肺胞出血 :トップ    
監修: 久保惠嗣 地方独立行政法人 長野県立病院機構
坂東政司 自治医科大学 呼吸器内科

概要

疾患のポイント:
  1. 肺胞出血はびまん性肺胞出血(diffuse alveolar hemorrhage、DAH)症候群とも呼ばれ、肺胞毛細血管レベルで血管の破綻により、びまん性に肺胞出血を来す病態である。
  1. 症状は、血痰・喀血および貧血で、気管支拡張症や肺癌、肺結核、肺内血管病変などの気管支・肺局所からの出血は認めない。血痰や喀血を認めない例もある。

診断: >詳細情報 
  1. 呼吸不全や貧血、腎不全などの緊急を要する病態に対応したうえで、DAHの原因疾患を鑑別診断するために必要な検査を立案する。
  1. <図表>にDAHにおける重要な検査項目とその評価を示す。
  1. 血痰・喀血時の診断フローチャート:アルゴリズム
 
原因疾患の評価:
  1. 原因疾患は、さまざまであるが、肺胞毛細血管炎を伴う群と伴わない群に大別される。
  1. 肺胞毛細血管炎を伴う群では、顕微鏡的多発血管炎などの抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody、ANCA)関連血管炎や全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病、Henoch-Schönlein紫斑病などが含まれる。
  1. 肺胞毛細血管炎を伴わない群では、急性呼吸促迫症候群や骨髄移植後に起こるびまん性肺胞損傷、抗血栓薬(抗凝固薬、抗血小板薬など)の使用中、凝固異常、化学物質の吸入、僧帽弁狭窄などの循環器疾患、薬剤誘発性などが含まれる。
  1. 呼吸器にのみ病変を認める原因不明のDAHは、特発性肺血鉄症と呼ばれる。

重症度予後: >詳細情報 
  1. 予後:予後は原因疾患によりさまざまである。いずれの場合にも早期の診断、治療が生命予後の改善に重要である。
  1. 重症度:呼吸不全の合併や貧血、腎不全の併発などの有無で、重症度を判断する。

治療: >詳細情報 
  1. DAHの共通した病態に対する対症療法的な治療と、その原因疾患に対する治療に分けて考える。
  1. 大量喀血の場合には凝血塊による窒息回避への対応のため早急な気管挿管と頻回の吸引を行う。呼吸不全には、酸素投与を行う。
  1. 原因治療としては、多くの場合、ステロイドパルス療法を含む大量ステロイド療法の適応を検討する。また、早急にシクロホスファミドの併用が必要なこともある。

専門医相談のタイミング >詳細情報 
  1. 初期の段階で気管支内視鏡検査が施行可能な専門医に相談する。
 
臨床のポイント:
  1. 肺胞出血は心疾患や脳血管障害における抗血栓薬(抗凝固薬、抗血小板薬など)の使用頻度の増加とともに増えることが予想され、血痰や胸部X線写真でびまん性浸潤影を呈する症例には念頭におくべき疾患である。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

診断のための検査例
  1. 呼吸不全や貧血、腎不全などの緊急を要する病態に対応したうえで、DAHの原因疾患を鑑別診断するために必要な検査を立案する。
  1. <図表>にDAHにおける重要な検査項目とその評価を示す。
○ すべての症例で、1)~3)、9)、10)~12)を行う。サチュレーション低下例では4)、DAHを疑う例では5)~8)、心不全を疑う症例では13)を考慮する。
1)
2)
3)
4)
動脈血ガス分析
5)
6)
自己抗体(RAテスト, 抗核抗体[FA], 抗dsDNA抗体, 抗SCL70Ab[ELISA], 抗RNP抗体[ELISA], 抗Jo1抗体, 抗リン脂質抗体など)
7)
抗GBM抗体
8)
9)
喀痰(細胞診, 細菌[抗酸菌を含む])
10)
胸部X線写真
11)
胸部CT
12)
胸部12誘導心電図
13)
心臓超音波検査

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薬剤監修について:
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血痰・喀血時の診断フローチャート
DAHにおける検査項目とその評価
新型インフルエンザ肺炎で肺胞出血の病態を呈した症例
著者校正/監修レビュー済
2017/01/26