アトピー性皮膚炎 :トップ    
監修: 戸倉 新樹 浜松医科大学医学部附属病院 皮膚科
加藤則人 京都府立医科大学 皮膚科学

概要

疾患のポイント:
  1. アトピー性皮膚炎とは、皮膚のバリアー機能低下による易刺激性と、アレルギー炎症を起こしやすい(アトピー素因)という遺伝的素因に加えて、さまざまな悪化因子が重なり、慢性に湿疹を繰り返す疾患である。
  1. アトピー性皮膚炎は、2002年の厚生労働省の調査によると小学生の11%、大学生の8%にみられる、ありふれた皮膚疾患である。
  1. 乳児アトピー性皮膚炎の顔面の皮疹:<図表>
  1. 成人アトピー性皮膚炎の皮疹:<図表>

診断: >詳細情報 
  1. 左右対称性の湿疹病変が年齢別の特徴的な部位にみられ、慢性反復性の経過であるときには、診断を想起することは容易である。
  1. 鑑別疾患として、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、単純性痒疹、疥癬、汗疹、魚鱗癬、皮脂欠乏性湿疹、手湿疹、皮膚リンパ腫、乾癬、免疫不全による疾患、膠原病(全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎)、ネザートン症候群を除外する。
  1. 鑑別については、皮膚科にコンサルトし、必要に応じて苛性カリ法、皮膚生検などを行う。

重症度・予後: >詳細情報 
  1. 日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2015」にある重症度分類では、軽度の皮疹(軽度の紅斑、乾燥、落屑主体の病変)、強い炎症を伴う皮疹(紅斑、丘疹、びらん、浸潤、苔癬化などを伴う病変)の面積によって以下のように分類しており、簡便である。
  1. 軽症:面積にかかわらず軽度の皮疹のみみられる。
  1. 中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%未満にみられる。
  1. 重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以上、30%未満にみられる。
  1. 最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上にみられる。
  1. 成人患者での血清TARCの軽症と中等症のカットオフ値として700 pg/mlが提唱されている(玉置邦彦ほか:日皮会誌2006;116:27-39.)。
  1. 一般に慢性に経過するが、適切な治療により症状がコントロールされた状態に維持されると、自然寛解も期待される疾患である(加藤則人ほか:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版.日皮会誌 2009;126:121-155.)。

治療: >詳細情報 
  1. 治療は、ステロイドやタクロリムス(プロトピック)などの抗炎症外用薬による薬物療法が基本であるが、副作用に関する誤った認識のために、標準的治療が行われずに悪化する例が少なくない。
  1. 皮疹が軽快したらステロイドのランクを下げるようにする。
  1. ステロイド外用薬のランク:<図表>
  1. 皮疹の再燃が懸念される場合にはタクロリムス(プロトピック)に切り替えて寛解を維持する(2歳以上の場合)。
  1. 乾燥皮膚に対しては、保湿外用剤を用いる。

専門医相談のタイミング: >詳細情報 
  1. 初期治療を1カ月程度行っても皮疹の改善がみられない場合は、専門医に紹介する。
  1. 顔の皮疹に対して1週間以上、ステロイド外用薬の使用が必要と考えられる場合は、専門医に紹介する。
  1. 紅斑の面積が広範囲に及ぶ場合や、痒疹や著明な苔癬化がみられる場合も専門医に紹介する。
  1. <緊急対応>カポジ水痘様発疹症、溶連菌性伝染性膿痂疹などの感染症を併発しているときは、すぐに専門医に紹介する。
 
臨床のポイント:
  1. アトピー性皮膚炎はアレルギー側面のみでなく、経皮感作や掻破に繋がる皮膚バリアー機能低下が重要な発症要因である。
  1. 不適切治療が横行しているが、ガイドラインに準拠した標準治療が結局寛解の早道である。
  1. 1カ月加療しても改善しない場合やステロイド長期使用になる場合は専門医に紹介する。
 
※「臨床のポイント」は監修者による執筆です。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

初期治療例
  1. 湿疹病変に対してはステロイド外用薬を使用する。皮疹が軽快したらステロイドのランクを下げるようにする。 解説 
  1. ステロイド外用薬のランク:<図表>
  1. Strongestクラスは成人の難治例に限って用いる。抗ヒスタミン作用を持つ抗アレルギー薬の内服を併用する。
  1. 明らかな炎症を欠く軽微な乾燥皮膚には保湿外用薬を使用する。 解説 
  1. 痒みが強いときは、抗ヒスタミン作用を持つ抗アレルギー薬の内服を併用する。 解説 
  1. 顔面には、可能な限り弱いステロイド外用薬を短期間使用する。
  1. 紅斑や丘疹が消退して乾燥皮膚のみがみられる部位は、ステロイドを中止して、保湿外用剤のみを使用する。
  1. 皮疹の再燃が懸念される場合や、顔、頚部などステロイド外用薬の副作用が出現しやすい部位は、タクロリムス(プロトピック)に切り替えて寛解を維持する(2歳以上の場合)。
  1. 処方量の参考としてfinger tip unit(FTU)という概念がある。これは、第2指の先端から第1関節部までチューブから押し出した量(約0.5g)が、成人の手で2 枚分すなわち成人の体表面積のおよそ2%に対する適量であるとするものである。 解説 
  1. 軟膏使用量(FTU):<図表>
○ 通常1)にて加療を始め、効果が不良のときには2)、軽快したら3)へと変更する。顔面には4)を用いる。軽快後は再発予防で5)を用いることもある。皮膚乾燥に対して8)を他の治療に併用する。痒みが強い際には6)または7)の内服を考慮する。
1)
リンデロン-V軟膏 [0.12%] 1日2回、次回外来まで 解説  [適用内/用量内/㊜湿疹](編集部注:想定する適用病名「アトピー性皮膚炎、湿疹」/2017年4月)
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薬理情報 皮膚科疾患用薬 >外用副腎皮質ステロイド薬(ストロング)
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要注意情報
腎可 肝可 不明 不明 児量無
2)
アンテベート軟膏 [0.05%] 1日2回、次回外来まで 解説  [適用内/用量内/㊜アトピー性皮膚炎]
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薬理情報 皮膚科疾患用薬 >外用副腎皮質ステロイド薬(ベリーストロング)
同効薬一覧
要注意情報
腎可 肝可 不明 不明 児量無
3)
リドメックスコーワ軟膏 [0.3%] 1日2回、次回外来まで 解説  [適用内/用量内/㊜アトピー性皮膚炎]
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薬理情報 皮膚科疾患用薬 >外用副腎皮質ステロイド薬(マイルド)
同効薬一覧
要注意情報
腎可 肝可 妊C 不明 児量無
4)
ロコイド軟膏 [0.1%] 1日2回、次回外来まで 解説  [適用内/用量内/㊜アトピー性皮膚炎]
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薬理情報 皮膚科疾患用薬 >外用副腎皮質ステロイド薬(マイルド)
同効薬一覧
要注意情報
腎可 肝可 不明 不明 児量無
5)
プロトピック軟膏 [0.1%] 1日2回、次回外来まで 解説  [適用内/用量内/㊜アトピー性皮膚炎]
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薬理情報 皮膚科疾患用薬 >カルシニューリン阻害薬(皮膚科疾患用)
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6)
アレグラ錠 [60mg] 2錠 分2、次回外来まで 解説  [適用内/用量内/㊜アトピー性皮膚炎]
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薬理情報 抗免疫薬・アレルギー疾患治療薬 >H1受容体拮抗薬(第2世代)
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腎可 肝可 妊C 乳注 児量有
7)
アレロック錠 [5mg] 2錠 分2、次回外来まで 解説  [適用内/用量内/㊜アトピー性皮膚炎]
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薬理情報 抗免疫薬・アレルギー疾患治療薬 >H1受容体拮抗薬(第2世代)
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腎注 肝注 妊C 不明 児量有
8)
ヒルドイドソフト軟膏 [0.3%] 1日2回、次回外来まで 解説  [アトピー性皮膚炎は適用外/他適用用量内/㊜皮脂欠乏症]
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薬理情報 皮膚科疾患用薬 >外用保湿薬
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要注意情報
腎可 肝可 不明 不明 児量無

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)

アトピー性皮膚炎:治療の手順
著者校正/監修レビュー済
2017/03/31


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