今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 山口さやか 琉球大学病院

監修: 細川直登 亀田総合病院

著者校正/監修レビュー済:2022/03/16
参考ガイドライン:
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、加筆修正を行った。

概要・推奨   

  1. ハンセン病の治療では単剤ではなく多剤併⽤療法が強く推奨される(推奨度1)
  1. ハンセン病の患者では眼科へのコンサルトおよび連携が勧められる(推奨度1)
  1. BI陰転化まで治療を継続し、特に治療開始時のBIが高いMB患者では、治療終了後も再発に留意してフォローする必要がある(推奨度1)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. ハンセン病は、抗酸菌の一種であるらい菌(Mycobacterium leprae)による慢性感染症である。
  1. 主に皮膚と末梢神経を主病変とし、末梢神経障害に伴う感覚・運動障害により変形や機能不全を呈することが特徴である。
  1. 感染様式は、主に飛沫による経気道感染と考えられており、一般に感染の成立には、免疫能が完全でない乳幼児期に多量・頻回にらい菌にさらされることが重要と考えられている。潜伏期間はきわめて長く、数年から数十年と考えられている。人の体内に侵入しても、発病することはきわめてまれである。
  1. WHOによると、2019年に全世界で約20万人が新規感染者として登録された[1]。日本では、年間10例以下の新規発症者がみられ、ほとんどが在日外国人である。日本人の新規発症者は数年に1人程度で、全例が60歳以上の高齢者である[2]
  1. 患者数が減少したため、日本の医師のほとんどは診療経験がなく、初診から診断までに時間を要することが多い。見落とさないためには、流行国からの渡航者や在留外国人、流行国にて長期滞在歴のある患者や日本人高齢者に、皮膚病変部の病理検査で肉芽腫の所見が見られる場合、ハンセン病を鑑別しなくてはならない。
病型・分類  
WHO分類:
  1. WHOでは、人材や設備の問題により病理検査が困難な国での診断および治療を想定し、皮疹の数および皮膚スメア検査の結果のみをもとに少菌型(paucibacillary:PB、皮膚スメア検査陰性もしくは皮疹が1~5個)か、多菌型(multibacillary:MB、皮膚スメア検査陽性もしくは皮疹が6個以上)の2つに分類・診断し、同時に治療薬と治療期間が決定される[3]
 
Ridley-Jopling分類:
  1. 皮膚スメア検査によるらい菌の数、皮疹の性状や数、神経障害の程度(知覚障害、神経肥厚、運動麻痺など)、病理組織所見などからRidley-Jopling分類(発症初期のindeterminate[I群]、免疫応答の高いtuberculoid[TT]型、まったく反応しないlepromatous(LL)型、これらの中間型のB群(borderline tuberculoid[BT]型、mid-borderline[BB]型、borderline lepromatous[BL]型)に分類する[4]
  1. これは免疫学的な概念をもとに作られた分類で、治療開始後に予想される臨床経過や、反応性病変、末梢神経障害、後遺症や合併症などを予測するのに有用である。TT型やBT型はWHO分類の少菌型に該当し、BB型、BL型、LL型は多菌型に相当する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
山口さやか : 特に申告事項無し[2025年]
監修:細川直登 : 未申告[2024年]

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ハンセン病

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