今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 万代昌紀 京都大学大学院医学研究科婦人科学産科学

監修: 金山尚裕 静岡医療科学専門大学校

著者校正/監修レビュー済:2024/09/04
参考ガイドライン:
  1. 日本産科婦人科学会:産婦人科診療ガイドライン 産科編 2023
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 産婦人科診療ガイドライン 産科編2023に準拠した。
  1. 妊娠中に発見された卵巣腫瘤の取り扱いについて、以下の2点を追記した。
  1. 悪性腫瘍と診断された場合、その取り扱いは進行期・腫瘍の悪性度・妊娠週数・患者の希望等によって異なる可能性があり、一律の治療方針は確立されていないため、婦人科腫瘍専門医とともに個々の症例ごとに対応する必要がある。
  1. 図の取り扱いはあくまで一般的な例である。婦人科腫瘍専門医が不在の施設では速やかに高次施設に紹介する。

概要・推奨   

  1. 卵巣嚢胞の有無と良悪性の評価に、主に経腟超音波を使用することが推奨される。妊娠中に頻度の高ルテイン嚢胞の鑑別のため、複数回の検査で、内部構造の変化、充実部の出現がないかどうかなど、複合的に変化を見極めることが重要である(推奨度1)
  1. ルテイン嚢胞などの機能性嚢胞や子宮内膜症性嚢胞が疑われる場合、経時的な変化を観察することが推奨される(推奨度1)
  1. 良性腫瘍が疑われる場合、直径が6cm以下の場合は経過観察、10cmを超える場合は破裂や分娩時障害の頻度、悪性腫瘍の可能性が高まるので手術を考慮する。6~10cmの場合、単房嚢胞性腫瘤で悪性腫瘍の可能性がない場合は、経過観察、それ以外は手術を考慮する。手術時期は妊娠12週以降が望ましい(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 卵巣嚢胞とは、卵巣に生ずる嚢胞状の病変の総称である。一般に、全妊娠の5~6%に付属器の腫瘤が合併するといわれている[1]。妊婦健診の経腟超音波でみつかることが多い。
  1. 治療方針の決定で重要なことは、それが機能性嚢胞か腫瘍性病変か、後者なら良性腫瘍か悪性腫瘍かを鑑別することである。
  1. 妊娠に合併する卵巣嚢胞の約半数がルテイン嚢胞をはじめとする機能性嚢胞(卵胞嚢胞、黄体嚢胞)であり、特に直径が5cm以下の場合、80%がルテイン嚢胞である。次いで成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)、漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)などの良性腫瘍、および悪性腫瘍である[2][3][4]。まれにovarian hyperstimulation syndrome(OHSS)に類似した両側性の大きな多発卵胞囊胞を形成することがある(hyperreactio luteinalis)[5]
  1. 妊娠に合併する卵巣腫瘍の1~3%を卵巣癌(境界悪性腫瘍を含む)が占める。進行期は大半がI期である。組織分類では、表層上皮性腫瘍が50~70%、未分化胚細胞腫などの胚細胞腫瘍が20~40%である。表層上皮性腫瘍の約80%を境界悪性腫瘍が占める[2][6][3]
  1. 卵巣嚢胞の有無および良悪性の評価にはまず、超音波検査を行う。
  1. ルテイン嚢胞や子宮内膜症性嚢胞が疑われる場合、注意深くエコーにて経過観察する。
  1. 良性腫瘍が疑われる場合、直径が6cm以下の場合は経過観察、10cmを超える場合は手術を考慮する。6~10cmの場合、単房嚢胞性腫瘤は経過観察、それ以外は手術を考慮する。手術時期は妊娠12週以降が望ましい。
  1. 悪性腫瘍が疑われる場合、大きさや妊娠週数にかかわらず手術を行う。
  1. 強い疼痛などがあり捻転、破裂、出血などが疑われる場合、良悪性や妊娠週数にかかわらず手術を行う。
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 卵巣嚢胞の既往を確認する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
万代昌紀 : 講演料(アストラゼネカ(株))[2025年]
監修:金山尚裕 : 特に申告事項無し[2025年]

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卵巣嚢胞(妊娠中)

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