右脚ブロック :トップ    
監修: 永井良三 自治医科大学
真中哲之 浅草ハートクリニック

概要

疾患のポイント:
  1. 右脚ブロックとは、心室内伝導路のうち右脚に特異的に伝導障害を生じる状態である。
  1. 心室内伝導路はHis束以下の心室膜様部直下で、まず左脚が分枝しそのまま右脚に移行、心室中隔右室側心内膜下を右室前乳頭筋基部まで走行する。左脚は大動脈弁右冠尖と無冠尖の交連部下方で前乳頭筋に向かう前枝と後乳頭筋に向かう後枝に分枝する。
  1. Framingham studyではQRS幅が0.10秒以上の心室内伝導障害を呈した症例は男性の6%、女性の2.4%であった。約半数がQRS幅0.12秒以上の完全脚ブロックであり、50歳以上で加齢とともに増加傾向があった。

診断: >詳細情報 
  1. ポイント:
  1. 脚ブロックはWHOの診断基準を参考に心電図で診断される。(左脚ブロックとの比較で、米国ではMaRRoWと覚える人もいる。R[右脚ブロック]は、一番目に[V1]に、Mの形[rsr' の形]、V6にW[qRとなだらかなS波]の形がくる。)なお、左脚ブロックはWiLLiaMと覚える。
  1. 右脚ブロック症例の診療アルゴリズム:アルゴリズム
  1. 完全右脚ブロックの心電図:<図表>
  1. 不完全右脚ブロックの心電図:<図表>
  1. WHO診断基準:
  1. QRS間隔、V1、V2誘導のパターン、V6、I誘導のS波の形、V5、V6、V1のR波のピーク時間により診断する。
  1. WHO診断基準<図表>
  1. Brugada型心電図の除外:
  1. 心拍数の上昇に伴い生じる心室内変行伝導、はBrugada型心電図(前胸部誘導[V1~2]でST上昇を伴う右脚ブロック型心電図)を除外する。
  1. Brugada症候群の心電図分類:<図表>
  1. Brugada症候群の心電図分類:<図表>
  1. 完全右脚ブロック・不完全右脚ブロックの評価:
  1. 心電図でQRS幅が0.12秒以上であれば完全脚ブロック、0.10~0.12秒であれば不完全脚ブロックと呼ばれる。
  1. 2束ブロック・3束ブロックの評価:
  1. 左脚前枝ブロックあるいは左脚後枝ブロックを併発すると2束ブロックと呼ばれる。一般的に左脚前枝ブロックの併発が多いとされ、心電図は左軸偏位を示す。
  1. 完全右脚ブロック+左軸偏位+I°あるいはII°房室ブロックを呈する際には3束ブロックと呼ばれる。2束ブロックあるいは3束ブロックは、完全房室ブロックへの移行の危険性があり注意深い経過観察が必要である。
 
重症度・予後: >詳細情報 
  1. 重症度は、基礎疾患に基づく。
  1. 右脚ブロック+左脚前枝あるいは後枝のブロックの合併例(2束ブロック)あるいは右脚ブロックと左脚ブロックが交互に出現するような交代性脚ブロック、3束ブロックでは完全房室ブロックへの移行の危険性が高い。
 
原因疾患・合併疾患の評価: >詳細情報 
  1. 虚血性心疾患、心サルコイドーシス、心筋症、不整脈源性右室心筋症、肺高血圧症(原発性、二次性)、心房中隔欠損症、心内膜症欠損症を評価する。

治療: >詳細情報 
  1. まず、上記の合併する基礎心疾患の有無の確認を行う。また、内服薬に伝導を抑制するような薬剤※が含まれていないかどうかの確認し、必要に応じて薬剤を中止する。
  1. 合併症のない無症候性脚ブロックでは特別な治療を必要としないことが多い。基礎心疾患を有するような症例では原疾患の進行、完全房室ブロックへの移行に注意し、フォローアップを行う。
  1. 通常、右脚ブロックはペースメーカーの適応にならない。高度、完全房室ブロックへ移行を認めたときに埋め込みを行う。
  1. ペースメーカーの適応:<図表>
  1. 2束ブロック、3束ブロックなどでは完全房室ブロックへの移行のリスクが大きいため、専門医への相談を行う。
  1. ※β遮断薬、ジルチアゼム、ベラパミル、その他抗不整脈薬、ドネペジル(アルツハイマー型認知症治療薬)など

専門医相談のタイミング: >詳細情報 
  1. 基礎心疾患の評価治療目的が必要な場合、経過観察中に高度あるいは完全房室ブロックへの進行を認め恒久的ペースメーカー植込み術の必要がある場合、2束ブロック、3束ブロック、あるいは間欠性脚ブロックなどを認める場合には専門医に紹介する必要がある。
 
臨床のポイント:
  1. 右軸偏位や左軸偏位と、2度以上の房室ブロックが併せて認められる場合は要注意である。
  1. 基礎心疾患の有無の確認と、Brugada型心電図・右室肥大との鑑別が重要である。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

基礎心疾患の存在を除外するために必要な検査
  1. 鑑別である、Brugada型心電図を除外する。アルゴリズム<図表>
  1. 脚ブロックは心疾患に併発することも多く、虚血性心疾患等の基礎心疾患を除外することは重要である。 >詳細情報 
  1. 右脚ブロックは基礎心疾患がない例も多い。
○ 基礎疾患を除外する目的で1)を考慮する。必要に応じて2)-6)を追加する。
1)
胸部エックス線写真
2)
BNP[CLEIA]
3)
心臓超音波検査
4)
心臓MRI検査
5)
心臓核医学検査
6)
心臓カテーテル検査

伝導障害の進行の有無を確認するために必要な検査例
  1. 基礎疾患を認めたり、息切れやめまいなどの症状を認める場合には伝導障害の進行の可能性がある。
  1. 2束あるいは3束ブロックへの進行、あるいは交代性脚ブロック(右脚ブロックと左脚ブロックが両方とも認められる状態)は引き続き完全房室ブロックへの移行の危険性も高く注意が必要である。(2束あるいは3束ブロックの心電図の説明 >詳細情報 )
○ 基礎疾患を認めたり、息切れやめまいなどの症状を認める場合には、1)または2)を行う。ペースメーカーの適応決定の際には3)を行う。
1)
12誘導心電図
2)
Holter24時間心電図
3)
心臓電気生理学的検査

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)

右脚ブロック症例の診療アルゴリズム
心室内伝導障害の分類
ペースメーカー植込み適応
右脚、左脚の解剖
完全右脚ブロックの心電図
不完全右脚ブロックの心電図
WHOによる右脚ブロック診断クライテリア
Brugada症候群の心電図分類
右脚ブロックの出現
完全右脚ブロック
著者校正/監修レビュー済
2017/12/25


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