糖の原因として肝臓における糖新生の障害や、インスリン、グルカゴン、コルチゾールの異常などは確認されていない。逆にそれらの異常が原因の場合は本症とは診断できない。すなわち、本来ケトン血性低血糖症とは内分泌・代謝異常症を除外診断したうえで下される診断名である。
  1. 経口あるいは輸液で糖を補充することによって低血糖の症状は速やかに改善することが多いが、すぐにはケトーシスが消失しないことが多い。
  1. 予後に関しては良好な疾患であるといえる。
問診・診察のポイント  
  1. 本症の症状は低血糖とケトーシスから惹起されるものである。

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監修:五十嵐隆 : 特に申告事項無し[2024年]

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ケトン血性低血糖症(小児科)

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