今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 城田京子 社会医療法人博愛会 相良病院

監修: 小林裕明 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科生殖病態生理学

著者校正/監修レビュー済:2024/06/26
参考ガイドライン:
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編 2023の発行に伴いレビューを行った。
  1. 鑑別疾患表において、「骨盤内感染症(付属器炎・子宮内膜炎)」を「骨盤内炎症性疾患(子宮付属器炎・子宮内膜炎・子宮瘤膿腫・卵管卵巣膿瘍・骨盤腹膜炎など)」と変更した。
  1. 同じく、「尿管結石」を「尿路結石」と変更した。
  1. 卵巣嚢胞の茎捻転における高リスクとなる基準を「6 cm以上」から「5~6 cm以上」と変更した。
  1. 異所性妊娠、卵巣出血における緊急手術適応を「多量の腹腔内出血が推定される場合」から「卵巣出血は約8割が500 mL以下の出血量だが、500 mL以上の出血が推定され、またはHb 8 g/dL未満で、かつ出血が持続している場合」と変更した。

概要・推奨   

  1. 女性の下腹痛を診断するうえで重要な点は、まず妊娠および妊娠関連疾患を鑑別することである(推奨度1)
  1. 妊娠の可能性を否定できない妊娠可能年齢の女性(初経発来後~閉経前で性交経験のある)患者には妊娠反応(尿中hCG定性検査)が有用である(推奨度2)
  1. 婦人科疾患が疑われる場合には、内診所見(子宮・付属器圧痛)が参考になる(推奨度3)

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 下腹痛の原因疾患は多岐にわたる。産婦人科疾患以外に、消化器系、泌尿器系、血管系疾患が主な鑑別疾患となる。
  1. DPCデータから見た女性の急性腹症の原因疾患の20%超が妊娠関連疾患を含む産婦人科疾患であり、常に鑑別を要する。
  1. 一般的な尿中hCG測定キット[高感度(25 IU/mL)hCG定性検査]は予定月経頃の妊娠4週には陽性となる。不妊治療中の黄体賦活化目的でhCGを筋注していた場合、投与後約1週間陽性となるため注意が必要である。絨毛性疾患などでhCG濃度が極端に高い場合、偽陰性を示す(プロゾーン現象)ため注意が必要となる。
  1. 産婦人科における下腹痛の主な原因疾患には、妊娠性(流産・早産や異所性妊娠など)、機能性(月経困難症、月経前症候群、排卵痛、卵巣出血など)、器質性(卵管炎や子宮内膜炎などの骨盤内炎症性疾患、卵巣嚢胞の茎捻転や破裂、子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症などの良性疾患、卵巣がんや子宮がんなどの悪性疾患)がある。
  1. 婦人科疾患に伴う下腹痛であれば、まず、問診、内診、超音波検査で診断できることが多く、必要に応じて、血液検査、細菌培養検査、細胞診、CT・MRI検査を行う。
  1. 日本では産婦人科医以外が内診を実施することは一般的になっていないので、産婦人科疾患が疑われる場合には、産婦人科医に内診とさらなる画像診断について相談することが望ましい。
問診・診察のポイント  
 
  1. 月経を有する女性では、まず問診で妊娠の有無を明らかにする。妊娠が否定的な回答であっても妊娠例が存在するので、問診だけではなく、可能性がある場合は尿妊娠反応により妊娠を除外する。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
城田京子 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:小林裕明 : 講演料(MSD(株),中外製薬(株),アストラゼネカ(株),(株)メディカロイド),研究費・助成金など(シスメックス(株),(株)メディカロイド),奨学(奨励)寄付など(中外製薬(株))[2024年]

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下腹痛(産婦人科)

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