吐き気、嘔吐 :トップ    
監修: 山中克郎 諏訪中央病院
柴﨑俊一 ひたちなか総合病院 救急・総合内科

概要

症状のポイント:
  1. 嘔気・嘔吐の原因は非常に多岐にわたる。消化器(刺激、炎症、粘膜病変、閉塞)、中枢神経系・前庭神経系、代謝性・内分泌性(妊娠)、薬剤など。心筋梗塞でも嘔気を来す。
  1. 疾患を絞り込みやすくするために、急性経過(~数日程度、最大で1カ月以内)か慢性経過(1カ月以上)とすると、理解しやすい。
  1. 急性の嘔気・嘔吐で頻度が高いのは胃腸炎(消化管感染症)、それ以外の炎症(胆嚢炎・胆管炎、膵炎、腎盂腎炎)、薬剤(中毒やアルコールを含む)である。いずれの急性の嘔気・嘔吐も、その多くは病歴と身体診察でだいぶ絞り込めるため、病歴と身体診察に重きを置く。
  1. 女性では妊娠の可能性を常に念頭に置く。
  1. 嘔気・嘔吐の神経伝達:<図表>
 
緊急時の対応: >詳細情報 
  1. 胸痛、強い腹痛、中枢神経系の症状、発熱、免疫不全の病歴、低血圧、重症の脱水、高齢のいずれかがあれば緊急であり、入院を考慮する。 >詳細情報 
  1. 嘔吐に伴う合併症(脱水、代謝性アルカローシス、低カリウム血症、Mallory-Weiss症候群、Boerhaave[ブールハーフェ]症候群、誤嚥性肺炎)の状態によっても入院を考慮する。
 
症状治療: >詳細情報 
  1. ポイント:
  1. 嘔気・嘔吐の症状治療には、下記のものが存在する。オピオイド使用中であったり、内耳性のめまいを認めるなど、特殊な嘔気・嘔吐の背景がある場合はその背景に沿った薬剤を選択する。また、原因にかかわらず嘔気・嘔吐一般に対して末梢性D2受容体拮抗薬であるメトクロプラミド(プリンペラン)などを用いることもある。
  1. 嘔気・嘔吐一般に関する治療例:
  1. 末梢性D2受容体拮抗薬であるメトクロプラミド(プリンペラン)、ドンペリドン(ナウゼリン)または、中枢性D2受容体拮抗薬であるプロクロルペラジン(ノバミン)を用いる。 エビデンス  …

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

嘔気・嘔吐の患者への対応
  1. 嘔気・嘔吐の患者への対応として、次の3つのアプローチを意識する。
  1. 嘔吐の結果(脱水、電解質異常など)の認識と是正→必ず行う検査
  1. 原因の検索と特異的治療→必ず行う検査、追加評価で行う検査
  1. (原因がわからなければ)症状に対するエンピリック治療→症状に対する治療
 
必ず行う検査:
  1. 嘔吐の結果として起こる合併症(脱水、代謝性アルカローシス、低K血症、Mallory-Weiss症候群、Boerhaave症候群、誤嚥性肺炎など)の評価。
  1. 病歴・身体所見に応じて、血液検査(CBC、生化学)、血液ガス、胸部X線など
  1. 嘔気・嘔吐の原因は多岐にわたるため、原因となる臓器系の随伴症状に着目して系統的に病歴聴取・身体診察を行う。
  1. 異常の疑われる臓器系に応じて検査を行う。
  1. 中枢神経系・前庭神経系:頭部CT、MRIなど
  1. 代謝性・内分泌性:妊娠検査、TSH・FT4など
  1. 医原性(薬剤性、化学療法、術後など):可能であれば原因の特定・除去
  1. 消化管粘膜病変:上部消化管内視鏡(特に好酸球性胃腸炎が疑われるときは積極的な生検を検討する)、GERDに対する診断的治療
  1. 消化管閉塞性病変:腹部X線、腹部CT
  1. 急性心筋梗塞:心電図、心エコー、心筋逸脱酵素
  1. 頻度の高い疾患:胃腸炎―対処療法のみ、非消化管炎症(胆嚢炎・胆管炎、膵炎、腎盂腎炎)―それぞれの診断学的検査、薬剤性―被疑薬の中止
 
追加評価で行う検査:
  1. 異常の疑われる臓器系がはっきりしない場合、症状が軽症で合併症がなければ、食習慣の改善や制吐剤による対処療法で経過観察をしてもよい。
  1. 症状が強かったり、合併症があれば、さらなる評価を追加する。
  1. 腸閉塞に対する腹部CT、小腸造影検査
  1. 代謝性・内分泌性疾患に対するTSH、FT4など
  1. 上部消化管粘膜疾患に対する上部消化管内視鏡(特に好酸球性胃腸炎が疑われるときは積極的な生検を検討する)
  1. 心因性に対する心理学的評価 など
  1. 上記評価でも原因のはっきりしない慢性の嘔気・嘔吐に対しては、胃不全麻痺、心因性、過食症、周期性嘔吐症などの可能性を検討する。
 
症状に対する治療:
  1. 内臓神経はセロトニンを介しており、胃腸炎を含む消化管の粘膜に刺激や炎症を与える病態には5-HT3受容体拮抗薬であるオンダンセトロン(ゾフランザイディス、 エビデンス )の有用性が高いと考えられるが、わが国で保険適用となっているのは抗癌薬による嘔気・嘔吐のみである。
  1. したがってわが国では、腸管運動促進作用のある末梢性ドパミン(D2)受容体拮抗薬のメトクロプラミド(プリンペラン、 エビデンス )、ドンペリドン(ナウゼリン、 エビデンス )や、中枢における嘔吐の神経伝達を抑制する中枢性ドパミン(D2)受容体拮抗薬のプロクロルペラジン(ノバミン、 エビデンス )を用いることが多い。
  1. 前庭神経系により誘発される嘔気・嘔吐はヒスタミンとアセチルコリンを介するため、めまいや乗物酔いに続発する嘔気・嘔吐の治療には抗ヒスタミン薬であるジフェンヒドラミン・ジプロフィリン配合薬(トラベルミン、 エビデンス )、抗コリン薬であるブチルスコポラミン(ブスコパン)が推奨される。
  1. 化学療法に伴う嘔気・嘔吐では、Chemoreceptor trigger zone(CTZ)の主要な受容体のひとつであるニューロキニン受容体1(NK-1)を介する。そのため、NK-1拮抗薬のアプレピタント(イメンド)が推奨される。
  1. 慢性嘔気嘔吐症、周期性嘔吐症では上記の制吐薬では効果が限定的なことが多い。そのため、新規の治療選択肢として、三環系抗うつ薬(トリプタノール)、ガバペンチン(ガバペン)、オランザピン(ジプレキサ)などが考慮される。
○ 嘔気・嘔吐の場合、下記を症状・病態に合わせて適宜用いる。

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嘔気・嘔吐の評価
急性/慢性別 嘔気・嘔吐の鑑別診断
嘔気・嘔吐の神経伝達
著者校正/監修レビュー済
2017/08/31

編集部編集コンテンツ:
 
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