今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 足立厚子 兵庫県立加古川医療センター 皮膚科

監修: 戸倉新樹 掛川市・袋井市病院企業団立 中東遠総合医療センター 参与/浜松医科大学 名誉教授

著者校正/監修レビュー済:2023/06/22
参考ガイドライン:
  1. 日本皮膚科学会:手湿疹診療ガイドライン
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。

概要・推奨   

  1. 水疱型の手湿疹を診た場合、まず汗疱状湿疹(異汗性湿疹、汗疱)の診断を想定することが必要である(推奨度1)
  1. 汗疱状湿疹(異汗性湿疹、汗疱)の中には、全身性接触皮膚炎の機序によるものがあり、その関与を疑うことが必要である(推奨度2)
  1. 全身性接触皮膚炎の原因診断の第一選択はパッチテストである(推奨度3)

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 再発性水疱型(汗庖型)手湿疹は通常手掌もしくは足蹠に生じ、汗疱状湿疹,汗疱、異汗状湿疹と呼ばれる。原因不明のことも多いが、全身性接触皮膚炎によるものや免疫グロブリン大量療法によるものがある。
 
汗疱状湿疹:金属パッチテスト

ケースの説明:
病歴:50歳代男性20歳代頃スプーン磨きをするとその後に手湿疹を認めていたが、50歳代より、金属に接触しなくても手掌に小水疱が多発性に出没する。
診察:手掌および母指球に粟粒大までの紅色丘疹、小水疱の集簇および線状配列を認める。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から汗疱状湿疹と診断。金属アレルゲンでパッチテストのところ、コバルト、クロム、ニッケルが陽性を示し、全身型金属アレルギーが原因と診断した。
治療:ステロイド外用薬と金属との接触禁止で治療開始したが、軽快しないため、後出表<図表>に従いコバルト、クロム、ニッケルを多く含む食事を制限した。
転帰:2週間以内に速やかに軽快した。チョコレートなど金属を多く含むものを摂取すると再燃する。
a:初診時臨床像 
b:コバルト、ニッケル、クロムパッチテスト陽性所見

出典

著者提供
 
  1. 手掌での好発部位は母指球、小指球および指側縁、足蹠では土踏まずである。
  1. 紅斑、小水疱を認めることが多いが、時に水疱、びらんおよび亀裂を伴う。
  1. 激しい痒みや痛痒さを感じることが多い。
  1. 汗疱状湿疹の原因の一つである全身性接触皮膚炎を引き起こしうるアレルゲンは、ネオマイシン、クロマイシン、消毒剤などの医薬品、ペルーバルサムなどの香料、金属などで、もっとも頻度の多いのは金属アレルゲンと思われる。
  1. 全身性接触皮膚炎は様々な発疹や全身症状を示すことがあるが、最も頻度が高いのは汗疱状湿疹である。
  1. 金属は、直接皮膚に接触皮膚炎を起こす以外に、食品中や歯科金属などに含まれる微量金属が口腔粘膜や腸管などから全身的に吸収されて皮疹を惹起される全身性接触皮膚炎を示すものがあり、全身型金属アレルギーと呼ぶ[1]
  1. 掌蹠は汗器管が密に分布し、しかも汗中の金属濃度が高い部位とされている。このことは全身型金属アレルギーの皮疹好発部位として掌蹠で汗疱状湿疹が多発することと関連があると考えられる。
問診・診察のポイント  
 
  1. 汗疱状湿疹は、強力なステロイドの外用や抗アレルギー薬の内服を続けるも、軽快しなかったり、再発を繰り返したりすることが多い。難治性の場合、原因検索により問題解決を試みるべきである。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
足立厚子 : 未申告[2024年]
監修:戸倉新樹 : 講演料(サノフィ(株),日本イーライリリー(株),アッヴィ合同会社,協和キリン(株))[2024年]

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汗疱状湿疹(異汗性湿疹、汗疱)

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