今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 朝倉正紀1) 兵庫医科大学 循環器内科

著者: 北風政史2) 阪和病院・阪和記念病院

監修: 今井靖 自治医科大学 薬理学講座臨床薬理学部門・内科学講座循環器内科学部門

著者校正/監修レビュー済:2021/12/01
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. アルコール摂取量の制限は社会的にも重要な課題として認識され、わが国の酒類の販売においても純エタノール量の記載がはじまり、非医療従事者である一般患者にも摂取量の推定が簡便となり、アルコール性心筋症の予防指導が効率的に行えるようになった。

概要・推奨   

  1. アルコールの摂取量が純エタノール換算量で90g/日(ビール500mlで4.5本)より多く、5年以上のアルコール依存症患者は、無症候性アルコール性心筋症進行のリスクがあり、無症候性のアルコール性心筋症診断後もさらに飲酒を継続すると、心不全徴候や心不全症状が出現する。アルコール多飲者には断酒をすることが勧められる(推奨度1)
  1. 欧米の統計では、30~55才の男性に多く、女性は全体の14%程度だが、アルコール耐用量が低いことから女性ではより少量の摂取歴でアルコール性心筋症の発症に至りやすい。
  1. アルコール依存症の患者で、アルコール性心筋症を早期発見するには心エコー検査を行うことが勧められる(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. アルコール性心筋症は、アルコール過剰摂取により、拡張型心筋症を呈することをいう。
  1. わが国におけるアルコール性心筋症の発症頻度などの疫学データは乏しい。
  1. アルコール性心筋症の病因に関しては、大量のアルコール摂取に伴う栄養障害(ビタミンB12欠乏)、アルコール代謝産物によるアセトアルデヒドによる作用(交感神経活性化など)が考えられているが、不明な点が多い。
  1. アルコール依存症患者は無症候性アルコール性心筋症進行のリスクがあり、断酒を行わなければ、左心機能の低下を認める[1][2]
 
  1. アルコールの摂取量が90g/日(ビール500mlで4.5本)より多く、5年以上のアルコール依存症患者は、無症候性アルコール性心筋症進行のリスクがあり、無症候性のアルコール性心筋症診断後もさらに飲酒を継続すると、心不全徴候や心不全症状が出現する。アルコール多飲者には断酒をすることが勧められる(推薦度1S RS)。
  1. 代表事例
  1. 主要論文の観察期間は平均15年間であり、一般のアルコールドリンクには12gのアルコールが含まれており、アルコール常用者の自己申告では1日8~21杯飲んでいた。
  1. 症候性のアルコール性心筋症や心不全になるまでのアルコール摂取量や期間に関しては、1回のアルコール摂取量ではなく、アルコール継続期間とその間の継続的なアルコール摂取量に関連がある。
  1. 症候性アルコール心筋症の患者は、完全に断酒できた患者を除いた4年死亡率は50%に近い[1][2][3][4][5][6]
  1. 結論:アルコールの摂取量が90g/日(ビール500mlで4.5本)より多く、5年以上のアルコール依存症患者は無症候性アルコール性心筋症進行のリスクがあり、断酒を行わなければ、臨床的に左心機能の低下が認められる。
  1. 追記:中等度では逆に、心不全のリスクを47%低下させたとの報告がある[7]
 
  1. 中等度のアルコール摂取は有意な心毒性に関連しない。しかし、アルコール性心筋症患者の中等度アルコール摂取は、左室駆出率(EF)を改善しない(推薦度1S RS)。
  1. まとめ:過度のアルコール摂取はアルコール性心筋症のリスクとなるが、中等度のアルコール摂取は心不全のリスクを低下させるとの報告が多数ある。
  1. 代表事例
  1. Abramsonらの報告では、2,235人の老人を14年間フォローし[8]、21~70オンス/月のアルコール消費は心不全(HF)のリスクを47%低下させ、Cardiovascular Health Studyのデータでは、中等度のアルコール飲酒はHFのリスクを下げている[9]
  1. さらに左心機能低下患者のランダマイズトライアルであるStudies of Left Ventricular DysfunctionやSurvival and Ventricular Enlargementでは、中等度のアルコール摂取は非虚血性左心機能低下であることを考慮しても、予後に優位な効果は認められなかった[7][10]
  1. しかしながら、中等度のアルコール摂取は、アルコール多飲者のアルコール性心筋症のEF改善に不干渉と同等と現れており、健康的な人での研究で心不全のリスク低下と関連している[8][11]
  1. 結論:中等度の飲酒は、冠動脈疾患や神経ホルモン変化に有益な効果を含み、心不全の発症を予防するかもしれない。
問診・診察のポイント  
  1. 病歴で、飲酒歴を詳細に聴取する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
朝倉正紀 : 特に申告事項無し[2024年]
北風政史 : 講演料(アストラゼネカ(株),ノバルティスファーマ(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株)),研究費・助成金など(興和(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株),アストラゼネカ(株))[2024年]
監修:今井靖 : 講演料(第一三共(株)),原稿料((株)南江堂)[2025年]

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アルコール性心筋症

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