今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 木口亨 獨協医科大学埼玉医療センター

監修: 神田善伸 自治医科大学附属病院 血液科

著者校正/監修レビュー済:2023/06/07
参考ガイドライン:
  1. Guidance for the evaluation and treatment of hereditary and acquired thrombophilia.(2016)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、下記のとおり新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について加筆を行った。
  1. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に凝固異常は多くみられ、高い罹患率と死亡率を伴うことが問題となった(Günalp Uzun, et al. Hamostaseologie. 2022 Dec;42(6):409-419)。

概要・推奨   

  1. 凝固傾向は、先天性あるいは後天性の原因により血栓症をきたしやすい状態である。
  1. 動脈血栓、静脈血栓をきたすが、臨床的には静脈血栓が問題となる場合が多い。
  1. 先天性の血栓性素因は、プロテインC欠損症、プロテインS欠損症、アンチトロンビン欠損症が問題となり、後天性の凝固傾向の原因は多岐にわたる
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病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 凝固傾向は、広義に血液が凝固しやすい状態を指す場合と、狭義に先天性あるいは後天性の原因により血栓症をきたしやすい状態を指す場合があるが、臨床的には狭義の意味で用いられ、血流の異常、血管壁の異常とともに血栓形成の重要な因子になる。
  1. 動脈血栓と静脈血栓では、基礎疾患、発症機序、治療が異なる。
  1. 動脈血栓は、血小板が主体の「血小板血栓」「白色血栓」であり、動脈硬化性病変を基盤として発症する。
  1. 静脈血栓は、血流の停滞や凝固活性の亢進を基礎として発症するフィブリンと赤血球が主体の「フィブリン血栓」「赤色血栓」である。
  1. 静脈⾎栓では、特に、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)と肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE)が重要である。DVTの血栓が遊離してPTEをきたすことから、DVTとPEは一連の病態として捉らえられ、静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)と呼ばれる。
  1. DVTは、欧米人に比べてアジア人では頻度が少ないとされてきたが、わが国でも急速に増加してきている。
  1. 凝固傾向には、凝固阻止因子・線溶系因子の先天的異常による先天性の血栓性素因と、他の基礎疾患や病態による後天性の凝固傾向がある。
  1. 糖尿病、高血圧、高脂血症などの動脈硬化性病変を介して動脈血栓症をきたすリスクとなる疾患は通常は凝固傾向とせず、動脈硬化性病変がなくても血栓を形成するような病態を凝固傾向とする。
 
静脈血栓塞栓症のリスクとなる疾患(病態)

静脈血栓塞栓症の原因として先天性のものの頻度は高くないが、血栓性素因を示唆する所見があれば検査する。そのような所見がなければ後天性のリスクとなるものについて検討するが、複数のリスク因子が存在することが多い。

出典

Kaushansky K, Beultler E, Kipps T, Prchal J, Seligsohn U. (eds.) Williams Hematology, 8th edition. McGraw-Hill Professional: New York, 2010. 2122 (改変あり)
 
  1. 先天性の血栓性素因は、わが国ではプロテインC欠損症、プロテインS欠損症、アンチトロンビン欠損症が問題となる。
  1. 後天性の凝固傾向の原因は多岐にわたる。抗リン脂質抗体症候群が問題となることが多い。
  1. 骨髄増殖性腫瘍、発作性夜間ヘモグロビン尿症などの血液疾患も、後天性凝固傾向の原因となる。
 
  1. Clinical Question:先天性血栓性素因の保因者が静脈血栓症を合併する頻度は?(参考文献:[1]
  1. 先天性血栓性素因の保因者が静脈血栓症を合併する頻度は、それぞれの先天性血栓性素因により異なる。
 
血栓性素因を有する患者に静脈血栓症が生ずるリスク

出典

Scott M Stevens, Scott C Woller, Kenneth A Bauer, Raj Kasthuri, Mary Cushman, Michael Streiff, Wendy Lim, James D Douketis
Guidance for the evaluation and treatment of hereditary and acquired thrombophilia.
J Thromb Thrombolysis. 2016 Jan;41(1):154-64. doi: 10.1007/s11239-015-1316-1.
Abstract/Text Thrombophilias are hereditary and/or acquired conditions that predispose patients to thrombosis. Testing for thrombophilia is commonly performed in patients with venous thrombosis and their relatives; however such testing usually does not provide information that impacts management and may result in harm. This manuscript, initiated by the Anticoagulation Forum, provides clinical guidance for thrombophilia testing in five clinical situations: following 1) provoked venous thromboembolism, 2) unprovoked venous thromboembolism; 3) in relatives of patients with thrombosis, 4) in female relatives of patients with thrombosis considering estrogen use; and 5) in female relatives of patients with thrombosis who are considering pregnancy. Additionally, guidance is provided regarding the timing of thrombophilia testing. The role of thrombophilia testing in arterial thrombosis and for evaluation of recurrent pregnancy loss is not addressed. Statements are based on existing guidelines and consensus expert opinion where guidelines are lacking. We recommend that thrombophilia testing not be performed in most situations. When performed, it should be used in a highly selective manner, and only in circumstances where the information obtained will influence a decision important to the patient, and outweigh the potential risks of testing. Testing should not be performed during acute thrombosis or during the initial (3-month) period of anticoagulation.

PMID 26780744
 
  1. プロテインC(PC)欠損症、プロテインS(PS)欠損症、アンチトロンビン(AT)欠損症の保因者が、初めて静脈血栓症をきたす相対危険度は、いくつかの報告を総合すると、PC欠損症 10、PS欠損症 9.6、AT欠損症 10-30である。
  1. 先天性血栓性素因の保因者において静脈血栓症が再発する危険度は高くなく、再発には他の血栓症をきたす原因の関与が重要である。
 
  1. Clinical Queston:すべての先天性血栓性素因患者の血縁者についてスクリーニング検査をする必要があるか?(推奨度2O)(参考文献:[2][1]
  1. オランダにおいて、静脈血栓症を生じた先天性血栓性素因を持つ患者の2,479人の血縁者について、後ろ向きコホート研究を行った。
  1. 血栓症の年間発症率は、アンチトロンビン(AT)欠乏症1.77%(95%信頼区間:1.14-2.60)、プロテインC(PC)欠乏症1.52%(95%信頼区間:1.06-2.11)、プロテインS(PS)欠乏症1.90%(95%信頼区間:1.32-2.64)、血栓性素因を持つ血縁者のいないコントロールと比較して、修正相対リスクは、それぞれ、28.2(95%信頼区間:13.5-58.6)、24.1(95%信頼区間:13.7-42.4)、30.6(95%信頼区間:26.9-55.3)であった。高FVIII血症保因者の年間の血栓症発症率は0.49%(95%信頼区間:0.41-0.51)、修正相対的リスクは7.1(95%信頼区間:4.3-11.8)で、高IX血症、高XI血症、高トロンビン活性化線溶阻害因子(TAFI)血症、高ホモシステイン血症は独立した危険因子ではなかった。
  1. 静脈血栓症を生じたAT欠乏症、PC欠乏症、PS欠乏症患者の無症状の血縁者では、静脈血栓症発症のリスクが上昇する。若年発症の静脈血栓症患者や静脈血栓症の濃厚な家族歴がある場合には、これらのスクリーニング検査を考慮する。特に、他に血栓症のリスクとなる因子<図表>が存在する場合や、経口避妊薬、ホルモン補充療法を行う前、長時間の飛行機などよる移動の前などにはスクリーニング検査を考慮する。しかし、同じ遺伝子異常を有する保因者が静脈血栓症を生ずるリスクは保因者間で同等ではないために過剰な抗凝固療法が行われる可能性や、スクリーニング検査が陰性であっても血縁者の血栓症リスクは高く、スクリーニング陰性のために必要な静脈血栓症予防がなされなかったりすることがある可能性も念頭におく。血縁者スクリーニングの有用性についてはガイドラインにより異なっている。
 
  1. 静脈血栓塞栓症は、日本人では欧米人と比較して発症頻度が低いとされてきたが、生活習慣、食習慣の欧米化や高齢化の進行により、増加傾向にある。実際、1990年代の検討では、アジア人は欧米人と比べて血栓症の頻度が低かった(O)。(参考文献:[3]
  1. 米国において、National Hospital Discharge Surveyのデータから、1990~1999年の10年間におけるすべての退院患者の約1%の患者のなかで、深部静脈血栓症、肺梗塞、静脈血栓塞栓症と診断された患者について検討した。深部静脈血栓症と診断されたアジア/太平洋諸島出身者の人口当たりの頻度は、白人と比較して0.21(95%信頼区間:0.14-0.30)アフリカ系アメリカ人と比較して0.20(95%信頼区間:0.13-0.29)、肺梗塞はそれぞれ0.18(95%信頼区間:0.07-0.24)、0.16(95%信頼区間:0.17-0.31)、静脈血栓塞栓症は0.20(95%信頼区間:0.14-0.28)、0.19(95%信頼区間:0.13-0.27)で有意に低かった。
 
  1. Clinical Question:静脈血栓症の後天性リスク因子を多く有するほど静脈血栓症を起こしやすいか?(O)(参考文献:[4]
  1. マサチューセッツ州Worcester市のすべての住民の1999年の医療記録から587例の静脈血栓塞栓症患者を抽出して、観察研究を行った。
  1. 静脈血栓塞栓症の頻度と発症率はそれぞれ人口10万人当たり、104(95%信頼区間:95-114)と128(95%信頼区間:108-139)であった。発症前に存在していた因子で多かった6つの因子は、30日以内に48時間以上動けないことがあった、3カ月以内に入院した、3カ月以内に手術を受けた、3カ月以内に感染症に罹患した、悪性腫瘍がある、現在入院している、であった。これらの因子を1つも持たなかった患者は11%のみで、36%は1~2つ、53%は3つ以上のリスク因子を有していた。
  1. 静脈血栓症患者の90%は後天性リスク因子を有し、複数有することが多い。
 
  1. Clinical Question:先天性凝固異常は流産や死産のリスクと関連するか?(O)(参考文献:[5]
  1. 先天性凝固傾向が胎児死亡を増加させるかEuropean Prospective Cohort of Thrombophilia(EPCOT)に登録された1,384人で症例-対象研究を行った。
  1. プロテインS欠損症、プロテインC欠損症、アンチトロンビン欠損症、第V因子ライデン(Factor V Leiden)変異患者は843例で、571例が合計1,524回妊娠した。コントロール541人のうち395人が合計1,019回妊娠した。
  1. 先天性凝固傾向を有する患者において、流産あるいは死産により胎児死亡を来す頻度が有意に多く(オッズ比1.35、95%信頼区間:1.01-1.82)、流産よりも死産を来すリスクが高かった(オッズ比1.27 vs 3.6)。流産、死産に対するオッズ比をそれぞれの凝固傾向で検討したところ、有意であったのは、死産に対して複数の凝固異常を持つもののオッズ比が14.3(95%信頼区間:2.4-86.0)、アンチトロンビン欠損症が5.2(95%信頼区間:1.5-18.1)であった。
  1. 先天性凝固傾向を有する患者は流産あるいは死産を来しやすく、特にアンチトロンビン欠損症患者で死産のリスクが高い。
 
  1. 日本における先天性血栓性素因の頻度について、国立循環器病センターが大阪府吹田市で32~89歳の住人を対象として行った調査がある(O)。(参考文献:[6][7]
  1. プロテインC欠乏症の頻度は全体の0.13%、深部静脈血栓症患者の6.48%で、一般の住民に対するオッズ比は52.1(95%信頼区間:17.2-157.9)、アンチトロンビン欠乏症の頻度は全体の0.15%、深部静脈血栓症患者の5.56%、オッズ比は37.9(95%信頼区間:12.5-114.8)であった。またプロテインS欠乏症は全体の1.12%の頻度でみられた。
 
  1. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に凝固異常は多くみられ、高い罹患率と死亡率を伴うことが問題となった。
  1. 新型コロナウイルス感染症誘発性凝固障害の特異な経過により、凝固障害の診断について、証拠に基づいた推奨事項がまだ不足しているのが現状である[8]
問診・診察のポイント  
 
  1. 凝固傾向を伴う患者は、通常は血栓症(特に静脈血栓症)を発症して受診する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
木口亨 : 講演料(ヤンセンファーマ(株),アストラゼネカ(株))[2025年]
監修:神田善伸 : 講演料(旭化成(株),MSD(株),ノバルティスファーマ(株),ファイザー(株),サノフィ(株),中外製薬(株),アステラス製薬(株),協和キリン(株)),奨学(奨励)寄付など(協和キリン(株),中外製薬(株))[2024年]

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