橈骨頭骨折、橈骨頚部骨折 :トップ    
監修: 落合直之 キッコーマン総合病院外科系センター
南野光彦 日本医科大学 整形外科

概要

疾患のポイント:
  1. 橈骨頭骨折、橈骨頚部骨折とは、転倒あるいは高所からの転落で、肘関節伸展位で手をついた際に、軸圧力が肘関節への外反ストレスに変わり、上腕骨小頭と橈骨頭が衝突して生じる骨折である。
  1. 成人では橈骨頭に加え橈骨頚部も骨折しやすいが、小児では多くが橈骨頚部骨折である。橈骨近位端骨折の約85%が20~60歳に発生する。
  1. 受傷時の外反ストレスが強い場合は、肘関節内側側副靱帯損傷、上腕骨内上顆剝離骨折、肘頭骨折などを合併しやすく、特に小児例では約60~70%に合併する。
 
診断:
  1. 受傷歴、特徴的な臨床所見と患健側の単純X線肘関節2方向(正面、側面像)により橈骨頭骨折、または橈骨頚部骨折を確認することで診断となる。
  1. 診察では、肘関節外側の疼痛、腫脹、圧痛、運動制限を確認する。
  1. 必要に応じてCT画像を行い、橈骨頭頚部の骨片転位の程度や大きさの診断と肘関節部の合併損傷(肘関節脱臼、尺骨鉤状突起骨折、尺骨肘頭骨折など)の有無を確認する。
  1. 合併する肘関節側副靱帯損傷の診断にはMRIが有効である。
 
重症度・予後評価:
  1. Mason-Morrey分類により骨折型を判定し、治療方法を選択する。
 
橈骨頭骨折の治療: >詳細情報 
  1. Mason-Morrey分類type I(転位のない骨折)とtype II(転位のある骨折)で骨片転位が2mm未満の症例に対しては長上肢ギプス(ギプスシーネ)固定を3~5週間行う。
  1. type IIの骨片転位が2mm以上の症例とtype IIIは手術適応である。手術はプレート、スクリュー、鋼線などを用いて骨折部の内固定を行う。術後は長上肢ギプス(ギプスシーネ)固定を1~3週間行う。なお、肘関節脱臼を伴ったtype IVは脱臼整復後のMason-Morrey分類に準じて治療を行う。
  1. 合併する靱帯損傷やほかの骨折については、個別に手術適応を検討する必要がある。
  1. 橈骨頭が高度に粉砕し、骨片が小さく、骨移植によっても良好な固定性が得られない場合は、人工橈骨頭置換術を行うことがある
 
橈骨頚部骨折の治療: >詳細情報 
  1. 診療方針は、橈骨頭骨折同様に、単純X線像やCT画像による橈骨頭骨折の骨折型の判定や合併損傷の有無とその程度により決定される。
  1. 転位の少ないMason-Morrey分類 type I(転位のない骨折)と橈骨頭傾斜角が10°未満のtype II(転位の少ない骨折)に保存療法を行う。
  1. 橈骨頭傾斜角が10°以上のtype II型とtype III(高度に完全に転位した骨折)に対して手術療法(骨接合)を行う( 解説 )。なお肘関節脱臼を伴ったMason-Morrey分類 type IVは脱臼整復後のMason-Morrey分類に準じて治療を行う。
 
臨床のポイント:
  1. 橈骨頭切除は最後の手段。まずは温存する治療を試みる。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

診断方法例
  1. 必ずすべての患者に対して、単純X線肘関節2方向(正面、側面像)撮影を行う。できれば健側の単純X線肘関節2方向撮影による比較と肘関節CT検査を行い、合併損傷の有無を診断する。
○ 脱臼骨折では単純X線検査にCT検査を追加する。
1)
単純X線(両肘関節2方向)  解説 
2)
CT(患側の肘関節)  解説 

保存療法例
  1. Mason-Morrey分類type Iとtype IIで骨片転位が2mm未満の症例に対して、長上肢ギプス(ギプスシーネ)固定と三角巾使用を3~5週間行う。肘関節脱臼を伴ったtype IVは脱臼整復後のMason-Morrey分類に準じて治療を行う。合併する靱帯損傷やほかの骨折については、個別に手術適応の有無を検討する必要がある。外来では、1~2週間ごとに単純X線肘関節2方向(正面、側面像)撮影し、骨片転位の有無、仮骨形成や骨癒合のチェックを行う。外固定期間中も手指屈伸、肩関節挙上、回旋運動を行う。また外固定をはずした後は、肘関節屈曲、伸展および前腕回内、回外の自動運動を行う。仮骨形成の具合をみながら受傷後約6週間から他動運動を行う。肘関節可動域訓練は愛護的に行わないと、異所性骨化が生じ、肘関節拘縮の原因となる。
○ 受傷後、上記の方針に従い経過時期に合わせて下記の運動療法を追加していく。疼痛があれば適宜NSAIDsを処方する。
1)
単純X線(患側の肘関節2方向)の再撮影
2)
ロキソニン錠[60mg] 3錠 分3 次回外来まで [適用内/用量内/㊜外傷](編集部注:想定する適用病名「外傷」/2015年11月)
薬剤情報を見る
薬理情報 鎮痛・解熱薬 >NSAIDs(プロピオン酸系)
同効薬一覧
要注意情報
3)
長上肢ギプスシーネ固定+三角巾による患肢安静  解説 
4)
肘関節屈曲、伸展および前腕回内、回外の自動運動
5)
肘関節屈曲、伸展および前腕回内、回外の他動運動

手術療法例
  1. Mason-Morrey分類type IIの骨片転位が2mm以上の症例とtype IIIは手術適応である。手術はプレート、スクリュー、鋼線などを用いて骨折部の内固定を行う。術後は長上肢ギプス(ギプスシーネ)固定を1~3週間行う。肘関節脱臼を伴ったtype IVは脱臼整復後のMason-Morrey分類に準じて治療を行う。合併する靭帯損傷やほかの骨折については、個別に手術適応を検討する必要がある。入院期間は合併症がなければ約3~4日間で、以後外来加療となる。抜糸は術後10~14日目の予定である。外来診療では、約2週間ごとに単純X線肘関節2方向(正面、側面像)撮影し、骨片転位の有無、仮骨形成や骨癒合のチェックと緩くなったギプスの巻き替えを行う。外固定期間中も手指屈伸、肩関節挙上、回旋運動を行う。また外固定をはずした後は、肘関節屈曲、伸展および前腕回内、回外の自動運動を行う。仮骨形成の具合をみながら受傷後約6週間から他動運動を行う。肘関節可動域訓練は愛護的に行わないと、異所性骨化が生じ、肘関節拘縮の原因となる。
○ 術後の上記の方針に従い、時期に応じて下記の運動療法を追加する。
1)
単純X線(患側の肘関節2方向)の再撮影
2)
ロキソニン錠[60mg] 3錠 分3 次回外来まで [適用内/用量内/㊜外傷](編集部注:想定する適用病名「外傷」/2015年11月)
薬剤情報を見る
薬理情報 鎮痛・解熱薬 >NSAIDs(プロピオン酸系)
同効薬一覧
要注意情報
3)
長上肢ギプスシーネ固定+三角巾による患肢安静  解説 
4)
肘関節屈曲、伸展および前腕回内、回外の自動運動
5)
肘関節屈曲、伸展および前腕回内、回外の他動運動

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)

橈骨頭骨折:Mason-Morrey分類別治療方針
橈骨頚部骨折:Mason-Morrey分類別治療方針
合併損傷を伴った橈骨頭、橈骨頚部骨折の治療方針
受傷機序
橈骨骨端核の出現時期
梃子を利用した経皮的ピンニング法
フォルクマン拘縮(上肢のコンパートメント症候群)
著者校正/監修レビュー済
2018/06/21

改訂のポイント:
  1. 橈骨遠位端骨折診療ガイドライン 2017
に基づき確認を行った(変更点なし)。


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