今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 朝倉正紀1) 兵庫医科大学 循環器内科

著者: 北風政史2) 阪和病院・阪和記念病院

監修: 伊藤浩 川崎医科大学総合内科学3教室

著者校正/監修レビュー済:2020/05/14
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 心筋症診療ガイドラインに基づき、鑑別診断、薬物治療、非薬物治療の改訂を行った。

概要・推奨   

  1. 拡張型心筋症の患者には、慢性心不全治療のため利尿薬を投与することが勧められる(推奨度1)
  1. 拡張型心筋症患者には、ACE阻害薬の投与が勧められる(推奨度1)
  1. ACE阻害薬に忍容性のない症例ではARBを投与する。またACE阻害薬使用例においても効果が不十分な場合はARBの追加投与を検討する(推奨度1)
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  1. 拡張型心筋症の患者にはミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の投与が勧められる(推奨度1)
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  1. 拡張型心筋症患者にはβ遮断薬の投与が勧められる(推奨度1)
  1. ACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬などで心不全が十分コントロールされない症例ではジゴキシンの追加投与を検討する(推奨度1)
  1. 心房細動や肺血栓塞栓症の既往のある症例では、ワルファリンの投与が勧められる(推奨度1)
  1. 心房細動や心室性不整脈を有する低心機能例では、アミオダロンの投与が勧められる(推奨度1)
  1. ACE阻害薬、β遮断薬などの内科的治療によってもコントロールが不良な症例や、カテコラミン静脈投与からの離脱が困難な症例に対して経口強心薬の投与を検討する(推奨度2)
  1. 内科的治療によってもNYHA以上の症状が残る低心機能症例や、失神の既往のある症例では、ICDもしくはCRT-Dの導入を検討する(推奨度2)
  1. 内科的治療に抵抗性の症例では、心移植を考慮する(推奨度1)
  1. 原因が明らかでない拡張型心筋症に対しては、心筋生検を考慮する(推奨度2)
  1. 拡張型心筋症の診断時には、虚血性心筋症の除外診断が必要である(推奨度1)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 拡張型心筋症のきっちりとした有病率は明らかではないが、平成11年の厚生労働省特定疾患特発性心筋症調査研究班による全国疫学調査では、全国推計患者数は1万7,700人とされ、有病率は14.0人/10万人であった[1][2][3]
  1. 拡張型心筋症は、心室の拡大、心室壁の菲薄化を伴って心収縮能が低下する心筋疾患であり、特定心筋症すなわち、先天性疾患、冠動脈疾患虚血性心不全など)、弁膜症、 高血圧 、その他による二次性心筋症を除外できるものをいう。
  1. 拡張型心筋症と鑑別すべき主な二次性心筋症(特定心筋症):表<図表>
  1. 拡張型心筋症の症状は、むくみ、息切れ、呼吸困難( 起坐呼吸 )、倦怠感など、心不全の症状が主であり、急性増悪期の治療(急性心不全)はその他の原疾患による心不全と同様、病態に即した管理を行う。
  1.  心不全 以外にも、心室性不整脈(非持続性心室頻拍/持続性心室頻拍)、房室ブロック(1度・2度房室ブロック/高度・完全房室ブロック)、失神、突然死(心臓突然死の予防)などが起こり得る。
  1. 根治療法はなく、内科的治療に抵抗性の症例においては、機械的な循環補助装置の導入や心移植が検討される。
  1. 遺伝的背景を有する患者は30~48%とも報告されており、無症状の患者(NYHAⅠ度)も多い。
  1. 特発性拡張型心筋症は、指定難病であり、中等症以上を認める場合などでは、申請し認定されると保険料の自己負担分の一部が公費負担として助成される。([平成27年1月施行 57 特発性拡張型心筋症])
  1. 難病法に基づく医療費助成制度
 
  1. 内科的治療に抵抗性の症例では、心移植を考慮する(推奨度1)
  1. まとめ:拡張型心筋症は進行性の疾患と考えてよく、内科的治療にしばしば抵抗性で、重症例では血行動態が悪化の一途をたどる。こういった症例では早い段階で心移植の適応を見据え、VASなどの橋渡し治療の検討なども必要となる。移植適応は、心臓移植以外に有効な治療手段がなく、患者・家族が移植治療を理解し、免疫抑制療法など移植後の治療を一生涯継続することができること、とされる[4]。実際の対象症例は、緊急度ステータス1である(1)VASを必要とする状態(2)IABPを必要とする状態(3)人工呼吸を必要とする状態(4)ICU、CCUなどの重症室に収容され、カテコラミンなどの強心薬の持続的点滴投与が必要な状態――から選ばれ、今のところ、それ以外の病態(ステータス2)から適応となることはない。しかるにステータス1に該当している、もしくは今後該当する見込みのある症例では心移植を見越した対応が望まれる[5]
  1. 結論:心移植は、移植認定施設の日本臓器移植ネットワーク連絡係を通して待機リストに登録がなされる。すなわち申請自体が移植認定施設で行われることがほとんどであり、適応患者については早めに移植認定施設へコンサルトすることが重要である。
問診・診察のポイント  
  1. ショックの兆候がないか確認する。ショックがあれば迅速に治療を開始する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
朝倉正紀 : 特に申告事項無し[2024年]
北風政史 : 講演料(アストラゼネカ(株),ノバルティスファーマ(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株)),研究費・助成金など(興和(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株),アストラゼネカ(株))[2024年]
監修:伊藤浩 : 講演料(第一三共(株),大塚製薬(株))[2024年]

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