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著者: 梶本完 順天堂大学静岡病院心臓血管外科

監修: 辻田賢一 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学

著者校正/監修レビュー済:2023/10/25
参考ガイドライン:
  1. 日本循環器学会/日本心臓外科学会:安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)
  1. 日本循環器学会:慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 冠動脈疾患に対する血行再建は循環器内科が行う経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と心臓血管外科が行う冠動脈バイパス術(CABG)があるが、個々の症例の治療選択は心臓血管外科医と循環器内科医を含めたハートチームで協議する。
  1. 虚血性心疾患、とくに冠動脈疾患に対する治療は、近年いくつかの臨床試験からのエビデンスの集積とガイドラインの改訂が行われている。

概要・推奨   

  1. 虚血性心疾患、とくに冠動脈疾患に対する治療選択はハートチームで十分に検討することが重要である。冠動脈バイパス術(CABG経皮的動脈インターベンション(PCIかの選択においては開心術のリスクモデルと冠動脈病変の重症度スコアと予後予測モデルに加えてfrailtyなどの全身状態、緊急度を評価しハートチームで検討する。
  1. 虚血性心疾患の外科治療の中心は、虚血心筋に対する血行再建を行うCABGである。
  1. CABGの利点は、①心筋虚血の根治による良好な遠隔期成績、②糖尿病や慢性腎臓病などの併存疾患を有する患者における遠隔期成績の優位性③解剖学的重症度によらず血行再建が可能であり、④重症な冠動脈病変に対しても良好な予後、である。
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総論 

総論  
  1. 循環器内科医によって行われる経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の利点は局所麻酔下に実施可能な血管内治療という低侵襲性にある。PCIは全身疾患やfrailにより耐術性が劣る患者に対しても実施可能であり、単純冠動脈病変に対しては有効な治療法である一方、手技成功率や再狭窄による心筋虚血の再発が問題となるために、複雑冠動脈病変や動脈硬化が促進される糖尿病患者に対する成績はCABGが優位である。
  1. 近年、症状を有さない安定狭心症に対してはPCIは薬物治療と比較して遠隔期予後を改善しないことが明らかになり、冠動脈血行再建術の中で冠動脈バイパス術(CABG)の優位性が見直されつつある。
  1. CABGはこうした重症冠動脈病変や糖尿病患者に対して長期予後改善効果が優位であることが、これまでの臨床試験で示されてきた。
  1. CABGは冠動脈病変を直接拡張するものではなく、新たな血流路として健常な血管(グラフト)を病変末梢の健常な冠動脈に吻合するものである。そのためにPCIとは異なり病変の部位、性状や血管径に制限を受けずに均等にすべての冠動脈を対象とした血行再建が可能である。ゆえに治療後の再血行再建や心血管イベントは多肢病変や糖尿病患者においてPCIと比較して有意に少なく長期予後も良好である。
  1. 虚血性心疾患の外科治療の中心は、虚血心筋に対する血行再建を行うCABGである。
  1. 従来の胸骨正中切開での手術に加えて、右小開胸で行う低侵襲冠動脈バイパス手術(MIDCABやMICS-CABG)も行われている。
  1. 手術では、内胸動脈、右胃大網動脈、橈骨動脈、大伏在静脈などのバイパスグラフトを採取し、冠動脈に吻合する。
  1. 冠動脈バイパス術の血行再建の特徴は、冠動脈の狭窄病変、閉塞病変を治療することではなく、病変部の末梢にバイパスグラフトを吻合して、末梢の心筋の血行再建を行う点にある。
  1. この特徴により、将来の冠動脈狭窄部の病変の進行とは無関係に、心筋虚血の改善が長期間期待できることになる。
  1. 最近では、大動脈弁、僧帽弁、さらに大血管の病変を合併し、同時手術が必要になる症例が増加している。
  1. 心筋梗塞の機械的合併症である心室中隔穿孔、乳頭筋断裂による僧帽弁閉鎖不全症、自由壁破裂は予後不良であり、早期診断が不可欠である。

診察 

問診・診察のポイント  
  1. 狭心症の症状から、初診時における緊急性の有無を判断する[1]
  1. 狭心症の症状が、労作時に起きるのか、安静時や夜間でも起きるのか。
  1. 狭心症症状の持続時間はどのくらいか。20分以上か、以内か。
  1. SYNTAX SCORE[2]、SYNTAX SCORE 2[3]、SYNTAX SCORE 2020などの冠動脈病変の重症度評価とSTS SCORE[4]、Euro SCORE[5]、Japan SCORE[6]などの手術リスクの評価に関係する項目についての確認を行う。
  1. 糖尿病、高血圧、腎機能、脳血管障害、慢性呼吸障害、心臓外の血管病変、NYHA分類、CCS分類、心筋梗塞、冠動脈形成術(PCI)歴、手術歴(特に心臓手術)、最近の喫煙状態。
  1. 既往歴、その他の手術歴についても詳細に問診する。
  1. 四肢のけがや手術(上肢では橈骨動脈、下肢では大伏在静脈の採取に関連する)、胸部手術(内胸動脈採取に関連する)、腹部手術(右胃大網動脈採取に関連する)
  1. その他のグラフト採取に関連する事項について確認する。
  1. アレンテスト、大伏在静脈の視診および血管エコーによる確認、冠動脈造影のアプローチ(橈骨動脈を使用している場合、バイパスグラフトとして使えない場合がある)、大伏在静脈からの点滴静注の既往(大伏在静脈がバイパスグラフトとして使えない場合がある)など。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
梶本完 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:辻田賢一 : 特に申告事項無し[2024年]

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虚血性心疾患の外科的治療

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