今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 有野浩司 SUBARU健康保険組合 太田記念病院

監修: 竹下克志 自治医科大学整形外科

著者校正/監修レビュー済:2022/09/28
患者向け説明資料

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 手指の外傷は非常に多くみられるが、創処置のみで済むことが多い。しかし、骨や腱に感染が及ぶと、治療がまったく異なり難治性となり、手術まで要するものになる。
  1. 屈筋腱の腱鞘は各指ごとにわかれているため、感染初期は各指に限局する。<図表>
  1. 感染が個々の腱鞘の範囲を超え、隣接指や近位まで波及すると、その構造から一気に多数指に広がる可能性がある。
 
屈筋の腱鞘と近位で橈側および尺側滑液包に連続する延長部

示、中、環指にそれぞれ腱鞘があり、母指と小指は近位に連続する腱鞘がある。

出典

編集部にて作図
 
  1. 母指と小指は腱鞘が大前腕腔(Parona’s space)へ連続しているため、感染が近位に波及しやすく、進行すると母指、前腕、小指と馬蹄状を呈する。
  1. 化膿性腱鞘炎は通常、刺創によって生じるが、他の部位からの血行性に生じることもある。
  1. 環指、中指、小指に多く生じ、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が最も多い起因菌である。
  1. 指の腫脹が緩徐に進行するものに弱毒菌、非結核性抗酸菌によるものがある。
  1. 結核菌、非結核性抗酸菌による腱鞘炎もまれにある。
 
  1. 結核性腱鞘炎(推奨度2)
  1. まれであるが、難治性の慢性炎症例で考慮すべき疾患である。
  1. ツベルクリン検査がスクリーニングで行われるが、疑陽性もあり、2006年から使用可能となったクオンティフェロン検査が用いられる。
  1. 腱鞘に無痛性の腫脹がみられる場合や、手関節掌側に二連球状の腫脹がみられればこの疾患を疑う。
  1. 診断は抗酸菌培養や結核菌のPCRによる菌の同定、手術を行った際の組織検査所見での乾酪壊死、多核巨細胞、類上皮肉外腫などで行う。治療は化膿性腱鞘炎同様の手術と抗結核の化学療法を行う。
 
  1. 非結核性抗酸菌性腱鞘炎(推奨度3)
  1. 細菌性化膿性腱鞘炎は急性に進行し、数日で腱が壊死するが、非結核性好酸菌によるものは比較的緩徐に進行し、受診まで時間を要し、診断が困難なことがある。起因菌にMycobacterium marinumがあり、結核菌より低温の水のあるところに存在し、水辺での外傷などの既往に注意する。
  1. 結核菌性腱鞘炎同様に無痛性の腱鞘の腫脹がみられる。
  1. 細菌検査は通常の培養に加え、抗酸菌培養、特に低温培養が必要であるが、菌を同定できない場合も多い。治療は抗結核薬を6M程度服用するが、肝機能障害などに注意する。
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 発症時期を確認する。

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
有野浩司 : 未申告[2024年]
監修:竹下克志 : 講演料(第一三共(株))[2024年]

ページ上部に戻る

感染性(化膿性、結核性)腱鞘炎

戻る