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図表
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概要・推奨
疾患のポイント:- 過敏性血管炎とは、もともと薬剤やウイルス、細菌などに対して免疫系が過剰反応を起こして、主に皮膚の血管に炎症が起こる疾患として定義された。
- 皮膚生検にて真皮浅層~中層の血管炎が主体の白血球破砕性血管炎(leukocytoclastic vasculitis)を認める。皮膚動脈炎とはより深い真皮下層~皮下組織の血管が病変の首座であることが鑑別点となる。
- 近年、血管炎のさまざまな原因が明らかになるに伴い、血管炎は病因により分類されるようになったため、過敏性血管炎の名称が使われることは減っている。血管炎の国際分類を定めた会議(Chapel Hill Consensus Conference:CHCC)では1994年に過敏性血管炎は除かれた。2012年のCHCCでは過敏性血管炎は以下に分類される。原因の明らかなものは、誘因の推定される続発性血管炎として薬剤関連免疫複合体性血管炎/薬剤関連ANCA関連血管炎/C型肝炎関連クリオグロブリン性血管炎/B型肝炎ウイルス関連血管炎/癌関連血管炎等、原因が明らかでなく皮膚症状が主体の血管炎は皮膚白血球破砕性血管炎。IgA沈着を認めて皮膚以外にも消化管、腎炎(紫斑病性腎炎)をしばしば生じる血管炎をIgA血管炎/ Henoch-Schonlein紫斑病と呼ばれるようになっている。<図表>
- 下腿中心の紫斑を認め、血小板数正常で凝固異常がない場合には皮膚血管炎を考える。小児の場合はほとんどがIgA血管炎であるが、成人の場合は鑑別診断の範囲が広く、病理組織像が診断の参考になるため皮膚生検を行う。
- 皮膚血管炎の20~30%で薬剤が関与するとされる。原因薬剤の早期中止により重症化を防ぐことが可能で、薬剤中止のみで寛解する症例がある。過度の免疫抑制療法を避けられる可能性があるため、薬剤関連血管炎を常に考慮する必要がある。ANCAの関与する薬剤関連ANCA関連血管炎と関与しない薬剤関連免疫複合体性血管炎に分類される。
- クリオグロブリンが陽性の血管炎は、ほとんどがHCV陽性であり、C型肝炎関連クリオグロブリン血症性血管炎と呼ばれる。紫斑、関節痛、多発神経障害、腎障害を認めるが、軽症~中等症では抗HCV療法を行い、重症例では血管炎のコントロールを優先してステロイドや免疫抑制剤投与、血漿交換を先行させ、寛解後に抗HCV療法を行う。
- HBV感染に伴う血管炎は結節性多発動脈炎が多いとされるが、わが国での頻度は少ない。他に皮膚白血球破砕性血管炎や蕁麻疹様血管炎の報告もある。
- 血液悪性腫瘍などに伴って皮膚血管炎が生じることがある。皮膚症状の多くがpalpable purpuraであり、難治の紫斑では合併を考慮する必要がある。
診断: >詳細情報 - ポイント:
- 上記評価が正常の場合で、生検で血管周囲に好中球を主体とする細胞浸潤や白血球由来の核破砕、血管壁のフィブリノイド変性を伴う血管炎が証明され、皮膚症状と関節症状のみの場合は過敏性血管炎を疑う(過敏血管炎では通常、関節症状以外の臓器症状は認めない)。皮膚や関節以外に消化管出血や腹痛、血尿や蛋白尿、腎機能障害を認める場合はIgA血管炎を疑う。下記の分類基準を参考に診断する。
- 鑑別のためにANCA測定は必須である。ANCA陽性の場合はANCA関連血管炎と薬剤関連ANCA関連血管炎などのANCA陽性になる疾患を鑑別する必要がある。<図表>
- 過敏性血管炎分類基準:
- 以下の分類基準が提唱されているが、この基準を満たす疾患は、CHCC2012の分類ではC型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン性血管炎、B型肝炎ウイルス関連血管炎、薬剤関連免疫複合体性血管炎、薬剤関連ANCA関連血管炎、癌関連血管炎などの原因の推定される続発性血管炎の中で皮膚症状が主体のものとIgA血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎が含まれる。
- 過敏性血管炎の分類基準(1990年、米国リウマチ学会):
<図表>
- Henoch-Schonlein紫斑病の分類基準:
- 20歳未満の場合に、下腿中心の紫斑で血小板減少や凝固異常がなく、皮膚の血管炎が疑われる場合は、ほとんどがIgA血管炎/Henoch-Schonlein紫斑病であり、皮膚生検を行う必要はない。随伴症状を確かめ、1990年米国リウマチ学会の分類基準を参考にして診断する。なおIgA血管炎では、血清IgA上昇が約60%の症例でみられる。
- 以下の分類基準を満たすと感度87%、特異度88%である。
原因疾患・合併疾患: >詳細情報 - ポイント:
- 皮膚血管炎の診断となった患者は、血管炎を生じる原因の検索と皮膚以外の合併症有無を評価する。皮膚血管炎の中で原因が推測されるものは約50%である。感染症15~20%、自己免疫疾患15~20%、薬剤10~15%、悪性腫瘍2~5%と報告されている。頻度別に一覧表とした。
- 皮膚血管炎の原因:<図表>
- 原因疾患の評価:
- 感染症:過敏性血管炎の原因となる可能性がある疾患(溶血性連鎖球菌、EBウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVウイルス、細菌性心内膜炎など)を評価する。
- 薬剤性:薬剤性ANCA関連血管炎ではヒドララジン、プロピオチオウラシルの報告が多く、投与期間は数カ月から数年の長期投与後に発症するとされる。一方薬剤関連免疫複合体性血管炎では、非ステロイド系抗炎症薬や抗菌薬が主な原因で、薬剤開始後2週間以内に発症することが多い。そのほかにもさまざまな薬剤が報告されている。<図表>
- 悪性腫瘍:癌関連血管炎では血液悪性腫瘍の報告が多い。骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、白血病、原発性マクログロブリン血症などの報告がある。固形癌では肺癌が最も多い。
- 合併症の評価:
- 糸球体腎炎:IgA血管炎では、50~80%に糸球体腎炎を合併するため必ず評価する。尿一般、沈渣を検査する。また薬剤関連ANCA関連血管炎でも軽度の腎炎を合併することがある。
- 消化器病変:IgA血管炎では頻度が高いため、合併の有無を評価する。便潜血を検査する。腹痛を認めるときは造影CT等の画像診断も積極的に行う。
- その他の臓器病変:薬剤性血管炎でも肺、神経、肝、脾などにも病変を合併することがある。
- 全身性血管炎で認められる症状(血管炎診断時に評価すべき合併症):<図表>
重症度・予後: >詳細情報 - 過敏性血管炎の予後はよい。皮膚症状のみで腹痛や血便がなく、尿検査異常(尿潜血)を認めない場合は、通常2~3週間で治癒する。
- IgA血管炎では腎炎の有無と重症度が予後を決める。小児では約半数に腎炎を認めるが末期腎不全になることは少ない。成人では80%以上に腎炎を合併する。血尿または軽度の蛋白尿のみの場合は末期腎不全に至る確率は5%未満であるが、国際小児腎臓病研究グループ(International Study of Kidney Disease in Children:ISKDC)の腎生検重症度分類でgradeⅢ以上では20%が末期腎不全に至るため、積極的な治療と長期の観察期間を必要とする。
治療: >詳細情報 - 治療は原因がある場合は原因薬剤の中止、感染症の治療、悪性腫瘍の治療など原因疾患の治療が最優先される。
- 皮膚症状、疼痛に対しては下肢安静、弾性包帯、非ステロイド性抗炎症薬などの対症療法を行う。
- 皮膚白血球破砕性血管炎の皮膚症状で中等症~重症の場合はジアミノジフェニルスルホン(ジアフェニルスルホン、diaminodiphenyl sulfone:DDS)、コルヒチン、少量~中等量のプレドニゾロンを用いる。
- IgA血管炎で重症の皮疹(紫斑が広範囲や遷延、多数の血疱や潰瘍を伴う場合)にはステロイド軟膏、外用潰瘍治療薬、DDS、コルヒチンを使用する。重症紫斑に対する2~4週の副腎皮質ステロイド投与は有効ではあるが、再発や紫斑病性腎症予防のエビデンスは乏しく、効果は限定的である。
- IgA血管炎で関節症状、軽度の腹痛のみの場合は対症療法でよい。強い消化器症状や重症の紫斑病性腎炎(ネフローゼ症候群/高血圧合併/腎機能低下/3~6カ月以上の持続的蛋白尿)を伴う場合は、腎生検を行ったうえでステロイド治療を検討する。
- C型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン血症性血管炎は抗ウイルス療法で血管炎症状の改善が期待できるため、専門家にコンサルトする。急速進行性の症例や重症例では副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、血漿交換による血管炎のコントロールを先行して行う。
- B 型肝炎ウイルス関連血管炎でも抗ウイルス療法による改善が期待できる。重症例では治療初期に副腎皮質ステロイドと血漿交換療法を行い、抗ウイルス療法を併用する。
- 薬剤関連血管炎で薬剤中止のみで改善することが多いが、難治例や重症例では副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤の投与を検討する。
- 癌関連血管炎で癌の治療のみで改善しない場合は、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤による治療も行われる。
専門医相談のタイミング: >詳細情報 - 通常、皮膚以外の症状がみられる場合、中等量プレドニゾロン(0.5mg/kg/日)による加療でも症状が持続する場合には、各臓器の専門医や膠原病専門医に相談する。
- B型肝炎、C型肝炎が陽性の場合は肝臓(消化器)専門医に相談する。
- IgA血管炎では扁桃摘出とステロイドパルス療法の併用で寛解する場合がある。検討する場合は耳鼻咽喉科専門医に相談する。
臨床のポイント:- 過敏性血管炎は古い用語であり、現在ではIgA血管炎は独立疾患となり、原因の明らかなものは原因ごとに疾患名がつけられているが、今も使われる用語なので本稿に記す。
検査・処方例
※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。
■紫斑を認めたときのスクリーニング評価例
- 血小板数と凝固の異常の有無を確認する。
○ 血小板数正常なら、血管炎の可能性を考える。
1)
2)
■皮膚血管炎と診断されたときの評価例
- IgA血管炎では特に消化管と腎臓の病変が重要である。
- ANCA関連血管炎や免疫複合体性小血管炎、全身性疾患に伴う血管炎を除外する。
- 皮膚血管炎の誘因となる感染症や薬剤を検索する。
○ 皮膚血管炎の場合、他のルーチン検査に下記の検査を追加する。他に臓器症状や病変を伴う場合は、その臓器に応じた検査を追加する。<図表>
■皮膚症状、関節症状、軽度の腹痛のみの場合
- 安静(自宅、入院)と対症療法で治療を行う。
○ 関節痛、腹痛がある場合、下記を症状に応じて適宜用いる。
1)
ロキソニン錠[60mg] 3錠 分3 毎食後、次回外来まで
[用量内/㊜変形性関節症](適用確認:2018年5月)
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■皮膚症状(紫斑)が中等症~重症、難治性の場合
- 安静(自宅、入院)と対症療法で改善しない場合に試みる。
○ 紫斑が中等症~重症の場合、1)~3)のいずれかを用いる。
1)
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2)
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3)
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商品名一覧
先発品:プレドニン,プレドニゾロン
薬理情報
内分泌疾患用薬 >副腎皮質ステロイド薬
同効薬一覧
- コートン錠など(コルチゾン酢酸エステル)
- コートリル錠,ソル・コーテフ注射用など(ヒドロコルチゾン)
- デカドロン錠,デカドロン注射液など(デキサメタゾン)
- レダコート錠,ケナコルト-A筋注用関節腔内用水懸注など(トリアムシノロン)
- リンデロンシロップ,リンデロン注2mg(0.4%),リンデロン懸濁注,リンデロン坐剤,ステロネマ注腸など(ベタメタゾン)
- プレドニン錠,水溶性プレドニン,プレドネマ注腸など(プレドニゾロン)
- メドロール錠,ソル・メドロール静注用,デポ・メドロール水懸注など(メチルプレドニゾロン)
- レクタブル2mg注腸フォーム14回など(ブデソニド)
要注意情報
腎注
肝注
妊C
乳注
児量[有]
■IgA血管炎で強い腹痛、消化管出血、重症紫斑病性腎炎(ネフローゼ症候群、高血圧、腎機能低下、長期の持続する蛋白尿)を合併する場合。重要臓器障害を伴う誘因の推定される続発性血管炎(薬剤、感染、悪性腫瘍)の場合。
- 安静と対症療法で治療を行う。
○ 基本的に1)。重症では2)を行った後に1)とする。
1)
プレドニゾロン錠「タケダ」 [5mg] 12錠 分3 毎食後 2~4週間
[用量内/㊜IgA血管炎](適用確認:2018年5月)
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商品名一覧
先発品:プレドニン,プレドニゾロン
薬理情報
内分泌疾患用薬 >副腎皮質ステロイド薬
同効薬一覧
- コートン錠など(コルチゾン酢酸エステル)
- コートリル錠,ソル・コーテフ注射用など(ヒドロコルチゾン)
- デカドロン錠,デカドロン注射液など(デキサメタゾン)
- レダコート錠,ケナコルト-A筋注用関節腔内用水懸注など(トリアムシノロン)
- リンデロンシロップ,リンデロン注2mg(0.4%),リンデロン懸濁注,リンデロン坐剤,ステロネマ注腸など(ベタメタゾン)
- プレドニン錠,水溶性プレドニン,プレドネマ注腸など(プレドニゾロン)
- メドロール錠,ソル・メドロール静注用,デポ・メドロール水懸注など(メチルプレドニゾロン)
- レクタブル2mg注腸フォーム14回など(ブデソニド)
要注意情報
腎注
肝注
妊C
乳注
児量[有]
2)
ソル・メドロール静注用[1g] 1,000mg 1時間かけて 3日間(ステロイドパルス療法)
[用量内/㊜急性循環不全]
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商品名一覧
先発品:ソル・メドロール
後発品:ソル・メルコート
薬理情報
内分泌疾患用薬 >副腎皮質ステロイド薬
同効薬一覧
- コートン錠など(コルチゾン酢酸エステル)
- コートリル錠,ソル・コーテフ注射用など(ヒドロコルチゾン)
- デカドロン錠,デカドロン注射液など(デキサメタゾン)
- レダコート錠,ケナコルト-A筋注用関節腔内用水懸注など(トリアムシノロン)
- リンデロンシロップ,リンデロン注2mg(0.4%),リンデロン懸濁注,リンデロン坐剤,ステロネマ注腸など(ベタメタゾン)
- プレドニン錠,水溶性プレドニン,プレドネマ注腸など(プレドニゾロン)
- メドロール錠,ソル・メドロール静注用,デポ・メドロール水懸注など(メチルプレドニゾロン)
- レクタブル2mg注腸フォーム14回など(ブデソニド)
要注意情報
腎注
肝注
妊C
不明
児量[有]
疾患のポイント:
- 過敏性血管炎とは、もともと薬剤やウイルス、細菌などに対して免疫系が過剰反応を起こして、主に皮膚の血管に炎症が起こる疾患として定義された。
- 皮膚生検にて真皮浅層~中層の血管炎が主体の白血球破砕性血管炎(leukocytoclastic vasculitis)を認める。皮膚動脈炎とはより深い真皮下層~皮下組織の血管が病変の首座であることが鑑別点となる。
- 近年、血管炎のさまざまな原因が明らかになるに伴い、血管炎は病因により分類されるようになったため、過敏性血管炎の名称が使われることは減っている。血管炎の国際分類を定めた会議(Chapel Hill Consensus Conference:CHCC)では1994年に過敏性血管炎は除かれた。2012年のCHCCでは過敏性血管炎は以下に分類される。原因の明らかなものは、誘因の推定される続発性血管炎として薬剤関連免疫複合体性血管炎/薬剤関連ANCA関連血管炎/C型肝炎関連クリオグロブリン性血管炎/B型肝炎ウイルス関連血管炎/癌関連血管炎等、原因が明らかでなく皮膚症状が主体の血管炎は皮膚白血球破砕性血管炎。IgA沈着を認めて皮膚以外にも消化管、腎炎(紫斑病性腎炎)をしばしば生じる血管炎をIgA血管炎/ Henoch-Schonlein紫斑病と呼ばれるようになっている。<図表>
- 下腿中心の紫斑を認め、血小板数正常で凝固異常がない場合には皮膚血管炎を考える。小児の場合はほとんどがIgA血管炎であるが、成人の場合は鑑別診断の範囲が広く、病理組織像が診断の参考になるため皮膚生検を行う。
- 皮膚血管炎の20~30%で薬剤が関与するとされる。原因薬剤の早期中止により重症化を防ぐことが可能で、薬剤中止のみで寛解する症例がある。過度の免疫抑制療法を避けられる可能性があるため、薬剤関連血管炎を常に考慮する必要がある。ANCAの関与する薬剤関連ANCA関連血管炎と関与しない薬剤関連免疫複合体性血管炎に分類される。
- クリオグロブリンが陽性の血管炎は、ほとんどがHCV陽性であり、C型肝炎関連クリオグロブリン血症性血管炎と呼ばれる。紫斑、関節痛、多発神経障害、腎障害を認めるが、軽症~中等症では抗HCV療法を行い、重症例では血管炎のコントロールを優先してステロイドや免疫抑制剤投与、血漿交換を先行させ、寛解後に抗HCV療法を行う。
- HBV感染に伴う血管炎は結節性多発動脈炎が多いとされるが、わが国での頻度は少ない。他に皮膚白血球破砕性血管炎や蕁麻疹様血管炎の報告もある。
- 血液悪性腫瘍などに伴って皮膚血管炎が生じることがある。皮膚症状の多くがpalpable purpuraであり、難治の紫斑では合併を考慮する必要がある。
診断: >詳細情報
- ポイント:
- 上記評価が正常の場合で、生検で血管周囲に好中球を主体とする細胞浸潤や白血球由来の核破砕、血管壁のフィブリノイド変性を伴う血管炎が証明され、皮膚症状と関節症状のみの場合は過敏性血管炎を疑う(過敏血管炎では通常、関節症状以外の臓器症状は認めない)。皮膚や関節以外に消化管出血や腹痛、血尿や蛋白尿、腎機能障害を認める場合はIgA血管炎を疑う。下記の分類基準を参考に診断する。
- 鑑別のためにANCA測定は必須である。ANCA陽性の場合はANCA関連血管炎と薬剤関連ANCA関連血管炎などのANCA陽性になる疾患を鑑別する必要がある。<図表>
- 過敏性血管炎分類基準:
- 以下の分類基準が提唱されているが、この基準を満たす疾患は、CHCC2012の分類ではC型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン性血管炎、B型肝炎ウイルス関連血管炎、薬剤関連免疫複合体性血管炎、薬剤関連ANCA関連血管炎、癌関連血管炎などの原因の推定される続発性血管炎の中で皮膚症状が主体のものとIgA血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎が含まれる。
- 過敏性血管炎の分類基準(1990年、米国リウマチ学会):
<図表>
- Henoch-Schonlein紫斑病の分類基準:
- 20歳未満の場合に、下腿中心の紫斑で血小板減少や凝固異常がなく、皮膚の血管炎が疑われる場合は、ほとんどがIgA血管炎/Henoch-Schonlein紫斑病であり、皮膚生検を行う必要はない。随伴症状を確かめ、1990年米国リウマチ学会の分類基準を参考にして診断する。なおIgA血管炎では、血清IgA上昇が約60%の症例でみられる。
- 以下の分類基準を満たすと感度87%、特異度88%である。
原因疾患・合併疾患: >詳細情報
- ポイント:
- 皮膚血管炎の診断となった患者は、血管炎を生じる原因の検索と皮膚以外の合併症有無を評価する。皮膚血管炎の中で原因が推測されるものは約50%である。感染症15~20%、自己免疫疾患15~20%、薬剤10~15%、悪性腫瘍2~5%と報告されている。頻度別に一覧表とした。
- 皮膚血管炎の原因:<図表>
- 原因疾患の評価:
- 感染症:過敏性血管炎の原因となる可能性がある疾患(溶血性連鎖球菌、EBウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVウイルス、細菌性心内膜炎など)を評価する。
- 薬剤性:薬剤性ANCA関連血管炎ではヒドララジン、プロピオチオウラシルの報告が多く、投与期間は数カ月から数年の長期投与後に発症するとされる。一方薬剤関連免疫複合体性血管炎では、非ステロイド系抗炎症薬や抗菌薬が主な原因で、薬剤開始後2週間以内に発症することが多い。そのほかにもさまざまな薬剤が報告されている。<図表>
- 悪性腫瘍:癌関連血管炎では血液悪性腫瘍の報告が多い。骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、白血病、原発性マクログロブリン血症などの報告がある。固形癌では肺癌が最も多い。
- 合併症の評価:
- 糸球体腎炎:IgA血管炎では、50~80%に糸球体腎炎を合併するため必ず評価する。尿一般、沈渣を検査する。また薬剤関連ANCA関連血管炎でも軽度の腎炎を合併することがある。
- 消化器病変:IgA血管炎では頻度が高いため、合併の有無を評価する。便潜血を検査する。腹痛を認めるときは造影CT等の画像診断も積極的に行う。
- その他の臓器病変:薬剤性血管炎でも肺、神経、肝、脾などにも病変を合併することがある。
- 全身性血管炎で認められる症状(血管炎診断時に評価すべき合併症):<図表>
重症度・予後: >詳細情報
- 過敏性血管炎の予後はよい。皮膚症状のみで腹痛や血便がなく、尿検査異常(尿潜血)を認めない場合は、通常2~3週間で治癒する。
- IgA血管炎では腎炎の有無と重症度が予後を決める。小児では約半数に腎炎を認めるが末期腎不全になることは少ない。成人では80%以上に腎炎を合併する。血尿または軽度の蛋白尿のみの場合は末期腎不全に至る確率は5%未満であるが、国際小児腎臓病研究グループ(International Study of Kidney Disease in Children:ISKDC)の腎生検重症度分類でgradeⅢ以上では20%が末期腎不全に至るため、積極的な治療と長期の観察期間を必要とする。
治療: >詳細情報
- 治療は原因がある場合は原因薬剤の中止、感染症の治療、悪性腫瘍の治療など原因疾患の治療が最優先される。
- 皮膚症状、疼痛に対しては下肢安静、弾性包帯、非ステロイド性抗炎症薬などの対症療法を行う。
- 皮膚白血球破砕性血管炎の皮膚症状で中等症~重症の場合はジアミノジフェニルスルホン(ジアフェニルスルホン、diaminodiphenyl sulfone:DDS)、コルヒチン、少量~中等量のプレドニゾロンを用いる。
- IgA血管炎で重症の皮疹(紫斑が広範囲や遷延、多数の血疱や潰瘍を伴う場合)にはステロイド軟膏、外用潰瘍治療薬、DDS、コルヒチンを使用する。重症紫斑に対する2~4週の副腎皮質ステロイド投与は有効ではあるが、再発や紫斑病性腎症予防のエビデンスは乏しく、効果は限定的である。
- IgA血管炎で関節症状、軽度の腹痛のみの場合は対症療法でよい。強い消化器症状や重症の紫斑病性腎炎(ネフローゼ症候群/高血圧合併/腎機能低下/3~6カ月以上の持続的蛋白尿)を伴う場合は、腎生検を行ったうえでステロイド治療を検討する。
- C型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン血症性血管炎は抗ウイルス療法で血管炎症状の改善が期待できるため、専門家にコンサルトする。急速進行性の症例や重症例では副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、血漿交換による血管炎のコントロールを先行して行う。
- B 型肝炎ウイルス関連血管炎でも抗ウイルス療法による改善が期待できる。重症例では治療初期に副腎皮質ステロイドと血漿交換療法を行い、抗ウイルス療法を併用する。
- 薬剤関連血管炎で薬剤中止のみで改善することが多いが、難治例や重症例では副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤の投与を検討する。
- 癌関連血管炎で癌の治療のみで改善しない場合は、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤による治療も行われる。
専門医相談のタイミング: >詳細情報
- 通常、皮膚以外の症状がみられる場合、中等量プレドニゾロン(0.5mg/kg/日)による加療でも症状が持続する場合には、各臓器の専門医や膠原病専門医に相談する。
- B型肝炎、C型肝炎が陽性の場合は肝臓(消化器)専門医に相談する。
- IgA血管炎では扁桃摘出とステロイドパルス療法の併用で寛解する場合がある。検討する場合は耳鼻咽喉科専門医に相談する。
臨床のポイント:
- 過敏性血管炎は古い用語であり、現在ではIgA血管炎は独立疾患となり、原因の明らかなものは原因ごとに疾患名がつけられているが、今も使われる用語なので本稿に記す。
■紫斑を認めたときのスクリーニング評価例
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紫斑を認めたときのスクリーニング評価例
- 血小板数と凝固の異常の有無を確認する。
○ 血小板数正常なら、血管炎の可能性を考える。
1) |
2) |
■皮膚血管炎と診断されたときの評価例
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皮膚血管炎と診断されたときの評価例
- IgA血管炎では特に消化管と腎臓の病変が重要である。
- ANCA関連血管炎や免疫複合体性小血管炎、全身性疾患に伴う血管炎を除外する。
- 皮膚血管炎の誘因となる感染症や薬剤を検索する。
○ 皮膚血管炎の場合、他のルーチン検査に下記の検査を追加する。他に臓器症状や病変を伴う場合は、その臓器に応じた検査を追加する。<図表>
■皮膚症状、関節症状、軽度の腹痛のみの場合
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皮膚症状、関節症状、軽度の腹痛のみの場合
- 安静(自宅、入院)と対症療法で治療を行う。
○ 関節痛、腹痛がある場合、下記を症状に応じて適宜用いる。
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ロキソニン錠[60mg] 3錠 分3 毎食後、次回外来まで
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■皮膚症状(紫斑)が中等症~重症、難治性の場合
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皮膚症状(紫斑)が中等症~重症、難治性の場合
- 安静(自宅、入院)と対症療法で改善しない場合に試みる。
○ 紫斑が中等症~重症の場合、1)~3)のいずれかを用いる。
1) |
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■IgA血管炎で強い腹痛、消化管出血、重症紫斑病性腎炎(ネフローゼ症候群、高血圧、腎機能低下、長期の持続する蛋白尿)を合併する場合。重要臓器障害を伴う誘因の推定される続発性血管炎(薬剤、感染、悪性腫瘍)の場合。
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IgA血管炎で強い腹痛、消化管出血、重症紫斑病性腎炎(ネフローゼ症候群、高血圧、腎機能低下、長期の持続する蛋白尿)を合併する場合。
重要臓器障害を伴う誘因の推定される続発性血管炎(薬剤、感染、悪性腫瘍)の場合。
- 安静と対症療法で治療を行う。
○ 基本的に1)。重症では2)を行った後に1)とする。
1) |
プレドニゾロン錠「タケダ」 [5mg] 12錠 分3 毎食後 2~4週間
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2) |
ソル・メドロール静注用[1g] 1,000mg 1時間かけて 3日間(ステロイドパルス療法)
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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
著者により作成された情報ではありません。
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※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
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すべての医療従事者の皆様に敬意を表します。
人々の健康を守っていただき、ありがとうございます。
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